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紙ペットとお年玉発掘大作戦

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紙ペットとお年玉発掘大作戦

リアクション

 あてもなく荒野を歩く【イルミンお宝鑑定団】のメンバーは、楽しげに会話を交わしながら進んでいた。
「ミレイユさんのリスは、小さくて可愛いね」
「ケイラさんはラクダさんなんだよね。ゆったりしてて癒し系だね」
 ケイラ・ジェシータとミレイユ・グリシャムがにこやかに会話を交わす。
「レンさんの虎、カッコいいな!」
「金色の鷲は、おまえに似合ってるよ」
 エル・ウィンドとレン・オズワルドが共に歩きながら語る。すると、きゅるる〜という音が響いた。
「ウィル殿ウィル殿、なんだかいい匂いがするであります……!」
「ヨダレを垂らすな! 俺の服が汚れる!」
 シェイド・クレインの持ってきた弁当の香りに、ルナール・フラームが瞳を輝かせる。
 和やかな雰囲気で宝探しを続けるメンバーに、足音が近づいた。
「ゥウグヤァアア!」
 ガンセキガメが八体、回転しながら飛んでくる。
 同時に、銃声。警戒に当たっていたデューイ・ホプキンスが【弾幕援護】を張った。
 メンバーの行動をカバーし、戦いに備える時間を稼ぐ。
「迎え撃つぜ、みんな、準備はいいか?」
「もちろんです」
 エル・ウィンドに応えるホワイト・カラーの背後から、馬に騎乗したギルガメシュ・ウルクが近づいた。
 エル・ウィンドにライトブレードを向け、にやりと笑う。
「私の背中、お前に預ける。手を抜いたら承知しないぞ!」
「了解っ!」
「シェイド、デューイ、行くよ!」
「数は互角ですが、油断しないでください!」
「……ああ」
 ミレイユ・グリシャムの呼び掛けに、シェイド・クレインとデューイ・ホプキンスは武器を構えた。
「サポートするよ!」
「援護する」
 ケイラ・ジェシータとレン・オズワルドが後方で構える。
 全員の準備が終わったとき【弾幕援護】の効果が切れた。
「ゥウウグヤアァアア!」
 それを待っていたかのように、ガンセキガメが一斉に飛んできた。
 レン・オズワルドのアーミーショットガンとデューイ・ホプキンスの機関銃が唸り、ガンセキガメの接近を防ぐ。
「そこで止まっていてください」
 シェイド・クレインは【先の先】でガンセキガメへ肉薄。
「シェイド!」
 あとから【超感覚】を使用したミレイユ・グリシャムが近づく。
 シェイド・クレインの鉄甲による【轟雷閃】とミレイユ・グリシャムの【雷術】が合わさり、ガンセキガメの脳天を穿つ。
「行くぜっ!」
 エル・ウィンドが【ヒロイックアサルト】の「暁光」を使用。更に【光術】を紡ぎ、放つ。
 球の形の光は、「暁光」によって輝きを増しガンセキガメの頭へいくつも飛んで行く。
「悪い子には、オシオキです」
 ホワイト・カラーはブラックコートを使用しガンセキガメの背後に回っていた。ライトブレードを構え、【ソニックブレード】を放つ。
「みんな、頑張れ!」
 ケイラ・ジェシータが【パワーブレス】によりメンバーの攻撃力を上昇させる。
「攻撃は最大の防御也……ってなわけでファイアアロー!」
 向かってきたガンセキガメに、ウィルネスト・アーカイヴスが弓矢状に引き絞った【火術】を発射。
「ゆくぞ!」
 ギルガメシュ・ウルクが馬上から、【ヒロイックアサルト】「暁光」を使用しつつ【チェインスマイト】をガンセキガメに見舞う。
 次々と繰り出される攻撃に、ガンセキガメが後退。全てに攻撃を加えることなく、退けた。
 これで【イルミンお宝鑑定団】の妨害はなくなった。
「よし、宝探し再開だ! みんな、楽しく行こうぜ!」
「おー!」
 エル・ウィンドの掛け声に、メンバーが明るく応えた。
「紙ペットさん達、どう?」
「このあたりにありませんか?」
 ミレイユ・グリシャムとシェイド・クレインが言いながら紙ペットを追う。ギルガメシュ・ウルクも馬を連れて周囲に目を光らせる。
 それを追いながら、楽しげに会話が交わされていた。
「ボクは、派手で価値のある宝が欲しいな」
「ふふ、エルらしいですね」
「全員に配ることを考えると、高価なものは期待できないだろう」
「レンさんは、現実的だね」
 エル・ウィンド、ホワイト・カラー、レン・オズワルド、ケイラ・ジェシータが語る。
「もっと夢を見ようよ。宝箱の中にぎっしり宝石が入ってるとか、マンモスが入ってるとか」
「……それは夢を見すぎだ」
「さすがに、マンモスが入っているわけないですよ」
「? そう?」
 パートナーたちの指摘に、ミレイユ・グリシャムが小首をかしげる。……と、先を行くウィルネスト・アーカイヴスが拳を掲げた。
「お宝発見!」
「掘るでありますっ!」
 早速土を掘り返し始めた。金色の紙鷲も円を描いて飛び、このあたりに宝があることを教える。
「エル、あの岩の下みたいですよ」
「ギル、そっちは頼んだ!」
 ギルガメシュ・ウルクがスコップを振り上げる姿を確認し、エル・ウィンドが岩の下にスコップを突き立てた。
「このあたりを集中的に探せばよさそうだね!」
「気を付けてくださいね」
 ミレイユ・グリシャムとシェイド・クレインも紙リスが示す場所へ。【光学迷彩】を使用しているデューイ・ホプキンスも続く。
「ふたこぶらくだ、そこでいいんだね?」
 ケイラ・ジェシータが、ゆったり歩く紙ふたこぶらくだに声をかけた。
「あまり慌てるなよ」
 色めき立つメンバーに苦笑して、レン・オズワルドが告げる。すると彼の頭の上の紙虎が一声鳴いて、一点を示した。
「ここを掘ればいいんだな?」
 レン・オズワルドもスコップを使い、土を掘り返す。
 あちこちでスコップを使用する【イルミンお宝鑑定団】は、宝箱を次々と掘り当てた。

「行け!」
 ロッテンマイヤー・ヴィヴァレンスが紙鷹をけしかける。紙鷹は立川るるの紙アルパカを狙う。
 しかし戻ってきた紙鷹は紙アルパカではなく、宝箱を持って戻ってきた。
「やったぜぇえぇ!」
 ロッテンマイヤー・ヴィヴァレンスは、狂ったように笑う。
「さぁ、次だ次!」
 宝を得た彼女は再び紙鷹をけしかけた。
 荒野に、メロディーが響く。
 宝を探す【荒野で口笛】のメンバーの一人、日下部社が口笛を吹いていた。その様子にルーク・クレインが微笑む。
「楽しそうですね、日下部さん」
「もう二つも宝を手に入れたからなぁ〜」
「なかなか効率的な作戦よね」
「三つめもすぐに見つかりそうですよね」
「そうやろそうやろ?」
 白雪魔姫とエリスフィア・ホワイトスノウの言葉にっと笑い、気を良くした日下部社がもう一度口笛を吹く。
 そのとき、紙鷹が急降下してきた。
「危ない!」
 ルーク・クレインが白雪魔姫とエリスフィア・ホワイトスノウを庇う。
「うわ、紙カバが!」
 紙鷹は紙カバを捕らえ、光をまといながら飛んでいく。
「待ってよ」
 シリウス・サザーラントが楽しそうに微笑んで紙鷹を追う。
 アサルトカービンから放たれた【シャープシューター】が彼の左肩をかすめる。
「いいよ……遊んであげる。精々俺を楽しませてよね」
 シリウス・サザーラントは【紅の魔眼】で魔法攻撃力を上げ、【炎術】を放つ。
「シリウス、待ってください、それは……!」
 降りてきた紙鷹を狙った炎は、ポイと捨てられた紙カバを焼く。
「お、俺の最強の紙カバが……」
 がっくりと肩を落とす日下部社。
「シリウス!」
「俺はルークを守るために攻撃したんだ。悪いのはルークだよ」
「嘘だ!」
 言い争う間に、紙鷹と銃声は消えていた。
「……大丈夫ですか?」
「災難だったわね」
「ごめんなさい、日下部さん。シリウスが……」
「ええよええよ。宝は無事やしな」
 メンバーに、にかっと笑いかける。
「それより、あと一つの宝を探しや! 俺も手伝うで!」
 びしっと指を指して、口笛を吹く日下部社に、メンバーは頷いた。
「おっ、あっちなんかどうや?」
 日下部社が、岩影の辺りを指差す。
「ニャァー」
 しかし、紙猫が示したのは、彼の足元だった。
「そこみたいです……」
「退いてくれない?」
「いやぁ、すまんなぁ」
 白雪魔姫とエリスフィア・ホワイトスノウは、宝を掘り返し始めた。
「もう少し、右を掘った方がいいと思うわ」
「はい、わかりました」
「俺も手伝うで!」
 そうして土を掘り返すと、木製の宝箱が出てきた。
「これはあげるわ」
 白雪魔姫は、エリスフィア・ホワイトスノウに宝箱を差し出す。
「あっ、ありがとうございます」
 エリスフィア・ホワイトスノウが宝箱を開ける。
「あら、いいわね」
 白雪魔姫が瞳を光らせる。中には、着せ替え人形が入っていた。
「シリウス、手伝ってください」
「……俺、あっちに行こうかな〜」
「少しは手伝え!」
 ルーク・クレインは、拳を思い切りシリウス・サザーラントにぶつけようとする。
 しかし、シリウス・サザーラントは、ひらりとかわした。
「……はぁ」
 ルーク・クレインが仕方なく土を掘り始める。シリウス・サザーラントは蒼い蝶を手の平に載せて戯れ始めた。
 やや離れた場所で、ロッテンマイヤー・ヴィヴァレンスが拳を振り上げた。
「宝探すぜぇえ!」
 意気込む彼女の先で、紙鷹は宝の場所を二か所示した。

「ゥウグヤアァアア!」
 巨大なガンセキガメが飛び出し、くるくると回転する。
「いくぜ、ドラゴニックマグナム!」
 ネヴィル・ブレイロックが【ドラゴンアーツ】を発動しつつ右拳の攻撃をガンセキガメの右足へ。
「まだまだ、ファントム!」
 さらに左拳を突き出し、得意げに微笑んでいる。
「ワゥン!」
 紙ブルドッグも一緒になって吠える。
「援護します」
 ガートルード・ハーレックが【アルティマ・トゥーレ】を発動。雅刀が冷気をまとい、冷やかな一撃をガンセキガメに浴びせる。
「邪魔をするなら、カタールで語らせて貰います」
 ザカコ・グーメルが、ガンセキガメの正面に飛び出し、【轟雷閃】をまとわせたカタールで尾に切りかかる。
「ゥグヤアアッァァ!」
 痛みに激高したガンセキガメがザカコ・グーメルを睨む。
「どこ見てるんだ? こっちだぜ!」
 ガンセキガメの背後で強盗ヘルがにやりと笑う。【隠れ身】で死角に入った彼は、アーミーショットガンで攻撃する。
「二連打いくぜ! ドラゴニックマグナム、ファントム!」
「これでどうです?」
「カタールの語りは、いかがですか?」
「地獄に落ちな!」
 四人の攻撃が次々と放たれ、ガンセキガメはその場に動かなくなった。
「ワゥン!」
 と、紙ブルドッグが甲高く鳴いた。
「宝を見つけたようですよ! ネヴィル、掘りましょう」
「おう!」
 足取りも軽く、ガートルード・ハーレックとネヴィル・ブレイロックが紙ブルドッグを追う。
「ガォオー」
 小熊も鳴いて、地面をたたいた。
「おっ、そこだな!」
「見つけたようですね」
 ザカコ・グーメルと強盗ヘルが、スコップを振り上げる。ほどなくして鉄製の宝箱が出てきた。
「やっぱ宝箱を開ける時ってのはワクワクするぜ」
 強盗ヘルが宝箱を開ける。中身は、小判。
「ザカコ、もらっていいか?」
「いいですよ」
 ザカコ・グーメルが頷いたその時、紙小熊が一点を示した。
「また見つけてくれたようですね」
「行こうぜ!」
 二人は紙小熊を追う。
「やったぜ!」
 ネヴィル・ブレイロックが歓喜の声を上げる。
「よかったですね、ネヴィル」
 宝箱の中身、Jのマークのついた漫画単行本を、大事そうに抱きしめるネヴィル・ブレイロック。
 ガートルード・ハーレックが微笑ましく見守る。
「ワゥン!」
 紙ブルドッグが新たな宝を発見して、高らかに鳴いた。

「よっ、と」
 紙犬の示した宝の位置を、葛葉明が掘り返す。
「本当に、エリザベートちゃんの匂いがここからするのね?」
「ワンッ」
 紙犬の反応に頷き、銀色の宝箱を探し当てた。
「ボロ布が入ってるように!」
 祈るように、宝箱を開く……。
「! これよ!」
 葛葉明がにっこり微笑み宝を取り出した。中身は、兜とボロ布。
「急ぐわよ!」
「ワン!」
 紙犬と共に、イルミンスール魔法学校へ急ぐ。