校長室
愛は平穏を乱します!?
リアクション公開中!
「本当の名前を教えてよ、可憐なお嬢さん」 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)がクイーンに明るいオレンジのガーベラを一輪差し出した。突然のことに戸惑うクイーンの名札を、エースが覗き込む。 「クイーン・ダイヤっていうんだ。高貴な雰囲気のするあなたにぴったりの名前だね」 「高貴なんかじゃないわ……どれだけ化粧と髪型で雰囲気をごまかしたって、元の顔の作りが悪いことは分かってしまうのよ」 そう言って、クイーンは目をそらした。 「お化粧をもう一工夫するだけで、もっともっと可愛くなれるよ。それに、髪がとても綺麗だよね。肌もきめ細かいし、素敵だよ?」 エースは微笑む。クイーンは褒められたことに対する嬉しさと、騙されたくない、信じたくないという自己防衛の気持ちの狭間で揺れていた。 「今日の事が君が変わるきっかけになって、もっとずっと一緒に居たいって相手を見つけられると良いね」 エースはクイーンにそう告げる。 「視野を広くしてみたらどうかな。実は、男でもこの人イイナって思う人、いるんじゃないの。告白したら進展あるかもよ?」 そう言って、エースはきょろきょろと辺りを見回し、一組のカップルを指差した。 「あんな風に、一緒にくっついて歩きたいって人がさ」 エースの指差した先にいたのは、メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)とリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)だった。 「こんなもので、もうだいたい捕まえたんじゃないかな」 「そうね。本物のデートっぽくしたから、邪魔者をたくさん炙り出せたし」 「お化け屋敷にいた集団は面白かったね。お化けの格好をしていたくせに、幻覚でお化けを見せたら一目散に逃げていって」 そんな話をしていると、リリアが思い立ったように目を輝かせた。 「もう一回ジェットコースターに乗りましょ!」」 リリアはそう言ってメシエの腕を引っ張り、ぎゅっとくっついた。 「絶叫系に乗りたいだけじゃないの?」 そう言いながらも、メシエはリリアと一緒に歩き始めた。 「……無理よ。今更、男の人を恋愛対象にするなんてできないわ」 クイーンがぽつりと呟いた。 「それに……こんな顔で、自信が持てるはずもないし……」 「そんなに自分を卑下しないで。もっと楽しもうよ、可愛いお嬢さん。ここは遊園地なんだからさ」 エースの言葉に、クイーンははっとしたように顔を上げる。クイーンは遊園地のスタッフとして、皆を楽しませるという役割を持っていたのだと、改めて気付く。 「今更、ってことは、いるんでしょ? 今からでも遅くないよ。いってらっしゃい」 エースはそう言って、クイーンの背中を押した。クイーンは駆け出した。 * それから、数十分後。スタッフ控え室のモニターに、閉園直前の観覧車に向かうジャックとクイーンの姿が映っている。 「いろいろとあったみたいですけれど、いったい何がなんだったんですかぁ〜……?」 フルタイムでのデート企画を終え、へろへろになってスタッフ控え室に戻ってきたエース・ハートに、キング・スペードは黙ってココアを手渡した。 キングも、状況がよく分からないままだった。ジャック。クラブが始末書を書かされている最中に、突然現れたクイーン・ダイヤが告白をし、なんとそのままカップルになってしまったのだ。 「なぜかスタッフ一同祝福モードになるし、嬉し泣きを始めてパンダ目になったクイーンの顔が怖すぎたし、俺にも何が何やら……」 「でも、とりあえず全部問題は解決したんですよねぇ? それならいいじゃないですかぁ〜」 呑気なエースの声を聞いていると、キングもとりあえずこれで一段落ということでいいんだろうな、と思う。否、思い込むことにする。 キングは窓の外を眺めた。輝く夜空の星が全てのカップルたちを祝福するように瞬いていた。
▼担当マスター
八子 棗
▼マスターコメント
初めまして、こんにちは。クリスマスの予定は未定と答えたい、八子 棗です。 皆様いかがお過ごしでしょうか。 今回のクリスマス前の恋愛シナリオは、いかがでしたでしょうか。 何か一つでも思い出を作って頂けましたら、嬉しく思います。 それでは、また他のシナリオでお会いする機会を楽しみにしております。