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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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    ★    ★    ★
 
「ふう、なんとかここまで戻ってこられたよ」
 逸早くコントロールルームを抜け出してきた伏見明子は、希龍千里らの誘導でなんとか最初の入り口まで辿り着き、ほっと一息ついていた。
 ちょうどそこへ、七尾蒼也たちも到着した。
「おおおおお、出口です。出口です! 出口でぇぇぇす!!」
 外の光を見たとたん、いんすますぽに夫とだごーん秘密教団員たちが色めきたった。
「あの光こそ、明日への光。さあ、皆様御一緒に!」
 そう叫ぶなり、いんすますぽに夫たちが出口にむかって猛ダッシュで殺到した。
「おっと」
 レギーナ・エアハルトが、スッといんすますぽに夫たちを交わす。だが、伏見明子は、もろに巻き込まれた。
「あわああああ、ちょ、ちょっと!!」
いあいあいあいあ……
 落下していく叫び声が、あっという間に遠ざかっていく。
 そのまま大地に激突するかと思われたとき、虚空から巨獣だごーん様が現れた。
 光学迷彩を解き、かかげた両手でそっといんすますぽに夫たちを受けとめ……伏見明子が零れた。
「うわああああ」
 ずぼっ!
 そのまま落下した伏見明子が地面にめり込んで姿が見えなくなった。
「だごーん様、ありがとうございましゅるうぅぅ」
 その巨大な掌の上で、いんすますぽに夫とだごーん秘密教団員たちが平伏する。そのまま、いんすますぽに夫たちをかかえて、巨獣だごーん様は再び姿を消していった。
「いったい、今のはなんだったんだ……」
 七尾蒼也たちは、唖然としながらそれを見送るしかなかった。
 なんとか落ち着いたところへ、続々と人がやってくる。三船敬一たちも、パワードスーツで駆けつけてきた。
「ジーナ、迎えに来たぞ」
「その声、まさか、ガイアスさん!?」
 飛んできたドラゴンにいきなり名前を呼ばれて、ジーナ・ユキノシタが目を白黒させた。
「他に誰がいよう。さあ、乗るのだ」
 軽く笑いながら、ガイアス・ミスファーンがジーナ・ユキノシタをうながした。コンスタンティヌス・ドラガセスが、ジーナ・ユキノシタをかかえてガイアス・ミスファーンの背まで連れていく。
 ジーナ・ユキノシタを乗せると、ガイアス・ミスファーンは力強く羽ばたいた。ミスファーンとは違った、若いドラゴンの力強さがそこにはあった。
 一緒に乗り込もうとする七尾蒼也が、一人取り残される。
「今は、あなたはこちらです」
 ワイルドペガサスに乗ったユーリ・ウィルトゥスが、七尾蒼也を手招きした。
「次はと……」
 七尾蒼也を送り出した三船敬一が、入り口に近づいたとき、彼らに気づいたリーフェルハルニッシュが接近してきた。
「まずい、見つかったか。フォーメーションを組むぞ」
 三船敬一が叫んだとき、上昇してきたマインドシーカーが、入り口前に来て盾となった。
『いいです、やってください!』
 久我浩一が叫んだ。
 そこへ迫るリーフェルハルニッシュが、横から狙撃されて止まる。
『今よ!』
 アイゼンティーゲルに乗ったミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が叫んだ。竜虎タイプのアイゼンティーゲルが持つスナイパーライフルの銃口からは、まだ煙がたちのぼっている。コンテナを機体から吊り下げているために現在機動性は皆無だが、今は問題ではない。そう、イコンが連携している今ならば。
「このおぉぉぉ!」
 有栖川美幸の乗るイーグリットタイプの不知火が、被弾したリーフェルハルニッシュを思いっきり地上へと蹴り飛ばした。両肩のスラスターが素早く展開し、ホワイトブルーの装甲に被われた機体の落下をとめる。
「止めだ」
 地上に墜落していくリーフェルハルニッシュにむかって、ロア・キープセイクの乗るジェファルコンタイプのシュヴァルツ・ツヴァイがミサイルを発射した。漆黒のスリムな機体を、フローターウイングを真紅の翼状の物に変えた物でささえている。
 爆発と共に大地に叩きつけられ、リーフェルハルニッシュが爆散した。
「不調法で申し訳ないけれど、いったんこのコンテナに乗ってください、地上に下ろします」
 ミカエラ・ウォーレンシュタットが、遺跡の入り口にコンテナを横着けした。
 時間をかけてまたリーフェルハルニッシュが来てはまずいと、魯粛子敬とテノーリオ・メイベア、ゴルガイス・アラバンディットとエルデネスト・ヴァッサゴー、レギーナ・エアハルトとコア・ハーティオンがさっさとコンテナに乗り込む。
 護衛としてパワードスーツの白河淋とコンスタンティヌス・ドラガセスが上に乗って警戒した。それを、三船敬一が離れたところから見守る。
 無事にコンテナは地上に下り、ロア・キープセイクとエルデネスト・ヴァッサゴーがシュヴァルツ・ツヴァイのパイロットを交代する。同様に、各機メインパイロットを正規の者と交代しながら再出撃していった。
 見あげれば、遺跡がゆっくりと進行方向を変え始めている。同時に、あちらこちらから、輝く光を噴き出し始めていた。ため込んだ魔法力の放出を始めたのだ。
「道案内頼むぞ」
 ゴルガイス・アラバンディットが、ヘルハウンドたちにベースの方向への道案内を頼む。
「よし、我々は待避するぞ」
 護衛として随伴した三船敬一たちとともに、彼らは一路ベースへとむかった。
『ガオオオオオオオオオオン!!』
「おお、ドラゴランダー、ここまで迎えに来てくれたのか」
 ベース方向から土煙を上げて走ってくる龍心機ドラゴランダーを見て、コア・ハーティオンが嬉しそうに言った。
「すまない、私はここから戦列に復帰する。貴兄らの活躍を祈る。行くぞ、ドラゴランダー。今こそ、私たちの力が必要とされるときなのだ」
『ガオオオオオオオオオオン!!』
 三船敬一たちに挨拶を済ますと、コア・ハーティオンは龍心機ドラゴランダーと共にその場から走りだした。
「竜心咆哮! ドラゴランダー、合体フォーム!」
 コア・ハーティオンの呼びかけに応えて、龍心機ドラゴランダーが、合体モードに移行した。生物的な恐竜形態の各部が複雑に折れ曲がり、人形の手足と頭が現れる。
「とうっ!!」
 胸の位置へと移動して大きく開かれた顎の中へと、ジャンプしたコア・ハーティオンが吸い込まれていく。
龍心合体ドラゴ・ハーティオン!!」
 無機質であったセンサーアイに光と共に魂が宿り、背部の余剰エネルギー放出で爆発にも似た閃光が走った。
「蒼空勇者! ドラゴ・ハーティオン! 見参!」
 決めポーズをとった後、ドラゴ・ハーティオンが全速で遺跡へとむかう。
「敵を排しつつ、少しでも遺跡をこの場所から遠ざけるのだ、行くぞ!」
『ガオオオオオオオオオオン!!』
 
    ★    ★    ★
 
「さてと、他に脱出する人のために、できるだけ敵の数を減らしますよ」
 マインドシーカーのメインパイロット席に座った久我浩一が、サブパイロット席の希龍千里に言った。
「ええ。人を守る戦いこそ、防御主体のブルースロートの矜持であり、マインドシーカーの本分ですから」
 未だ稼働しているリーフェルハルニッシュを見つけると、マインドシーカーはスマートガンで攻撃した。マントを翻して弾を避けようとするリーフェルハルニッシュを、誘導弾が追尾して追い込む。
「よおし、うまく追い込んでくれたのだよ」
 振り下ろされた剣をビームシールドで受けとめると、綺雲菜織がソニックブラスターでリーフェルハルニッシュの右肩関節部を狙った。超指向性振動で関節部に支障をきたしたリーフェルハルニッシュの動きががくがくし、右腕がだらりと下に下がって動かなくなった。
「うしろ……」
 サブパイロット席の有栖川美幸がかかえていたサテライトセルが、小さな手でレーダーモニタを指した。
「菜織様!」
 有栖川美幸の声がするよりも早く、綺雲菜織が不知火の両肩にあるメインスラスターを上にむけた。同時に、両脚裏にあるスラスターを使って伸身の宙返りを行う。撥ね飛ばされる形になったリーフェルハルニッシュが、背後から迫っていたもう一機とぶつかってもつれ合った。すかさず、そこへコロージョン・グレネードを投げつけて二機を拘束する。
「砕け!!」
 パワーブースターを全開にしたマインドシーカーが、前面に機龍の爪を構えて突っ込んできた。くっついてもがいているリーフェルハルニッシュの背部から、機龍の爪を突き入れる。同時にビームクローを展開した。さすがに0距離で内部機構を焼かれたリーフェルハルニッシュに炎が走った。素早く腕を引き抜いて上昇した直後に、一機が爆発してもう一機も巻き込まれて誘爆する。
「敵、二機撃破。それにしても、この子はなんなんですか?」
 詳しい説明もなくサテライトセルを押しつけられた有栖川美幸が、綺雲菜織に訊ねた。
「新しいうちの子よ」
 綺雲菜織はそう答えると、不知火のスラスターを後方に戻してマインドシーカーの後を追った。
 
    ★    ★    ★
 
「さて、どうすれば遺跡を弱体化できるか……」
 アイゼンティーゲルに乗ったトマス・ファーニナルが、遺跡を見あげながら言った。焔虎タイプのアイゼンティーゲルでは、浮遊機晶石を装備してはいても空中戦は不向きだ。ここは、地上からの支援射撃に徹するべきだろう。
「あの遺跡は全体に呪紋を施してあるそうですから、それを削ることによって弱体化できるのではないでしょうか。呪紋が集中している場所を集中攻撃し、連鎖的に解封することを進言します」
「そうだな。試してみる価値はありそうだ」
 サブパイロットとなったミカエラ・ウォーレンシュタットの言を入れると、トマス・ファーニナルが魔法陣の交差している場所をスナイパーライフルで狙撃した。銃弾によって呪紋が傷つき、それに関与した魔法陣の輝きが消えたかに見える。だが、それに連動して消えたのは、数メートルの円環型の魔法陣が数個だけだ。その内側や外側、まして、一キロはある巨大な遺跡から見れば、かすり傷にもならない。
「さすがに、遺跡全部を無効化するのは無理か。巨大すぎる」
 悔しそうに、トマス・ファーニナルは言った。