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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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「ぐぶう……、酷い目に遭ったわ……」
 瓦礫の中から這い出しながら伏見明子が言った。巨獣だごーん様の手がクッションになったから助かったものの、まともに落ちていたらこの乙女の顔に傷の一つもつくところだった。
「この恨みを晴らす相手は一人しかいない。かまーん、ラストホープ!!」
 ポーズをつけて叫んでから、いそいそと携帯電話を取り出す。
 トゥルルルルル……、トゥルルルルル……。カチャッ。
「あ、もしもし、サーシャ。私、私。えっ、サギじゃないから、私だってば。大至急、ラスホプの出前一丁ね。早く持ってきてよ。じゃあね」
 カチャッ。
「ふはははははは、これで勝つる。はーははははは」
 
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「出前だって……」
 唖然として携帯電話を握りしめたままサーシャ・ブランカ(さーしゃ・ぶらんか)が言った。
「いつから、ラストホープはラーメンになったんだ。これはイコンだぞ、イコン。まったく、うちのマスターときたら……。ええい、さっさと運んじまおうぜ」
 やれやれという感じで、レヴィ・アガリアレプト(れう゛ぃ・あがりあれぷと)がメインパイロット席のサーシャ・ブランカの背中を叩いた。
「はいはい」
 サーシャ・ブランカがスロットルをあげて離陸スイッチを入れると、イルミンスールの森の中に隠していたS−01タイプのラストホープが垂直離陸を始めた。
 
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「ああ、兄さん、無事だったんですね」
「よかった、待っていたのだぞ」
 ずっと荒人の内部からモニタで扉を注視していた紫月睡蓮とエクス・シュペルティアが、心底ほっとしたように言った。
「待たせましたね。すぐに脱出します。そして、あれを待つ」
 そう言うと、紫月唯斗はミキストリを目で示した。今のミキストリは、主のいないただの人形に等しい。叩くのは、魂がこもってからだ。そして、その魂ごと砕く。
 エクス・ネフィリムをサブパイロット席に移らせ、プラチナム・アイゼンシルトを纏った紫月唯斗はメインパイロット席に着いた。紫月睡蓮は再びガーゴイルに乗ってイコンの外にいる。
『黒帝!』
 イコンホースを呼ぶと、荒人が黒帝にまたがった。黒帝のお尻の所に、紫月睡蓮を乗せたガーゴイルがちょこんとつかまる。
「出ます!」
 黒帝が前足を大きく振って一瞬後ろ立ちになった。荒人が手綱を引く。バンと足を下ろして格納庫の床を打ち据えて形を変えると、黒帝がすばらしいスピードで格納庫を飛び出していった。
「ひゃあ……」
 半分振り落とされるような形で、ガーゴイルが黒帝から離れた。
 馬首を巡らした荒人が上に浮かぶ巨大イコンを見あげた。
「さあ、早く出てこい」
 そのまま、紫月唯斗はアラバスターが出てくるのを待ち続けた。
「あっ、はいはい、私です。睡ちゃんです。お届け物?」
 突然鳴った携帯をとって、紫月睡蓮が首をかしげた。
「えっと、イルミンスール経由で届いているから取りに来いって……。ああっ、はいはい、もちろん行きます。今行きますから待っててください」
 あわてて応対すると、紫月睡蓮は指定されたポイントにむかってあわてて飛んでいった。
 
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「な、なんだ、なんで私のイツパパロトルが倒れている。おのれ、どこのどいつだ。消し炭にしてくれる!」
 遺跡上部に戻ってきたオプシディアンは、ステルスマントで隠していたイコンが倒れているのを見て激怒した。地上に落ちなかったのが奇跡だ。
「まったく、なんだこの羽毛は?」
 機体についていた奇妙な羽毛をいぶかしく思いながらも、オプシディアンはイコンを再起動させた。
 同じころ、アラバスターもミキストリの許に辿り着いていた。
「どうやら、これには手を出さなかったようだな……。いや、そうでもないか」
 二重になっているコックピットハッチの中に入ると、アラバスターは遺跡の外へと躍り出た。
 
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「なんで、まだサテライトセルがいるんやねん」
 西格納庫直前で戦闘タイプのサテライトセルの一団に行く手を阻まれて、大久保泰輔が叫んだ。
「道を開くよ!」
 御凪真人の風術のバックアップを受けたセルファ・オルドリンが、パイルバンカーシールドを前面に構えて突っ込んでいった。バーストダッシュとゴッドスピードの合わせ技で敵を薙ぎ倒していきながら、正面の敵はパイルバンカーで串刺しにする。
 すると、倒されたサテライトセルたちが霧となって消えていった。
「大丈夫ですか。無理はしないでください」
 シールドにつかまって肩で息をするセルファ・オルドリンに、ソア・ウェンボリスがヒールをかけた。
「それにしても、まだレプリカの方が残っていたのか。道理で、コントロールを受けつけないはずだ」
 面倒だなと、緋桜ケイが顔を曇らせた。
 実体を持つサテライトセルは、コントロールを制圧したけんちゃんが無害化してくれているが、霧から生まれたサテライトセルは、完全にシステムとは無関係の存在だ。かつてこのイコンを操作し、今はミイラと化してしまった剣の花嫁たちの記憶だけで勝手に動いているにすぎない。
「また来るぞ!」
 霧が再び通路の後方で形を取り始めるのを見て、閃崎静麻が叫んだ。
「ここは、我が防ぐとしよう。そなたらは、早くイコンへ」
 讃岐院顕仁が高周波ブレードを下段に構えて、サテライトセルたちの方へと進み出た。
「一人で大丈夫なのですか。私も……」
「いらぬな。それに策もある。なあ、泰輔」
 レイナ・ライトフィードの言葉を退けると、讃岐院顕仁が何やら大久保泰輔に目配せした。
「まあ、そういうことや。ここは讃岐院はんに任せて、僕らはイコンに急ぐで」
 大久保泰輔に急かされて、一同はイコン格納庫にむかって走りだした。早くイコンに乗ってしまえば、サテライトセルなど簡単に排除できる。
「さて、我を抜くことができるかな」
 通路に立ち塞がりながら、讃岐院顕仁がサテライトセルたちに言った。
 
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「うおおおおお、俺様の宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢があぁぁぁ。どこのどいつだ、こんなことをしやがったのは」
 転がされている宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢を見て、ゲブー・オブインが叫んだ。
「ちっくしょう、この借りは返す。暴れるぜ」
 中指を立てて誰にともなく挑発をすると、ゲブー・オブインはイコンに乗り込んだ。
「最高ですぜ、ピンクモヒカン兄貴。どこまでもついていきますぜ!」
 相変わらずの調子で、バーバーモヒカンシャンバラ大荒野店が一緒に乗り込んだ。
 動きだした宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢が、コロコロと格納庫の床を広がっていく。
『ありゃりゃ?』
 立ちあがる前に勢いがつき、黒帝が踏み抜いた床の出っ張りでピョンと跳ねた。そのまま、格納庫の外に落ちていく。
『あれーーーーーーー』
『ピンクモヒカン兄貴、最高の紐なしバンジーーーでーーーーーすーーーーーーーー』
 悲鳴まで、外にダダ漏れである。
「今のは、いったい何だったの?」
 突然飛び出してきた宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢を避けた真紅のセンチネルが、メカ雪国ベアと共に格納庫に着陸した。
「来てくれたか」
 ソア・ウェンボリスに空飛ぶ魔法↑↑をかけてもらった緋桜ケイが、彼女と一緒にそれぞれセンチネルとメカ雪国ベアのコックピットに飛び込んでいった。
『出るぞ。きっと、奴も現れるはずだ。いくぞ
『ええ、間違いないです。いっきますよー
 前を塞ぐリーフェルハルニッシュを剣とマフラーパンチで倒し、進路を確保して無事着地する。
 センチネルとメカ雪国ベアが出ていくと、順番を待っていたかのように御凪真人のパラスアテナが格納庫中央に進み出た。ミキストリに匹敵する重圧なシルエットを持つが、その半分は重火器によるものだ。コームラントをベースにしているが、コバルトブルーの装甲はより重厚になっている。
「ここで少しは汚名を雪いでおかないとね。フリーランスで動くにはつらいと言ったところかな。残っている敵を掃討しますよ」
 次々に発進していくイコンを見つけて集まってきたリーフェルハルニッシュにミサイルの照準を合わせると。一斉発射と共に、パラスアテナが飛び出していった。ミサイルを受けて半壊したリーフェルハルニッシュにビームシールドを叩きつけて真っ二つに粉砕してなお直進していく。