First Previous |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
Next Last
リアクション
第三章 誘いの果てに
「さぁさぁ、こちらへ」
ひとときの憩いなのだろうか。羽を休めるグリフォンの群れ、その中を一人の悪魔兵に引率されて歩いている。
「足下お気をつけ下さい」
「あ、いえ、ありがとうございます」
まるで客人対応。パートナーである和泉 絵梨奈(いずみ・えりな)は気分を良くしているようだが、
「………………」
ジャック・メイルホッパー(じやっく・めいるほっぱー)は「何だコレ」と呆れていた。
ザナドゥの地形調査をしようと南東を目指して出発し、半日が過ぎたあたりで『捕獲』された。
こともあろうにそれは……いや当然と言えば当然か、出会したのはパイモンの軍勢だった。魔鎧状態も解除させられ、今は2人並んで連行されている最中だというのに。
「立派ですね。グリフォン……ですか?」
「えぇ。我が一団で手飼いにしているものです、気に入ってくれましたか?」
「脚肉も締まってますし、翼も大きくて迫力がある。見事ですわ」
「ありがとうございます。あとでこちらの背にお乗りいただく事になるかと思います。準備が出来次第ご案内致します」
「まぁ。今から楽しみですわ」
「ありがとうございます」
…………………………我がパートナーは、なぜに和やかな会話をしているのか。
しかも少しお嬢様気分だった。浮かれるにも程がある、敵に捕まって連行されているというのに。
「この後のご予定ですが」
腰の低い悪魔が笑顔で言った。
「一度馬車にご案内いたします。しばしお時間を頂いた後に謁見となりますが、謁見の前に死んでいただきます」
「死ぬの?!!」
おもてなしからの殺害予告。なんたる落差か。
「もちろんです。魔王パイモンにお会いしていただく前には一度、死んで頂かないと」
「イヤだよ!! 王に会うのにいちいち死んでたらこの一団ゾンビだらけになっちゃうよ!!」
「いえ、ですから一度死んでいただければ結構です。死後の世界は闇に包まれており多くの方が道を見失ってしまいます、しかし我らが王ならば迷えし魂を導き、再びこの世に呼び戻す事ができるのです。王を信じればあなたは救われます」
「なんか宗教の勧誘みたいになったっ!! っていうか信じた後に殺されるんだよね?!! 救われる前に刺し殺されてるよねっ?!!」
ガラにもなく激しくツッコんでいた。完全に取り乱している。
「王への謁見を拒否されるとなると」
ボーイな悪魔は右手の奥を手で示して見せた。羽を休めるグリフォン、その後方には体から引き繋がれた大八車がみえて―――
「いやっ! いやああああああああああああ!」
両手足を縛り吊されたアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)の姿があった。電極も繋がれているのだろう、電気が肢体を巡っているのが視角でも分かる、その度に彼女は脚や秘部をビクンビクンと跳ねさせた。
「もう、やめて…………ください」
衣服は辛うじて……いや秘部だけが隠されているだけか。口元から溢れた唾液が止まることなく彼女の肢体を勢いよく滑り流れてゆくのが見えた。
「んああ! あぁん♪ あっ、あっ!! ぁん♪ もっとぉ……」
「意外と楽しんでらっしゃる!!」
捕縛監禁されてると見せかけての恥辱プレイだった。
「あなた様たちと同じように迎え入れたのですが、どうにもこちらのおもてなしがお気に召されたようなので、今もこのように」
真性のMは恐ろしかった。
とにもかくにも絵梨奈はパニック状態だ、これ以上は無理だろう。
「待て。俺はこのように魔鎧だ、俺がアンタらの仲間になる、それでコイツは見逃してくれ」
「ジャック……」
「分かりました。この世に未練が無くなるまで待つことにしましょう」
「やっぱり僕が死ぬことは確定なんだね?!!」
「それまでは客人兼捕虜として監禁させて頂きますので、あしからず」
一応は馬車に通された客人対応、それでも常に兵に囲まれた捕虜扱い。まぁ、馬車の中にまで兵が居ない辺りが客人扱いなのだろうか。
「あれ……? これって、僕が『死にます』って言わないと出して貰えない感じ……ですよね?」
パイモンが率いる一団、悪魔軍兵とグリフォン群。そのうちの馬車の一つに、2人は幽閉されてしまったのだった。
First Previous |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
Next Last