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リアクション
ごつごつした岩場を、二匹の犬が駆けまわっていた。
一匹は紙ブルドッグ。もう一匹は、顔がブルドッグに酷似したドラゴニュート、ネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)だ。
「お宝、お宝!」
鼻を動かす紙ブルドッグと共に、ネヴィル・ブレイロックが宝を求めて駆けまわる。
「頑張って探しましょう」
二匹の姿を微笑ましく見守りつつ、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は雅刀を手に周囲を警戒する。
と、その瞳が、近寄ってくる紙小熊を捉えた。
「ザカコも、みかん食うか?」
「はい、頂きます」
のんびりと紙小熊を追いかけるのは強盗 ヘル(ごうとう・へる)とザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)。
のそのそと歩く紙小熊には紐が付けられ、強盗ヘルの手に握られている。
「それにしても、校長にしては、めずらしく楽しそうなイベントですね」
周囲を見渡し【殺気看破】で警戒しながらザカコ・グーメルは呟いた。強盗ヘルが頷く。
「たまには、こうやってまったり行動するのも悪くないな」
ゆったりと宝探しを楽しむ二人に、ガートルード・ハーレックが近づいた。
「よろしければ、協力しませんか?」
「! はい、是非お願いします」
突然の呼び掛けに驚いたザカコ・グーメルだったが、快く頷いた。
「よろしくな。あ、みかん食うか?」
「頂きます。ネヴィル!」
みかんを受け取ったガートルード・ハーレックは、ネヴィル・ブレイロックを呼ぶ。彼は紙ブルドッグと共に走ってきた。
「お? 協力するのか?」
「はい。ブルドッグを接触させましょう」
ネヴィル・ブレイロックは紙ブルドッグを拾い上げた。強盗ヘルも紐を引き、紙小熊を拾い上げる。
むっくりした二匹が前足を伸ばし、触れあった。
光が溢れ、周りを光の球がぐるぐるまわり、二匹に吸い込まれていった。
「さあ、探しましょう」
張り切るガートルード・ハーレックに応じ、紙ブルドッグが駆けだす。紙小熊も足を速めた。
「自分達も行きますよ」
「ああ。見つかるといいな」
ザカコ・グーメル達は変わらずのんびりと、その後を追った。
赤い虎の姿をした紙ペットが、固い大地を蹴る。
「ワクワクするぜっ!」
にやりと笑ってロア・ワイルドマン(ろあ・わいるどまん)が紙赤虎を追いかける。【超感覚】を使用し、その頭に赤い虎の耳がはえた。
「敵が近いよっ!」
同じく【超感覚】を使用し、叫ぶティー・ガー(てぃー・がー)。
「わかってるぜ」
ロア・ワイルドマンは【光条兵器】の大爪を、ティー・ガーはリターニングダガーを構える。
「ゥウヤアアァアアア!」
飛び出してきたのはガンセキガメ十数匹。大きさは様々だ。
「ねぇロア、どっちが多く魔物を倒せるか、勝負しようよ」
「……いいぜ」
獲物を目前にした肉食獣のように鋭く目を光らせ、ロア・ワイルドマンが笑う。ガンセキガメの集団と対峙した。
「うおおおおおおおー!」
「がおがお〜ん!」
ロア・ワイルドマンとティー・ガーは唸り声を上げ、ガンセキガメの前へ躍り出る。
ティー・ガーがリターニングダガーを投擲。体を逸らし避けるガンセキガメの首をロア・ワイルドマンの大爪が両断。
「油断しちゃだめだよっ!」
ロア・ワイルドマンの背後に迫ったガンセキガメを、戻ってきたダガーで弾くティー・ガー。
「手を抜いてやってるだけだぜ」
八重歯を光らせ、ロア・ワイルドマンが大爪を振るう。怯んでひっくり返ったガンセキガメの腹に、リターニングダガーが刺さる。
「まだまだっ!」
二人はそれぞれ武器をふるい、ガンセキガメを駆逐していく。
固い亀の集団は、すぐに一掃された。
「がおおおおお〜ん!」
「がっはっは。これが俺達の実力だぜ」
勝利の雄叫びと豪快な笑いが、荒野にこだました。
ティー・ガーはロア・ワイルドマンに駆け寄る。
「ロア、ご飯奢って! お肉がいいお肉!」
「ティー、勝負は引き分けだぜ?」
「関係ないよっ! 奢らないって言うのなら噛み付いてやるんだからね!」
「あー、わかった。奢ってやるよ」
言い合っていると、人影が近づいた。
「犬〜、犬〜、エリザベートちゃんの匂いを探してよっ!」
きょろきょろあたりを見渡しながら、紙犬と走る葛葉 明(くずのは・めい)だ。
「おう、明。一人か?」
片手を上げてロア・ワイルドマンが呼ぶ。
「そうよ」
「だったら、協力しようぜ」
ロア・ワイルドマンが、戦闘の間木陰に置いておいた紙赤虎を差し出す。
「……ボロ布を探すためには、たくさん宝箱を開けた方が得よね。わかったわ!」
葛葉明が紙犬を持ち上げ、紙赤虎と接触させた。光が二匹を包む。
光を取り込んだ二匹は、すぐさま駆けだした。
「ただの宝じゃだめよ。ボロ布入りを探してね!」
紙犬に呼びかけつつ共に走る葛葉明。その姿にロア・ワイルドマン達が呆気にとられていると、紙赤虎が一声鳴いた。
「お、あったか?」
「掘ってみようよっ!」
二人で協力して固い土を掘り返す。掘った先に、鉄製の宝箱二つ。
「何が入ってるんだ?」
「いい物入ってるかな?」
二人は蓋を開ける。そこには、ノースリーブのシャツと、金の虎像が入っていた。
悠然と、荒れた大地を見下ろす紙鷹。
その紙鷹を見上げながら、神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)が歩く。レイス・アデレイド(れいす・あでれいど)は、広い荒野を見渡す。
「すげー広くないか? これで見つけるのは、骨が折れそうだな?」
「宝探し……まあ、見つかればいいのですが、大変そうですねぇ」
レイス・アデレイドと神楽坂翡翠が呟きつつ歩く。
「鷹の探知能力が、発揮されればいいのですが……」
神楽坂翡翠の呟きに頷きつつ、レイス・アデレイドが配給されたスコップと地面を交互に見た。
そんな二人の背後から、紙の小さな象がのっそり歩いてきた。
「さぁ、行くのよ! 手乗り象!」
紙象をけしかけるシィリアン・イングロール(しぃりあん・いんぐろーる)を、四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)が見守る。
「まぁ、まずは一個目よね」
「宝箱バンバン探しまくるわよ!」
相反する二人の言葉を知ってか知らずか、紙象が一声鳴いた。
「もう見つけたの!?」
「そこを掘ればいいのね?」
紙象の鼻が示した位置を、掘り返す。二人で力を合わせて固い土を掘ると、銅製の宝箱が出てきた。
「宝箱宝箱っ!」
「はいはい、開けていいわよ」
子犬のように宝箱に駆け寄るシィリアン・イングロールに、四方天唯乃が告げる。笑顔が輝き、宝箱が開けられた。
中には、栄養ドリンクが入っていた。
「……変な物が入ってるのね……」
首を傾げる四方天唯乃。そんな彼女を置いたまま、シィリアン・イングロールは紙象と先に進んでいた。
「あれ、誰かいるよ!」
「本当だわ。あれ……紙ペットはどこに?」
「上だよ、上!」
シィリアン・イングロールの差す先に、紙鷹が飛んでいた。
「シリィ、手乗り象貸してくれない?」
「うん」
四方天唯乃は紙象を受け取ると、大きく振りかぶった。
「えいっ!」
そして、優雅に空を飛ぶ紙鷹へぶつけた。
「――ッ!」
声ならぬ声を上げ、紙鷹が墜落。紙象と共に落ちていく。
「な、なんですか!?」
「象が飛んできたぜ!」
目を白黒させる神楽坂翡翠とレイス・アデレイドに、小首を傾げる四方天唯乃とシィリアン・イングロール。
「え? だって接触でしょ?」
「紙ペットをぶつければいいんだよね?」
「いえ、ぶつけなくても触れあうだけでもいいみたいですよ?」
「紙ペット、伸びてるぜ」
苦笑し、ため息をついて神楽坂翡翠達が応える。
「そうなの?」
未だに首を傾げている四方天唯乃の傍らでシィリアン・イングロールが【ナーシング】を唱えた。
伸びていた紙ペット達が起き上がった。
「まあ、こうして出会ったのも何かの縁ですし、協力しましょうか」
神楽坂翡翠が手を差し出した。
「うん、よろしくね!」
たがいに握手を交わす。それを待っていたかのように、紙ペット二匹は走り出した。
「待って!」
「急ぎすぎだ!」
パートナー達が追いかける。四方天唯乃も神楽坂翡翠も、その後を追った。
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