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愛は平穏を乱します!?

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愛は平穏を乱します!?

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「失望だ、諸君には失望したぞ」
 遊園地の奥にある広場にて。神の面で顔を隠した柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)が、覆面マスクの集団の前に立っている。
「お前は世界を変えるのは我々の仕事、そう言ったな? それがどうだ?
 手を繋いでいるカップルの間を押し通る、記念写真を撮るカップルの周囲に写り込んで雰囲気をぶち壊す。
 この程度の嫌がらせで満足だと?」
 集団の間にざわめきが起きる。
「違うだろう!」
 恭也の一喝に、集団はしん、と静まる。
「カップル共に派手な一撃を叩き込みたくないのか!? 諸君の恨みを晴らしたくないのか!?」
 集団は恭也の言葉を待つ。
「俺はテルミドールとでも呼んでくれ。真実の革命を始めよう」
 歓声が湧き起こった。
「ここにゴム弾を詰めたショットガンと信号弾を用意した。もし諸君が世の不条理に立ち向かう戦士なら、武器を手に取るといい。
 勇気の無い負け犬なら立ち去れ」
 一人、また一人とショットガンを手にとっていく。
「……よろしい、歓迎しよう戦士諸君」


 そんな恭也の姿を、キルラス・ケイ(きるらす・けい)アルベルト・スタンガ(あるべると・すたんが)が物陰から窺っていた。
「相変わらずあいつもフリーなのかねぇ?」
 キルラスは、誰にともなく呟く。アルベルトに誘われて遊園地に来たはいいが、人目を憚らずいちゃつくカップルたちの存在にイライラしていたキルラスにとって、恭也の存在は最適な標的に他ならなかった。
「カップルには嫌がらせしないって約束したがーー」
 言いながらキルラスは、ポケットに忍ばせていた異国の香辛料をぐっと握り締める。
「ーーあいつなら、構わないよなぁ?」
 いつの間にか繋がれてたアルベルトの手をすっと離し、一目散に恭弥に駆け寄る。

「ではカップル以外の目標を伝えておこう。敵の囮と、裏切り者だ。囮は従業員がカップルに偽装し、我々を捕まえようとしている」
 超感覚を発動させ、身体能力を上げる。
「裏切り者は奴ーー通称にゃんこスナイパーだ!」
 高くジャンプして頭上から香辛料を振り落とす。
「撃て!」
 一斉射撃。ゴム弾の嵐を、キルラスは銃舞で避ける。さっと着地したキルラスは、背中の方から漂ってくる、アルベルトが纏う異様な雰囲気に気付いた。刹那、ガシッと肩に腕をかけられる。
「世話になったなあ」
 敵意剥き出しのアルベルトを、ぽかーん、と見上げるキルラス。キルラス自身にはよく分からなかったが、くっ付かれる事に違和感があった。
「いいや、まだお世話になってくれよ」
 そう言って、恭也はくるりと集団の方を向く。
「諸君。目の前にいるこの二人こそが裏切り者だ。我々と同じくリア充を狩る同志だったが、この通りリア充の仲間入りを果たしたようだ。共に叩き潰せ」
「俺が、リア充?」
 キルラスは自分の肩をがっしりと押さえつけているアルベルトを、ちらと見上げる。
「さぁ諸君、戦争を始めよう!」
 恭也の声と共に、再び辺りには銃声が鳴り響き始めた。


「標的確認、であります」
 恭也たちのいた広場の見える、少し離れた箇所に、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)の姿があった。吹雪たちは全力疾走するキルラスとアルベルト、その後を追っていくショットガンを手にしたシングルズの集団の様子を窺う。
「この混乱は、利用するしかないであろう」
 イングラハムが吹雪にちらりと視線を送ると、吹雪は小さく頷いた。
「作戦変更であります。メインストリートの中央広場に移動するであります!」

「いやぁ、たまには扇動者ってのも悪くないな……」
 演説を終え、メインストリートへと移動してきた恭也がそう呟いた瞬間。
 大通り一帯に植えられた街路樹が、爆発した。いや、爆発したのではない。その根元に仕掛けられていた爆竹が鳴り響いたのだ。
 混乱に陥る園内に、ハウリング音が響く。
「見よ、同志達よ! 我らが指導者、テルミドールの力を!! イルミネーションをも爆発させるその力を!」
「!?」
 園内のスピーカーから流れ出すその声は、吹雪だ。
「今こそ、テルミドールと共に、リア充達に裁きの鉄槌を!!」

 放送を終えた吹雪は一仕事終えたかのように満足げに、だがその逃げ足は早く、騒がしい園内からそそくさと去っていった。