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リアクション
第四章 和のエリアを包むもの
この遊園地の端の一角には、エキゾチックゾーンと呼ばれる世界中様々な国のイベントを行うエリアがある。現在は片思いの人を応援する企画と連動して、日本風の飾り付けのなされたエリアとなっている。
その中央部に特設された神社の境内に、相沢 洋(あいざわ・ひろし)が、乃木坂 みと(のぎさか・みと)を脇に抱えるようにして立っていた。その二人の背後では、相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)とエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)が辺りの様子を窺っている。
四人がこのエリアにやって来たのは、「そういえば縁結びの神社を特設したそうですね。ついでに行ってみますか?」と、みとが提案したからだった。
「そういえばエリスも巫女になったんだよな……ちょうどいい。神社にお参りに行くか」と洋が賛同し、
「神社ですか……日本における神社は様々な神の集合体とも言えるでしょうか。文芸、恋愛、学問、武芸、そういった行為を守護し補佐する……正に良い考えです。以上」とエリスも嬉しそうについてきた。
こうして、四人は今この神社の前にいる……のだが。
「どことなく荒れているな……
人はそこここにいるが、どことなく、同じ遊園地の敷地内だとは思えないような、閑散とした雰囲気がある。
洋は、何かしら理由があるのだろうと考えて神主の元へ向かった。
「お参りに来て下さる方への妨害が連続していて……」
神主の心底困ったような声。
「妨害者なら、道を正してやるべきだろうな」
「はあ……で、神社を守れって?」
洋孝が口を挟む。
「……まったく嫉妬にとち狂う阿呆は最前線の弾除けにすらならねえ。装甲擲弾兵とか戦闘工兵並みの技量とか持てよ……鍛えて。誇りと技量があれば正規軍は嫁さん探しもしてくれるんだぞ」
ため息をつきぶつくさと言いながらも、洋孝は洋とみとを交互に見た。
「いい?? じーちゃんに、ばーちゃん。今のオレッチたちはイルミンスールの人間。教導団じゃないの。あまり手荒にすると放校食らってパラ実だぜ。じょーだんじゃないって」
「手荒な真似をしなければ良いのだな」
洋が言葉を返す。
「そ。だから、殺さないこと。捕まえたら警備の人に引き渡すこと、いい?」
「はい、分かっていますよ」
みとが笑って首を縦に振る。
「じゃあ、敵の場所を教えるから。あとは好きにして」
洋はみとの肩を抱き寄せるようにして、神社のすぐ近くにある緋毛氈の縁台に座っていた。囮として、というよりも、二人はラブラブなところをテロリストに見せつけつつ楽しむつもりでいた。
ほどなくして、洋孝に告げられた通りに、全身黒タイツの男が現れた。早速サイコキネシスで身動きを封じて捕まえた。
「故事曰く、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでおけというが……。ちなみに馬のバックキックは肋骨を軽く折り、内蔵も大打撃だぞ……、地球の獣医の労災の一番の問題だ。ちょうどいいから再現してみるか?」
洋は軽くサイコキネシスで相手の腹部を圧迫すると、みるみるうちに男の顔が青ざめる。
「あの……もしかしてデートのお邪魔虫さんですか? そうなると……冥府の案内をしないとならなくなりますねえ」
みとは、背後から現れた別の男をアボミネーションで脅迫する。
「急な心臓発作、内蔵損傷、なんでしたら気道を塞いで窒息死でもいいですよ。人のデートを邪魔する以上、殺される覚悟すべきです」
その隣では、エリスが男の目を覗き込んでいた。
「念の為にお尋ねします。皆様の未来を神よりの御託宣にて聞いておきましょうか? 以上」
エリスは目を瞑る。
「……今、心を清らかにすること、嫉妬に狂うその姿は鬼畜外道への道……しかし、行いを悔い改めることできれば……」
そこまで言って、エリスは目蓋を開いた。
「信じるかどうかはあなた次第でしょう。できれば他の妨害者にもやめさせることをお勧めします。以上」
シングルズの集団は、逃げていった。
近くに潜んでいたシングルズのメンバーを一通り炙り出し終えた洋の元に、神主がやってきた。
「本当に有り難うございました。なんとお礼を言ったらいいか……」
そう言って神主は深々と頭を下げる。
「お礼になるかは分かりませんが、皆様の願い事の成就をお祈りしましょう」
こうして四人は、思い思いに願いを思い浮かべたのだった。洋は、手を合わせて目を瞑る。みとと共に長く過ごせるように。そう、祈りながら。
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