リアクション
◆ フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)とフィリップ・ベレッタは眺めの良いスペースで、フレデリカの手作りのお弁当を食べて過ごしていた。のんびりと過ごした遅めのランチタイムは終わり、二人はおしゃべりを楽しんでいる。 「……最近ね、周りにいる人たちがどんどん進路を決めているの。けれど、私はまだ将来の進路について迷っていて、どうしたらいいのか悩んでいて……」 フレデリカは、悩みを打ち明けた。可能なら、卒業後も炎の魔導師としてフィリップの側で力を磨いていけたら。そう思ってはいるのだと。 「フィル君は、卒業後の進路どうしたいの?」 「僕はイルミンスールに残って、これからも魔法の修行や研究をしていきたいと思っています。そうして、後輩を育成したりしていけたら、と」 フレデリカの質問に応えて、フィリップは「でも」と言葉を付け足した。 「でも僕は、僕の進路に関係なく、フリッカさんの進みたい道を見つけてもらえたら、と思うんです」 「私の進みたい道……」 「もちろん、可能なら一緒に居られる道が良いですけれど……フリッカさんがやりたいことを諦めて後悔したりするのは、嫌だって思うんです」 ミスティルテイン騎士団の名門魔法貴族の生まれとして、「騎士団の要職」や「EMU議員」になるという使命と、ごく普通の女の子らしい夢である「素敵なお嫁さん」への憧れ。その間で揺れるフィリップにとって、その言葉は難しい選択だった。 フレデリカの前を、数人の子供たちがはしゃぎながら通り過ぎて行く。無邪気で、何の不安もなさそうな子供たちを眺めていると、 「――フリッカさんの子供、きっと可愛いんだろうなぁ」 と、フィリップが呟いた。つい口から零れてしまったらしい。はっと顔を上げたフィリップの目の前で、フレデリカが顔を真っ赤にしている。 お互いに頬を赤に染めながら、二人はどちらともなく、そっと手を繋いだ。フレデリカの中にはびこっていた不安は、静かに消えてなくなっていた。 |
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