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この中に多分一人はリア充がいる!

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この中に多分一人はリア充がいる!

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第三章 

「……はぁ」
 正座したままのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が大きなため息を吐く。疲労からのものではなく、気分が滅入った為に出たものだ。
 ただし、今回このような事に巻き込まれたせいで滅入ったわけではなく、別の事をふと思い出してしまったからなのだが。
「……リア充に間違われたけど、僕人気投票0票だったんだよねそういや……アッ●ュでさえ3票だったのに……
 お前は一体何を思い出しているんだ。あとアッ何とかさんディスっちゃアカン。
 そんな事を呟いていると、隣で正座していた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が黙って立ち上がる。
「美羽?」
 コハクが声をかけるが、美羽は答えない。そのままキロスへと向かってずんずんと歩いて行った。
「キロスッ!」
 美羽がキロスに向かって叫ぶ。「あん?」とキロスは声のした方――美羽を睨み付けるが、お構いなしに彼女はずんずんと歩み寄る。そして、
「キロスのバカァッ!」
美羽がキロスの胸を殴りつける。だがそこまで強くないその拳に、キロスはただ「は?」と返すだけである。
「何がリア充よ……あんたに何がわかるって言うのよ……!」
「いや、何だよいきなり……」
「人の事リア充みたいに言ってるけど……リア充なのはあんたよこの人気者ぉッ!」
 美羽はキロスの胸にまるで駄々っ子の様に拳をポカポカと叩きつける。それに対してキロスは一体何事かわからないため、ただ戸惑う事しかできない。
「この人気者の得票リア充めッ! 私なんて0票よ! この悲しみが2位のあんたに解るの!? せめて1票私にも分けてよぉッ!」
 まさかの総選挙ネタである。

「得票? お前は何を言ってぇ!?」
 キロスの身体がくの字に曲がる。美羽の拳は徐々に力が込められていき、既にただのボディブローとなっていた。
「キロスのバカぁッ!」
「あぐぉッ!?」
 そしてアッパーカットである。キロスの身体が大きくのけ反る。
「バカァッ! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
 アッパーを決めた美羽は、そのまま何処ぞの悲劇のヒロインばりに涙を溢しながら走り出す。
「み、美羽!? 美羽、待ってよぉッ!」
 その後を、ただ事ではないとコハクが立ち上がり、すぐに追いかける。
 で、突然の攻撃にのけ反ったが、ダウンとまではいかなかったキロスは体勢を立て直すと、持っていた爆弾を放り投げる。
「って、どさくさに紛れて逃げてるんじゃねぇッ!」
 放物線を描いた爆弾は、見事美羽とコハクに着弾。そこに残ったのはぼろ雑巾のようになった美羽とコハクであった。
「ったく……何だってんだよ……」
「それはこっちのセリフよ!」
 いつの間にか、キロスの前に藤林 エリス(ふじばやし・えりす)が立っており、怒りの眼差しで睨み付けてくる。
「今度は何だ……」
「さっきのの言う通りよ! 一番のリア充はキロス、あんたよ!」
 そう言ってエリスはキロスに人差し指を突きつける。それに対しキロスは「またか」とうんざりしたような表情を見せるが、エリスは止まらない。
「あんたこっちに来て大した時間経ってない昨日今日のぱっと出のくせに、彼女が出来ないだのリア充爆発しろ何だの、あつかましいったらありゃしないわよ! なめんじゃないわよ! 大体こちとらかれこれ3年半も前にパラミタ来てんのに恋人なんて気配すらないわよ!」
 後半はただのエリスの愚痴であった。
「いやそんな事情知らねぇよ」
 キロスの言う事も尤もである。
「知らない? あーあー、そうねそうよねそうなのね! 知ったこっちゃないわよねぇあっさり異性のパートナーゲットしたリア充様はねぇ!? あれこれ甲斐甲斐しくお世話されちゃってるんでしょう!? あーあ、こんなトウヘンボク相手じゃ、香菜も報われないわねぇ。かわいそうに」
「あん?」
 香菜の名前が出た瞬間、ピクリとキロスのコメカミが動く。だがそれにエリスは気づかない。
「人気投票にだってちゃっかりランクインしてシナリオだってバンバン出してもらってんじゃないの。巨乳な同期の陰に隠れて禄に出番も無い百合園の格闘お嬢様とか、忘れ去られた挙句ステータスいじられまくって放心状態のイルミンの伸び悩みとかに謝んなさいよ!
 そう言ってエリスが再度、キロスに人差し指を突きつける。ビシィッ! という効果音がつきそうな勢いだ。というかバリツさんとアッ何とかさんの悪口はそこまでだ。
 だがそれに対し、キロスは睨み付ける事で応じる。その表情は怒りに満ちている。
「何よ! 言いたい事あるなら言いなさいよ!」
 エリスはキロスに対し、物怖じせずに怒鳴りつける。
「――さっきから黙って聞いてりゃあ……」
 そう言って、キロスが爆弾を取り出す。流石に「え゛」エリスの表情が固まった。
「総選挙とかシナリオとか、何わけのわからねぇこと言ってるんじゃねぇッ!」
 逃げる間もなく、エリスは爆風に包まれた。
――毎度毎度メタネタが通用すると思ったら大間違いなのである。
「ったく……大体何で俺が選挙なんて出なきゃならねぇんだよ」
 爆破したので多少すっきりしたのか、キロスが息を吐いた。
「立候補した覚えもねぇってのぉッ!?」
 そう言った瞬間、キロスの頭を何者かが捕らえ、締め上げていた。