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リアクション
ブオトコは、例によってそんな広場の様子を少し離れた茂みの陰からオペラグラスでのぞいていた。
シングルズのメンバーが、何やら話しあっている。真剣な雰囲気だ。かと思うと数組の男女がペアに分かれて遊園地の中に消えていく。
そんな男女に向かって、拳を振り上げる残りのメンバー。
「まさか……内部分裂、か……?」
ブオトコの嫌な予感は的中していた。シングルズとして妨害行為を行ううちに、恋の芽生えてしまったカップルが何組も存在していたのだ。
幸せそうなカップルたちに触発されたのかもしれない。それが、ブオトコとっては非常に腹立たしかった。
「この聖戦を、単なる出会いの場に貶めたその罪……ただでは済まぬと心得よ」
そう言って、ブオトコがシングルズメンバーの元へ向かおうとした時だった。
「見つけた! 馬面のオペラグラス男!」
突如、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がブオトコに飛びかかった。今年流行の最新冬物コーデでバッチリ決めたおしゃれな格好だが、繰り出す攻撃はえげつない。
「変な集団にマフラーは引っ張られるし、コーンポタージュはかけられそうになるし、本当にいい加減にしなさい!」
マジ切れしてブオトコを殴りつける美羽を、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が少し離れたところでハラハラと見守っている。
「自分のモテない理由を顔の悪さだけに押し付けないで、もっと自分を磨きなさい!」
「ぐふっ」
「容姿が悪ければ幸せな人を合法的に妬める、なんてわけないでしょ!?」
「うぼぁ」
いつの間にか瀕死のブオトコ。
「そろそろやめてあげないと……その人、死んじゃうよ」
ようやくコハクが美羽を止めた頃、そこにキングが到着した。
「スタッフです。確保の協力、有り難うございました」
そう言うなり、キングは無造作にブオトコの馬面をひっぺがした。
「…………ジャック?」
馬面のマスクを被っていたシングルズ代表は、見紛うはずもないスタッフの一人ーージャック・クラブだった。
顔を隠していた前髪は乱れ、美羽に殴られた童顔は腫れ上がっているものの、むしろ逆にどこか貫禄が出たような雰囲気になっていた。
「お前が……テロの首謀者だったのか?」
キングははっとして、いつの間にか傍に佇んでいたシコメを見た。
シコメがマスクを外す。その下の顔はーー
「クイーン……!?」
キングは、信じられないといった風に二人を交互に眺めた。
「なんでだよ……お前ら、デート企画の相手スタッフとして選抜されたんだろ?!
それなのにブオトコだのシコメだの……本当の醜男と醜女に袋叩きにされるぞ!?」
あ、まず指摘するのはそこなんだ……と、心の中でコハクは突っ込む。美羽も同じことを考えたらしく、顔を見合わせる二人。
「本当に、お前にとっては『他人の不幸はカップル限定スペシャルケーキの味』……だったのかよ……」
「キング……君は何も分かっていないよ」
ジャックが切れた唇の端から流れる血を拭いながら答えた。
「どうせ君のことだから、僕も誰かとデートのようなことをしていたとでも思っていたんだろう?」
「何……?」
「私とジャックは、初めから同性とデートをするつもりでいたのよ。貴方が男相手にデートをすることを恐れていたのと同じようにね」
クイーンがジャックの代わりに言葉を紡いだ。
「……なのに、恋愛対象の性別の人から声をかけられないんだ。僕がもっと大人っぽければ、かっこよければ、誰かに好かれたかもしれないのに……!!」
ジャックの悲痛な叫びが木霊した瞬間だった。
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