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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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「なんとか動きそうですか?」
 格納庫で擱坐していたシュツルム・フリューゲHを調べていた閃崎静麻に、レイナ・ライトフィードが訊ねた。転倒によって細部がかなりひしゃげていて、まともに動くのかよく分からない。
「だめでも、こいつで飛ぶしかないだろう。なあに、地上まで持てばそれでいい。地面に足がつけばなんとかなるってもんだ。さあ、さっさと行くぞ」
 そう言うと、閃崎静麻は傾いているS−01タイプのシュツルムフリーゲHのコックピットに滑り込んだ。後部シートに、レイナ・ライトフィードと服部保長が無理矢理乗り込む。
うっ。ちょっと、保長君、胸が邪魔です」
「何を言うのです。それを言ったらレイナ殿の方が大きい……」
「お前たち、何をやってるんだ静かにしろ!」
 なんだか後ろから変な会話が聞こえてきて、閃崎静麻が怒鳴った。
「無理矢理乗っているんですから仕方ないんです」
「そうでございますよ」
「なんなら、操縦交代で席を入れ替わっても……」
「ちょ、ちょっと、それは……」
 チラリと後ろの閃崎静麻を見てから、服部保長が言った。
「ああ、もううるさい。出すぞ!」
 姿勢を直してFモードに変形すると、閃崎静麻は機体をホバリングさせて進路を出口へとむけた。
「発進!」
 メインブースターに点火して外へと飛び出す。だが、そこにリーフェルハルニッシュが待ち構えていた。
「まずい!」
 あわてて回避しようとするが間にあわない。リーフェルハルニッシュの剣が、シュツルムフリーゲFの左ウイングを斬り飛ばした。バランスを失った機体が火を吹いて左に傾いた。
 
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「よし、起動完了や。もういいさかい、いくでー」
 イーグリット・アサルトタイプのフォイエルスパーのコックピットの中で、発進準備を終えた大久保泰輔が言った。
「おいでませー、讃岐院顕仁!!」
 両手を挙げて召喚呪文を唱える。大久保泰輔の足にある契約の印が輝き、悪魔である讃岐院顕仁がコックピットに召喚された。
「遅いぞ。手間取りすぎであろう」
 讃岐院顕仁が軽く文句を言う。
「順番待ちだったんや。いい運動にはなったやろ。ほなら、僕らも行きまっせ!」
 格納庫最後のイコンとして、大久保泰輔たちのフォイエルスパーが遺跡を脱出した。
 
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「くそお、だが、絶望は後回しにしているもんでね。あがかせてもらうぜ!」
 閃崎静麻が脱出装置のレバーを引いた。
 シュツルムフリーゲFの機首部分が、脱出カプセルとして機体から射出される。その直後に、残った機体が爆発し、爆風で閃崎静麻たちの乗ったコックピット部分が木の葉のようにきりもみ状態となった。
「くそ、高度が足りなくてパラシュートが……」
 手動装置を引くが、反応しない。
 これまでかと思ったとき、軽い衝撃と共に落下がとまった。
『遅くなりました』
 シュツルムフリーゲFのコックピットをかかえたジェファルコンから、クリュティ・ハードロックの声が聞こえてきた。
「助かったぜ」
 ほっと安堵の息をつく閃崎静麻たちに、シュツルムフリーゲFを撃墜したリーフェルハルニッシュが迫った。
『迎撃しろ!』
 閃崎静麻が叫ぶ。
『む、無理です。両手がふさがったこの状態では……』
 クリュティ・ハードロックが叫んだ。
 リーフェルハルニッシュがピルムムルスの投擲態勢に入る。
『調子にのりなさんな!』
 その腕を、フォイエルスパーがクレイモアを横一線させて切り落とした。返す刀で、今度は縦一文字にリーフェルハルニッシュを切り捨てる。四つ切りにされたリーフェルハルニッシュが、バラバラになって落ちていった。
『今のうちや、いったん安全な所へ行きなはれ』
『了解』
 大久保泰輔の言葉に甘えると、クリュティ・ハードロックは急いで戦闘域を離脱していった。
 
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「ドラゴステッキ。流星・渾身撃!」
 先端にエネルギーを集めたまじかるステッキを突き入れて、ドラゴハーティオンが一撃でリーフェルハルニッシュを粉砕する。
『ハーティオン、無事? あのね、あのね……』
 そこへ、ラブ・リトルが通信が入った。
「分かった、この遺跡を雲海に押し出して自爆させればいいのだな。任せておけ」
 ラブ・リトルから状況を聞いたドラゴハーティオンが、しっかりとうなずいた。近くにいる者たちにも同じ情報を伝えると、両手でがっしりと遺跡をつかむ。
「行くぞ、ドラゴランダー。ドラゴハーティオン、フルパワーだ!!」
『ガオオオオオオオオオオン!!』
 ドラゴハーティオンが全力で遺跡を西にむかって押していく。ゆっくりとした遺跡の移動速度が、少しでも加速される。その周囲では、キラキラと何か光る結晶が大地へと降り注いでいっていた。
「まだ敵はいるんだから、対空監視気をつけて。遊んでるのがいたら直掩についてもらいなさい」
 情報を得たシグルドリーヴァの艦橋でも、風森望があわただしく乗組員たちに指示を飛ばし続けていた。艦底のドリルを使ったシグルドリーヴァは、現在、遺跡に突き刺さった形のままで周囲の敵を掃討している。
「シグルドリーヴァで巨大イコンを押し返すんですわよ! 出力全開!」
 ノート・シュヴェルトライテが叫び、シグルドリーヴァが全速で遺跡を押し始めた。
 
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「マップによると、この先に格納庫があるはずなんだが」
 なんだか壁のエネルギー伝導ラインがぐちゃぐちゃに破壊されている通路を辿りながら、清泉北都が言った。
「きたきた。おうい、こっちだ」
 格納庫で待機していた瓜生コウが、ココたちを手招きした。
「ほら、やっぱこっちで正解だったろ」
 正解だっただろうと、白銀昶が耳をピクピクさせながら言った。
「ああ、こんな所にあった。よかったあ、壊れてはないみたいだけど」
 自分たちの中型飛空艇を見つけて、ココ・カンパーニュが喜んだ。
「どれ、ほったらかしだったんだろ、俺が直してやるから……見せろよ
 ソーマ・アルジェントが、ちゃんと飛べるかどうかのチェックを申し出る。
「助かります。私も一緒に調べますので。リーダー、ちょっと待っててください」
 ペコ・フラワリーはそう言うと、ボンネットを開けてソーマ・アルジェントと共に中を調べ始めた。
 
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「しまった。ラルクデラローズは下においてきたままなのだよ」
 ここまで来て下に降りる方法がないと、リリ・スノーウォーカーが焦った。
「大丈夫だ。こんなこともあろうと思って、ヴァンドールを近くに呼んでおいた。それで脱出できるはずだ」
「いつの間に……。手回しいいよね」
 ララ・サーズデイの言葉にちょっとユノ・フェティダが感心する。
「だが、どうやって呼ぶのだ?」
「好物を用意すればすっ飛んでくるんだよ」
 そう言うと、ララ・サーズデイがリリ・スノーウォーカーのドレスの脇から胸に手を入れた。
「何をするのだ!」
 さすがに、リリ・スノーウォーカーが顔を真っ赤にして怒る。
「えっ、だって、餌が必要だと言っただろう」
 ほかほかした手作りマカロンを両手に持ってララ・サーズデイが言った。
「それは、私の非常食……」
 少しへこんだ胸の部分を手で押さえながらリリ・スノーウォーカーが言った。
「上げ底……」
 思わずガン見してしまった樹月刀真が、問答無用で漆髪月夜と封印の巫女白花にガジガジと囓られる。
「や、闇が穢れとも限らぬし、光がと尊いとも限らぬ。悪魔が天使の顔で近づくのだ。形に囚われず、本質を見抜くのだよ。つまり……、リリがナイスバディに見えぬおぬしは、修行が足らぬのだ!
 リリ・スノーウォーカーが樹月刀真に言い返したが、本人はそれどころではなかった。
「ああ、白虎が参加するのだけはやめて……」
 囓られながら、樹月刀真が玉藻前に助けを求めて手をのばす。
「ん? この手をどうにかしてほしいのだな。ほいっ」
 そう言うと、玉藻前が樹月刀真を自分の豊かな胸に当てた。
「ああ、玉ちゃんずるい!」
 逆効果であった。
「さあ、ヴァンドール、こーい、こいこい」
 じゃれ合う樹月刀真たちやリリ・スノーウォーカーを無視して、ララ・サーズデイがワイルドペガサスを呼ぶ。すると、バサバサと翼の音を響かせて、すぐにヴァンドールが飛んできた。
「はやっ!」
 いったいどこからマカロンを嗅ぎつけたのだとユノ・フェティダが呆れる。
 ぱくんと、ヴァンドールがララ・サーズデイの手の中のマカロンを一呑みにする。
「さあ、これで脱出しよう」
 ララ・サーズデイが、ヴァンドールの背にくくりつけてあった光る箒カスタムを外してリリ・スノーウォーカーに手渡した。自分はそのまま、ヴァンドールに乗る。
「と、とにかく今は脱出するのだ」
 箒の後ろにユノ・フェティダを乗せると、リリ・スノーウォーカーは格納庫を出てラルクデラローズにむかった。