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【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第1回/全2回)

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【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第1回/全2回)

リアクション

「イコン、ですわね」
 中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は集落を見下ろす巨大な機械兵を見上げて言った。建物の屋根から突き出た巨体は、建物の外からでも十分に、全身の7割程を確認することが可能だった。形状や材質は少なからず異なるのだろうが、おおよそそれは間違いなく『イコン』であると綾瀬は判断した。
 ジバルラたちが制圧したイコン工房、その裏手に彼女はいた。
「ちょっと、そこのアナタ」
「ドレス?」
 魔鎧状態の漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が道行く悪魔に声をかけた。軍服を着ている所を見ると、異常に気付いて援軍に来た、といったところだろうか。殺気立つ男たちをドレスは冷たい声色で足を止めさせた。
「ひとつ答えなさい。ここはパイモン様の息が掛かった集落、ということで間違いないのよね」
「退け!! 貴様等に付き合っている暇はない!!」
 3つの『トライデント』が突きつけられた。それでもドレスは何一つ動じることなく言葉を続けた。
「私たちはパイモン様のお力になりたいの。もちろん忠誠を誓ったわ、あなたたちと志は同じよ」
 これで信じろというのも無理がある。だから彼女は次の句を次いだ。
「私に策があるの。協力してくれない?」
 ザナドゥに関する情報を得るにはパイモンを含む上位の悪魔に近づくのが一番、その為には手柄を立てて取り入るが良い。
 占拠された工房、駆けつけた駐在兵、そして『ザナドゥのイコン』は未だ健在、となれば。
 軍兵たちに先導させて工房内へ裏手から入るとすぐに、イコンの巨大な両踵が並んで現れた。
「何を企んでいるのです?」
「あら、人聞きの悪い。手土産に少しばかり手柄を立てておこうと思っただけよ」
 今は眠りし巨機兵を見つめながらにドレスは小さく笑ったのだった。