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●第一幕 最終節

 本日のリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)は大忙しだ。小柄なパワードスーツ姿で、プラント出口と上層を何度も往復している。ナナ・ノルデンから生存者情報を得たり、土方伊織一行と共闘したりもした。そしてそのたびに、ノワール クロニカ(のわーる・くろにか)と一緒に救助コンテナを引いて行き、生存者を積んで地上に送り届けている。レジーヌ・ベルナディスらとは途上で幾度かすれ違った。
「ふぅ……いくらかパワードスーツにも慣れてきました。私やノワールにもぴったりサイズのスーツまで用意されているなんて、さすが教導団、といったところでしょうか」
 コンテナを引きながらリースは述べる。本日、全参加者中もっとも移動距離が長いのは彼女とノワールかもしれない。
「良いことでございます。といっても、『たとえ小さな女の子でも使えるならば戦力に』という金鋭鋒団長の思想が垣間見えるようで、素直に喜んでいていいのか、という気もいたしますが」
 レジーヌと併走しつつノワールは言う。こういう場所ゆえ素敵な男性がいても、パワードスーツに隠れていたりしてその姿が満足に拝めない――それが唯一の不満らしい不満の彼女である。
「まあ、おかげで新品をレンタルできたのは良いとしましょうか?」
 といっても、運動が激しいので自分の汗がたまってきて、少々息苦しいリースではあった。
(「……結局汗臭くなっちゃうんだ。でも気にしてはダメだよね。うん。しょうがないよ!」)
 そんなリースたちの前に、ひときわ大きな集団が姿を見せた。
「え……っ、地獄の生物!?」
 彼女が思わず取り違えてしまったのも無理はない。彼ら一団は、紫色の汚泥(?)にまみれていたからである。
 だがそれは、複数のコンテナを連れた救助隊だった。ひどく疲れ、ぼろぼろだったが、コンテナは無事である。
 その中に法衣をまとう人物……マヌエル枢機卿があることをリースは確認した。

 どうやら救出作戦は、成功のようである。