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 美しい花の咲く草原の片隅で、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)がシートに座っている。
 席を外していたルカが帰ってきた。その足元には吉井 ゲルバッキー(よしい・げるばっきー)の姿が会った。
「……!」
「ダリル」
 身構えるダリルに、すかさずルカが呼びかける。ルカはゲルバッキーとダリルに、親子での対話できる機会を設けようと考えていたのだ。
「…………」
「ね、ダリル。ちゃんと話して」
 静かに、けれど強い意志を持ってルカは訴えた。その真剣な瞳に、ダリルは小さく息を吐く。
「別に急ぎの予定は無い」
 そう言って、ダリルはゲルバッキーを傍らに呼んだ。ゲルバッキーはダリルのそばに伏せた。
 まだダリルとゲルバッキーの間には心の距離がある。だが、ダリルがゲルバッキーを父と呼び、認めたのだ。きっと対話をすれば、もっと距離を縮めることが出来るのではないか。そう、ルカは考えていた。
「じゃあ、まずはご飯にしよ?」
 そう言って、ルカは弁当の入ったバスケットを開いた。ルカの作る料理は見た目にも鮮やかで、ゲルバッキーのことを配慮し、犬が食べてもいい材料だけを使ってある。
「……美味い」
 硬くなっていたダリルの表情も、美味しいルカの料理で少しほぐれたようだ。
 それは、ゲルバッキーの方も同じだったようだ。ササミを食べながら、少し尻尾を揺らしている。
「のんびり食べながら、話そう? せっかく親子で食事しているんだから」
『親子、か……。1万年以上、1人で生きてきていたような気がしていたが……そうではなかったのだな』
 ルカの言葉に、ゲルバッキーがすくっと身を起こす。
『私は多くの剣の花嫁を造形してきた。その全てとの絆を信じる時が来たのかもしれん。そうだ……復讐だなんだと過去への執念に囚われ、私は真に大切なことを忘れていた。この世界で何より大切なのは、親子の絆であったのだ!』
 そう言って、ダリルに向き合うゲルバッキー。
「あれ、記憶はなくなったんじゃ?」
 ルカが突っ込んだ瞬間、三人の間に沈黙が流れた。
「……」
『……』
「…………」
『…………ハッハッハッハッハッハッ』
 沈黙では誤摩化しきれないと察したのか、ゲルバッキー腹を見せて舌を出し、犬の真似を始める。
 ダリルは小さく溜め息をついて、頭を振った。


「あ、飲み物を買ってくるね。二人はゆっくりしていて」
 ひとしきり弁当を食べた後、ルカはそう言って席を外した。二人が素直に話せるよう、気を利かせたのだ。
 一方、残されたダリルは真顔でゲルバッキーの傍らに座っていた。どういう顔をしたらいいのか分からず、結果として無表情になっているのだった。ゲルバッキーもゲルバッキーで、シートの上に伏せている。
「……その、毎日どうやって過ごしているんだ」
 沈黙を破るように、ダリルが訊ねた。
『夜露死苦荘に出勤している。犬小屋にいれば、マレーナが毎日いくらかくれるのだよ』
「人の形にはもうならないのか?」
『なる必要性がないだろう。今のところはな』
 ダリルはゲルバッキーと顔を合わせないまま、遠くの景色を眺めている。
「少し、貴方が羨ましい」
 一人の女性をそこまで強く想えるのだから。そう呟くダリルの言葉に、ゲルバッキーは何も答えなかった。
「……貴方の一部もクイーンと共に逝ったのだな……」
 そう言ってダリルは、ゲルバッキーの背を撫でた。
「死なないでくれて……良かった」
『心配したのか、息子よ』
「たまには俺を整備しろってだけだ。別に、心配なんかしてない」 
 ゲルバッキーの背を撫でるダリル。ゲルバッキーは犬のように、大人しくなされるがままにされている。
 不器用ながらも、何かが少し、変わったようだった。

 屋台から帰ってきたルカは、そんな二人の様子を遠目に見て、満足そうに微笑んだのだった。