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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

リアクション

 緋王 輝夜(ひおう・かぐや)ネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)は、引き手を交代する。
 それまでもケルベロス、瘴気の猟犬、瘴気の猪と、なんとなく避けたくなるメンバーだったが、今度はそれに輪をかけて瘴気の触手、瘴気の樹木人、瘴気の鳥、瘴気の毒蛇だった。
「よくそろえたものねー」
「よければ……ペットに…………どう……です?」
「いらないって」
 ソリに乗り込むと一気に下降していく。
 ネームレスは魔鎧の利を活かして、徐々に体重を重くしていった。ソリがわずかに雪道にのめり込むところで、体重を止める。
「便利よねー。あたしの体重も変えられると良いのになー」
 若干ふくれっつらの輝夜を見て、ネームレスが口元をほころばせる。
「さーて、本気で行くとするか」
 セントバーナードの頭をなでた白銀 昶(しろがね・あきら)清泉 北都(いずみ・ほくと)がソリに乗り込む。交代ポイントで念のため小休憩を取って、下りに備えた。
「無理は、させないでねー」
「大丈夫。こいつらも行くってさ」
 セントバーナードが昶の手のひらを舐めた。
「よし! 出発!」
 軽くジャンプして、下りコースに飛び出した。
「修理はいらないみたいだな」
 歴戦の回復術で賢狼を回復させたコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は、ソリを確認して小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)に伝える。
「妨害もなかったしね。湖もすんなり通過できたんだよ」
「よしっ! 後は任せた!」
 コハクが美羽の背中を軽く叩くと、美羽はコースへと飛び出していく。
「もう遠慮はしないからね!」
 パワーブレスを効かせると、数台のソリを一気にゴボウ抜きする。勢い余ってコーナーで膨らむものの、ソリの操作で立ち直った。
「危なかったー。でも負けちゃいらっれないよね!」
 再度パワーブレスでスパートをかけた。
 下りコースに入った戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)は、リース・バーロット(りーす・ばーろっと)パワーブレスを頼む。
「分かりました!」
 リースはそれに応じたものの、引き手のスピードは思うように上がらなかった。
「スタミナ切れか……」
 ペット達の体力を温存するように走らせてきたが、疲れが見え始めていた。
「できるだけ……と言いたいところだが、無理をするのはやめよう」
 小次郎はコース取りを工夫して、スピードを落とさないように走らせる。しかしその横を、鋭気タップリのペット達が引いたソリが駆け抜けて行った。
 ペナルティによる後退で順位を落とした冬蔦 日奈々(ふゆつた・ひなな)だったが、その後は慎重な操作で少しずつ遅れを取り戻していった。
「追いつければいいんだけどぉ」
 下りは交代無しにサンダーバードとフェニックスに任せる。スタートから頼ってきた2体には疲れが見え始めていた。
「なんとか入賞くらいは欲しいよね〜」
 2体をいたわりつつ、坂道を下っていった。
「ッ……ナイン!」
 交代ポイントをノーストップで抜けると、魂魄合成計画被験体 第玖号(きめらどーる・なんばーないん)が人間化する。分かってはいたものの、高峰 雫澄(たかみね・なすみ)は、突然の変化に叫んでしまう。
「さて、いよいよ本番です」
 人型になった第玖号は、思い切り前方に体重をかける。スピードの乗ったソリは、勢い良く下り始めた。
 カーブに差し掛かると、タイミング良く反対側に体重をかけてソリを調整する。急カーブも難なく切り抜けられた。
「よし、良い調子だね」
 しかし早々に予定外のことが起こる。ここまで頼ってきた賢狼達が、息を切らし始めた。
「やっぱり交代か回復をさせておくべきだったか」
 第玖号がしたり顔でうなずく。
「やっぱりって、分かってたなら、事前になんとかしてよぉ」
「ご心配なく。そこでこれです」
 第玖号は手を伸ばすと、賢狼の背に乗っていたキノコマンを手にする。
「どうするの?」
「狼達に食べさせれば…………なんとか」
「そうか、キノコマーーーン! 君の犠牲は無駄にはしない! ってなるわけないよぉー」
 仕方なく雫澄達はスピードをダウンさせた。
 下りに入って、さしものパラミタ猪にも疲れが見え始める。
 ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)サイコキネシスでカバーするが、疲労までは無くすことができなかった。
「うーん、もうちょいなんじゃが……」
「仕方ない。行けるトコまで行こうぜ」
「……なぁ、アキラよ。やはりわしが重かったのかのう……」
「もう気にするなって。ルーシェはそのままが良いんだよ」
「良い? ……可愛い、のではないのか?」
「んなこと何度も言えるかよ」
 シャロン・ヘルムズ(しゃろん・へるむず)のナビゲートのおかげで順位を上げつつあったロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)だったが、パラミタセントバーナードの息があがってきた。
「がんばってー」
 メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)は、セントバーナードを労わりながら水を飲ませた。
「状況はどうかしら?」
 ロザリンドはシャロンに連絡をとる。
「そうね……その位置をキープできれば、他の人次第で入賞は狙えるかどうかってところかしら。でもスパートをかけてくる人もいるだろうから、難しいわね」
「ありがとう」
 相談を終えたロザリンドをメリッサが見上げる。
「ゆっくり行きましょう。目標は完走で」
「はーい」
 順調だったルカルカ・ルー(るかるか・るー)達のソリも下り坂に入ると、シルバーウルフの足が衰えてきた。
「うーん、交代を用意しておくべきだったかなー」
 カーブの続くコースでは風術で一気に、と言うわけにも行かず、羅 英照(ろー・いんざお)の操縦とルカルカと夏侯 淵(かこう・えん)のバランス操作で進んでいった。
「じゃあ、チョコレートは?」
「チョコレート? あれは優れた補助食品だな。体力の回復や気力の充実にも良い。持っていればシルバーウルフにもやりたいところだ。もっともそんなわけには行かないがな」
「そう言うことを聞いてるんじゃないんだけどなぁ。ほら、バレンタインとか」
「……興味ないな」
「そうかぁ。俺は食いもんなら何でも嬉しいけどな」
 羅英照はチラリと夏侯淵を見る。
「しっかり食べておけ。でないと成長しないぞ」
 185センチから見下ろされた140センチは、憤慨してそっぽを向いた。
「うむ、なんとか乗り切ったな」
 ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)のソリが第2交代ポイントまでたどりつく。そこでもゲシュタール・ドワルスキー(げしゅたーる・どわるすきー)に引き手の交代を任せた。
「お待ちしてましたわ」
 サルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)が荷物を持って乗り込んでくる。ジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)と合わせれば300キロを超えるが、文句を言う親衛隊員はいない。
「用意は良いな?」
「もちろん」
 サルガタナスはウィンクで答える。
 ほぼ同時にブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)もDSペンギンから賢狼へと交代させた。そしてこちらもステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)が乗り込んで3人体制になる。
 ジャジラッドがうなずくのを見ると、ブルタがソリを動かす。ジャジラッドのソリもそれに続いた。
 下り坂も途中まで差し掛かると、ここまで何事もなく来たフラワシの一部に、足取りの重さが見える。
「新たに降霊させたらどう?」
 漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が聞いたが、中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は首を振る。
「そこまでの余裕はないわ」
 スピードを落としながらしばらく進むと、ドレスが提案する。
「私を脱いで行くって手もあると思うけど。どうで奈落の鉄鎖は出番が無さそうだから」
 綾瀬は「それは良い考えね」と鼻で笑う。
「でもドレスが降りるなら、私も降りるわ。どうするの?」
「仕方ないわね。最後まで付き合ってあげる」
 ドレスが人型だったらどんな顔をしただろうか。想像して綾瀬は楽しくなった。
「あまり無理はできぬな」
 ミア・マハ(みあ・まは)が残念そうに言う。
「仕方がないよ。ここまで無事に来ただけでも、凄いんだから」
 下りに突入しようとしたレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が、パラミタホッキョクグマの異変に気付く。
「もう1頭あれば交代させられたんじゃが」
「無いものねだりしてもダメ。ゆっくりでも良いから行くよ」
 パラミタホッキョクグマの具合を見つつ、坂を下り始めた。