シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

ンカポカ計画 第3話

リアクション公開中!

ンカポカ計画 第3話

リアクション


第2章 

 浜辺の混乱はまだ続いていた。
「We can fly !!!」
 セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)は相変わらず1人なのに「We」。
 そしてこれを叫んだということは、ぴゅーーーーーーーーーーーーーーー。バッシャーン!
 崖から飛び降りていた。
 なんとか切り立つ岩を避けて砂浜にあがるが、おなかを打って真っ赤になっていた。
「はあはあ。こりゃひどい目に遭ったのじゃ」
「また紐で繋ぐか?」
 ケンリュウガーこと武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が声をかけた。
 船の中ではケンリュウガーと紐で結んでいたおかげで海に落ちずに済んだのだ。
「ぬ……おぬし……」
「遠慮するこたあねえぜ」
「誰だ?」
 津波にもまれてケンリュウガーの仮面や衣装が全部なくなっていたため、牙竜は素顔だった。
「おいおい。俺だよ。牙竜だよ」
「怪しい……レディを紐でつないでどうするつもりじゃ。監禁して弄ぶつもりじゃな」
「バカ言え。正義のヒーローがそんな――」
「見知らぬ者の世話にはならん!」
 セシリアは紐を持った怪しい青年を警戒し、ダッシュでジャングルに向かっていった。
「そうじゃ。このまま海から離れてしまえばもう落ちることはない! ふはははははー! この私の頭脳プレー! まいったかンカポカめー! ふはははは。ふっはっはっはっは。ふーーーーっはっっっはっっは……げほんげほん。げほっ。げぼーっ」
 走りながら笑いすぎて、咽せていた。
「はて……ここはどこじゃ?」
 無闇に走れば当然こうなる。ジャングルの中で、セシリアはさっそく迷ってしまった。
「し、しまったー! 私はどこのバカじゃー!」
 どこかわからなくなってるバカじゃー。
 さて、浜辺はまだまだ混乱していた。
 みんな喉が渇いて、腹が減っていたのだ。
「おお。こんなところに大きな肉まんが2つ。よこせーーーっ!」
 葉月ショウは、当然のごとく全裸の秋葉 つかさ(あきば・つかさ)の特大おっぱいを目指して駆けた。
「どうぞ遠慮なさらずに、召し上がってください」
 が、ショウは体力がないため砂に足を取られ、ふらふらふらふら。なかなか辿り着かない。
「肉まん……肉まん……」
 砂浜の風紀委員と化している遙遠はそれを見ていたが、鉄槌を振り下ろすことはなかった。
 既にショウの目の前には別のオシオキ職人が立っていた。
「肉まん? 面白いボケですね……」
「ひ、翡翠!」
 のぞき部の真の敵、浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)だ。
 ショウも目が醒めたようだが、その恐ろしい噂を聞いているのだろう。体が言うことを聞かず、逃げることもできない。しかも、タイミング悪く半壊状態のズボンとパンツがずり落ちていく。
「お、お、おわわわわ……!」
「ボケに対するツッコミがない。皆様がボケてボケてボケ倒した。それがブルー・エンジェル号での悲劇を生んだ。そうは思いませんか」
「そ、そ、そうかもしれねえな……」
 自分が船の沈没に関わったことを棚に上げて、翡翠は話を続けた。
「ならば、1つずつツッコミを入れるしかありません。わかりますね」
「ハ、ハ、ハリセンとかだよな?」
「そのつもりです」
 と葉っぱで作ったハリセンを振り上げる。
 ポロリ。バサバサ……。
 あっという間に壊れてしまった。まるで計算通りと言わんばかりに。
「おっと。壊れてしまいました」
「じゃ、じゃああの……ビンタとかそんなんかな……ははははは」
 翡翠は制服の内ポケットに手を突っ込むと、大事に持っていた武器をそーっと取りだした。
 その鈍い光が、のぞき部を震撼させる――ネギペンチだ!
「そのちんちん。ねじり折らせていただきます!」
「うおおおおお!!! 女子部長っ! 脳内エロ蟻地獄させてもらうぜーーーっ!!!」
「あ〜ん。同じ部活内でそんな……いつもより……立ってられませんわ……」
 つかさは見られるだけでくねくねし始め、顔が上気している。
 翡翠は急いでちんちんをねじ折ろうとするが……
「ぐっ! な、なにいーーーっ! またこの一瞬で? しかし、それで勝ったと思ったら大間違いです。遙遠様お願いします!」
「任せてください! おりゃあ!」
 ドッカアアアアン!!!
 遙遠が何もない砂の地面をぶっ叩いた。
 舞い上がった大量の砂はつかさのやらしい姿を隠してしまった。
 つかさの姿に頼って視覚妄想をしていたショウは、慌てて純粋妄想に切り替えた。
 が、やはり突然の方向転換には対応できず、一瞬何かがゆるんでしまった。
 翡翠はそれを見逃さなかった。
「いただきます」
 ボッキーーーッ!
「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
 ショウは大切なモップの柄を折り、折れたちんちんを固定した。完治まで数週間はかかるだろう……。
 そして、砂まみれになったつかさに、遙遠は拾ってきたバスタオルをかけた。
「混乱の元なので、かけてください。拒否するようでしたら、鉄槌が黙っていませんよ」
「わかりました。仕方ありませんね……」
 大きなおっぱいにバスタオルはかえってやらしい感じもするが、それはもう仕方ない。
 遙遠は、ピンク・フラミンゴ号に乗り合わせた如月 正悟(きさらぎ・しょうご)を見かけて話しかけた。
「正悟さん。とんだ目に遭いましたねー。こんなメチャクチャな人たちに囲まれてしまって」
「そう? でも、こういうの嫌いじゃないな」
 正悟はちょっとズレてるのだろうか。
「それに、噂では温泉もあるみたいだし。ねえ。つかささん。砂をいっぱいかぶっちゃったし、温泉入った方がいいよ」
「そうですね。でも、1人で行けるかどうか……」
「心配? そうだよねー。女の子だもんね。しょうがないなあ。じゃあ俺がついてってあげるよ」
 正悟はたんに、やらしいだけだった。
 つかさの肩を抱いて、ジャングルに消えていった。
 全裸のつかさが去って砂浜に平穏がやってくるかと思われたが、そんなことはなかった。
「どこ……ボクの剣……ボクの剣がない」
 剣をなくして気が動転しているのは、九条 風天(くじょう・ふうてん)だ。
「ボクの棒……ボクの棒は……ありますか? んぱー」
 めんどくさい病から一転して“みみ毛の宅急便”になったせいだろうか、脳みそがトコロテンになりつつある。剣がないなら代わりに何か棒でもいいと思っているようだ。
「ボクの棒は……ボクの棒はどこにんぱますかー?」
 男子ではありながら一見端正な顔立ちの女子に見える風天が、両手を前に目をとろんとさせて「ボクの棒は」はまずい。
 ――ここまで直接的な表現は、あの秋葉つかさですらそうそうするものではない。
 砂浜風紀委員の翡翠と遙遠は、残念そうに目を閉じた。
「遙遠様。ここは我らが委員長に任せますか」
「そうですね。委員長は体力あまってますから」
 2人の背後から委員長の姿がゆらりと現れたそのときだった。
「みみ毛ええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
 委員長の登場前にやってきたのは、風天と同じくめんどくさい病から“みみ毛の宅急便”に転病した比賀 一(ひが・はじめ)だ。かろうじて身に付けていたボロボロの服が走りすぎてますます破れ……完全に全裸になっている。
「うわお! 俺なにやってんだ。やっべえな、ほんと。かかかか隠さなきゃ。え? でも俺、これか? これで隠すのか?」
 耳にしたイヤホンからだらりとぶら下がったミュージックプレイヤーを、ちんちんにあててみた。
「こ、これは……!」
 ミュージックプレイヤーは2020年の最新モデルで超小型計量タイプだから、ちんちんが隠れるわけがない。それどころかクリップがうまいことオケケに引っかかり、同化していた。
「ち……ちんポッド! いや、ウォークチンか。ややや、待て待て。くだらねえことを言ってる場合じゃない。お。わ。ここでこの曲がかかるとはな。名曲だぜ〜」
 砂浜風紀委員会からは、ちんちんの鼓動を聴いて恍惚としている変態野郎にしか見えなかった。
 しかも、蒼空学園のサーバー室で親しくしていた2人だからなのか、奇妙な変態同士だからか、一の前に風天がやってきた。
「ボクの棒……ボクの棒……んぱーんぱー」
 今にも風天は「ボクの棒」を見つけそうだ。
 が、その瞬間――
「キイイイイイイイイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」
 一のウォークチンに、委員長の蹴りがもろにヒット!
「てんっっっっっちゅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!」
 ウォークチンは委員長の蹴りによって真っ赤に変色し、まったくやらしくない意味で膨張した。
「ぎょわあああああああああ……んぱーんぱー」
 あまりの激痛に、一の脳みそはトコロテンとなった。男子が心配なのは脳みそよりちんちんだろうが、まあ数週間経てば治る。かもしれない。
「ふしゅうう〜〜〜」
 一の前に仁王立ちして体から湯気を立ち上らせている砂浜風紀委員長は、ランツェレット・ハンマーシュミット(らんつぇれっと・はんまーしゅみっと)だ。
 可憐な乙女なので、船でねっぺしていたことはなるべく触れないであげた方がいい。翡翠はこそこそと何も知らない遙遠に教えてやっていた。
「委員長は船でねっぺを……」
「ええ? あのかわいい顔でねっぺを……?」
「そうなんです。それはもう立派なねっぺを……」
「かわいい娘にはねっぺをさせろと言いますもんね……」
 そのとき、再びランツェレットの奇声が聞こえたかと思いきや、2人の風紀委員はその場に倒れていた。
「んぱーんぱー」
 そこに、マイペースすぎて事態を全く把握していない別の変態がのうのうとやってきた。
「ふふ。一さん。なかなかの膨張率ですね」
 Tバックの水着で尻をぷるんぷるんさせながらやってきたのは、明智 珠輝(あけち・たまき)だ。
「おや? 風天さん。棒だったら私の棒ではいかがでしょう。ラルクさんの棒ほど雄々しくはありませんが、膨張率は彼にも負けませんよ」
「んぱー。棒……ボクの棒?」
「もちろんです。今から約2時間、風天さん。あなたの! 棒です!」
 ズルッ!
 水着を下ろしたその瞬間、かれこれ4度目の奇声が聞こえたのは言うまでもない。
「ここは変態の島ですかーーーっ!」
 委員長として気丈に振る舞ってはいたが、ランツェレットは可憐な乙女。泣き崩れてしまった。
 珠輝はちんちんをおさえながらも、恍惚としていた。
「これは新しい刺激です。また何か新たな世界にステップアップできそうですよ……」
 どんだけ性に前向きなのか、倒れながらもにたりと笑みをこぼしていた。
 一方、風天は棒を掴んでいた。
「はっ! こ、これは――」
「違うよー。風天の剣でも棒でもないよー」
 今度現れた変態は、佐伯 梓(さえき・あずさ)だった。
「いや、たしかにねー。こんな格好してる俺が悪いんだけどねー」
 梓は上半身はしっかりパーカーを着ているのに、下半身が裸だった。わかりやすい変態だった。
「これはズボンがなくなっちゃったからだよー。中のシャツのばしとこ。あーはいはい。その手を離そうね。俺はその気はないし、風天だって彼女がいるんだろー。リースだっけー?」
「はっ!」
 風天は彼女の名前を聞いたからか、ようやく目が醒めた。
「ボク……な、なにを。すみません! あれ? 佐伯さん。ブルー・エンジェル号ですか?」
「うん。風天は、2号から助けにきてくれたんだよねー。へへ。ごめん、俺ちょっと部屋にこもって甘い物食べてたんだー」
「なるほど。さすがは大の甘党党首……ということは、奇行は?」
「さあー。わからない。ただ、ンカポカにもらったケーキの箱あけたら臭かったんだ。やられて――」
 そのときトツゼン。梓の瞳孔がバカッと開いた。奇行症だ!
 風天は警戒して剣に手を添えようとするが……ない!
「まずい! このままではまたトコロテンになるでござる!」
 なんだか今日はピンチのたびに現れる椿薫が一瞬で駆けてきたかと思うと、30センチほどの貝を削って作った手製のナイフを持たせてやった。
「椿さん。ありがとうございます」
「いえいえ。それより奇行に注目するでござる。拙者も未見でござるからね」
 梓はどこからともなくアメリカンクラッカーを取りだして、体の前に水平に持ち上げていた。
 カチッカチッカチッ。
 クラッカーを鳴らしながらゆっくり歩いている。
「椿さん。これは……」
「ダウジングでござるな。古くは地下水や油田、金を掘り当てるのに使用していたと言われる術でござる」
 しばらく歩き回るとクラッカーが異常に大きく跳ね、そこで梓は目を醒ました。
「はっ。風天。どこ行っちゃったんだー?」
 自分が奇行だったことに気がついてないようだ。
「風天殿。クラッカーが跳ねたあの辺り、掘ってみるでござるか?」
「そうですね……」
 と、そのときちょうどよく、わんこしいなが海からやってきた。
「わん。わんわんっ!」
 プチ洗脳がまったく解けない、解ける気配すらない椎名 真(しいな・まこと)の仮の姿だ。
 ぶるぶるっ。ぶるぶるるっ。
 体についた海水をぶるぶるさせて飛ばすと――
 ぴゅーーーーーー。
「わあああ。わんこたーーーん!」
 小さくなった東條 カガチ(とうじょう・かがち)、通称ミニガチくんが頭の上から飛んでいったが、みんなは梓のダウジングの結果が気になって地面を見ていた。
 みんな、砂の中から何が出てくるのか気になるのだ。
「ここ掘れわんわんでござる」
「わんわんっ!」
 ザッザザッザザッ。
 わんこしいなは凄い勢いで砂を掘り出した。中からは、白くて丸い……
「たまご?」
「わんわん!」
 振り向けば、産卵を終えたウミガメがのそのそと海に帰っていく。
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)だ。
 なんと、産卵までしていた!
 エースは海水に入ったところで奇行から醒め、水深10センチのところで……溺れた。
「おごぱあっ。げぶっ。ぎょごおおおけぽごうう……」
 薫と風天が抱きかかえて、なんとかエースの命は助かった。
 と、そのときトツゼンわんこしいなが発症した。
 にゃんこしいなになって――
 ザッザザッザザッ。
 たまごに砂をかけて隠すと、見るなと言わんばかりに「にゃっ!」と鳴いた。
 梓はまだ自分の奇行のことはよくわかってなかったが、貴重な食糧を発見して、しかもすかさず隠したわんこだかにゃんこだかわからないけどかわいい椎名真の頭をいっぱい撫でてやった。
「よしよし。いっしょに木の実ナオランナを採りに行こうかねー」
「わんっ!」
 と、そのときだった。
 わんこしいながクンクン鼻をきかす。
「わん!」
 わんこしいなは猛ダッシュで逃げるようにジャングルに向かっていった。
 何から逃げたのか、それはすぐにわかった。
 みんなが腹を減らしているこの砂浜で、もっとも飢えていると言っても過言ではないこの男が迫ってきたからだ。
「水……水……こわかった。こわかったよう……」
 カナヅチでハラヘリのリュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)だ。
 まだ沈没や溺死の恐怖から解放されてないため、ガクガク震えている。
「お、落ち着こう。なにか、なにか食べて落ち着こう……あ。風森くん。いいですよね? 船を沈めた張本人ですからね、食べていいですよね? あ……ああ……」
 食べ物として指名された仮面ツァンダーソークー1こと風森 巽(かぜもり・たつみ)は慌ててジャングルへ逃げていった。
「あ……風森……くん。ああ……丸焼きに……」
 夢遊病患者のようなリュースは、足がもつれて転んでしまった。
「おもいっ!」
 どこからともなく声がしてきょろきょろするリュースだが、わからない。梓も風天も薫も、そんな声は出していない。
「おもいってばー! リュースちゃーん! 下……。下だ……よう……」
「カガチの声?」
 リュースは腹の下からミニガチくんを救出した。
「これは……!」
「んぱーんぱー」
 ミニガチくんは重さに耐えきれず、脳みそがトコロテンになっていた。ミニガチくん改め、ミニトコくんだ。
「んぱー」
「これは……手羽先だ!!」
 リュースはソークー1を追いかけるのに必死だったため、カガチが小さくなったことなど知る由もなかった。そして今、飢えすぎた彼にまともな判断能力があるわけがない。
「いただきます! あーん!」
 大きな口をあけて、手羽先くんを持ってくる――
 が、ギリギリで止まった。
「この手羽先……くんくん。むむっ。犬のニオイがする。……ふう。川に魚がいるということだし、まだ焦って変な物食べない方がいいか」
 ポイッ。
 ぴゅーーーーーーー。
「んぱーんぱー」
 ミニトコくんはまたどこかに飛んでいってしまった。生きていればいいが……。
 ソークー1は、わんこしいなを追いかけていた。
「わんこしいなさーん! 待ってくださーい!」
「わん?」
 そしてソークー1とわんこしいなは、“リュースの餌”仲間として仲良く逃げることになった。
「わん。わんわん」
「え? 乗っていいんですか?」
「わんっ」
 ソークー1はわんこしいなの背中に乗った。
「やっぱりヒーローが歩いちゃだめだよね〜♪」
「わおーーーん!」
「ストップ! わんこしいなさん。ちょっと待ってくれ」
 ソークー1は走りかけたわんこしいなを止めると、1人の女装男に声をかけた。
「よお、ブラザー!」
 女装男は反応しない。自分のことだと思っていないようだ。
 わんこしいなも、きょろきょろくんくん。しかし、この辺りにはウィルネストもいないし、トライブもいないし、英希もいないし、そもそも巽は背中に乗ってるし……と思いつく女装男を捜しながらその数の多さに脳みそがトコロテンになりかけた。
「わんぱー。わんぱー」
 ソークー1が声をかけたのは、ケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)だった。
 ケイラは最初からブルー・エンジェル号に乗っていたが、おいしい料理を食べるだけ食べたら眠くなって寝てしまっていた。寝てる間にンカポカに屁を嗅がされたのだろう、ようやく脳みそがトコロテンから戻りつつあるところだった。
「んぱ……風森さんぱ?」
「ブラザー!!」
「なんで自分がブラぱー?」
「またまたー。仲間じゃないか!」
「仲間……?」
「もしかして、ケイラさん……まだ自分の奇行知らないんですか?」
「自分が……奇行症に? まさか!」
 と、そのときソークー1はトツゼン発症した。
「ツァンダー体操!」
 わんこしいなの両耳を掴んで前後に動かし、わんこ発進!
「わんわんっ!」
「ツァンダー体操! ツァンダー体操!」
 そのままジャングルに突っ込んでいくおかしなコンビを見て、ケイラはじっと見つめていた。
「風森さんが言っていたのは……一体? はあ。もう何が何だか……」
 そのとき、背後で騒ぎが起きた。
「きゃあああ!」
「逃げろ〜〜〜」
「奴が目覚めたぞ!!!」
 みんなが1人の少女を避けるように囲んでいた。
「んぱー。なんで? なんでワタシを避けるのー?」
 少女が右へ歩けば、みんなも右へ。少女が左に歩けば、みんなも左へ。
「なんでー!!」
 その理由はすぐにわかる。
 親しいからといって少女に不用意に近づいたケイラが犠牲者になった。
「ちゅうううううう〜」
「うそ……だろ? 友だちの血を吸うなんて……ミレイユさん?」
 少女とは、ストローで血を吸う奇行症のミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)だ。
 体力がなくなってる今、血を吸われまいとミレイユを避けたみんなの反応は生きるためには当然だったのだ。
「はっ。ケイラさーん! どうしたのー。唇がむらさきだよー」
「ははは。ミレイユさん。会えて……嬉しい……よ」
 くらくら……。
 ケイラは貧血で今にも倒れそうだ。
「しっかりしてー! そうだ。一緒にナオランナを採りに行こう! ね! きっと元気出るよー!」
「あ……ありがとう……」
 2人は仲良くナオランナを採りに行った。