リアクション
「……ダメですわね。何の反応もなですわ。世界樹と聞いて期待しましたのに」
中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は嘆息する。ユグシールの大樹から手を離す。
パラミタの世界樹ならそれぞれに意志があるというのに、この大樹にはそれがない。語りかけようとも葉の擦れる音が聞こえるだけだった。
「仕方ありませんは、ここは腹いせにベリアルをこの大樹と合成いたしましょう」
大樹の前に置いてある魔王 ベリアル(まおう・べりある)の封じた壺に話しかける。
「え? え? 合体は邪教の館じゃなとできないじゃん? それか業魔殿――」
「気が変わりまた。あれこれ試して二身合体いたしますわ。それともドレスと一緒に三身合体がいいかしら?」
「……私は結構です」
綾瀬にはおられる漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)は遠慮した。
「い、いやだ! 合体したくない! 合体したくない!」
「大丈夫です。悪魔と合体して強くなると言って処刑ライダー(人間)と合体させられるワルオくんよりマシですわ。腐腐腐」
「笑い方がこえーよ! そんな無慈悲な合体してたのか?」
「エンジェルと合体よりマシですわ。今はリアルに。どうすれば合体できるのでしょうか……」
「やめろ! やめてくれぇーーー!!」
壺から悲痛な叫びが放たれる。
その叫びに呼応したわけではないが、木上からも叫びが聞こえる。
枝を折り、壺の上に叫びの主が落ちた。
ベリアルの上に落ちてきたアリサ。落下時の衝撃は樹の枝により半減、更にベリアルで半減して、迷子娘は無事生還した。
「いたぁ……死んだかと思った……」
とアリサが尻を擦る。
「……合体事故?」
とドレスが疑問し、
「これは種族シフトですわ」
と綾瀬が完結する。それに割れた壺から出てきてアリサの尻に敷かれたベリアルが真実を言う。
「ただの事故だ……」
そして力尽きた。しかし、ここにリカーム持ちはいない。
「えっと……ここどこですか?」
なし崩し的にだがアリサは生還した。
唐突ではあるが、アリサは《潜在解放》により【第三世界】と外世界を行き来する【ゲート】能力を手に入れたのだった。
おかげで綾瀬たちの帰りの移動がとても楽になったのは言うまでもない。転送装置(アリサ)をありがとうスティーブン(大樹?)。と綾瀬は感謝するのだった。