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「きっれいな夕焼け……タイチ、来てよかったね」
 セシリアと太壱はひとしきり屋台の食べ物を見て回った後、夕方になって丘の頂上付近に座って夕焼けを眺めていた。
「全く最後まで好き勝手やりやがって……こんなんしてらんネェよ」
 そう言って太壱は、頭についていたうさぎ耳のカチューシャを外す。
「あ、似合ってたうさぎ耳、取らないでよー……勿体ないなぁ」

 二人の間に、しばらく沈黙が流れた。ふと、太壱がセシリアに向き直った。
「ツェツェ、俺はお前が好きだ。未来にいた頃からそれは変わってネェ」
 夕焼けを背に受けて、太壱はセシリアに想いを告げた。
「そして、この時代に来た理由は『お前と一緒の未来を歩きたいから』だ」
「……ん〜それは無理、出来ないよ。わたしは『自分を消しに来ている』んだよ。パパーイ達を救うには、わたしが生まれない選択をして貰わなければいけないし……それにわたし、あんまり長くないし」
 セシリアの言葉は、太壱には無理をして感情を押し殺そうとしているように思えて……。
 太壱は、セシリアのことを抱きしめたかった。けれど、その場から、足が動かなかった。
「身体に異常があるとかは関係ネェ! 欲を言えば、お前と、俺たちの子供とで、生きて行けたらいいと思ってる」
 セシリアの体が、少しだけ震えていた。
「……ツェツェ、俺もお前も生きて幸せになる道、この時代で見つけらんネェかな? ……俺、我が儘言ってるかな?」
「バカタイチ……死ぬのが惜しくなること、言わないでよ……」
 セシリアの声の最後の方は、震えていた。太壱の伸ばそうとした手が空を掻くように、途中で停まった。
 目の前にいるセシリアの声にならない思いが、辺りに木霊して行くようだった。