リアクション
21:00
「大騒ぎだな」
教官室から窓の外を眺め、その教官は言った。
「わだかまりを捨てられるよう、自主的に打ち上げをやっております」
鈴はにこりともせず、その教官にプリモが持ち込んだおはぎと月餅を渡した。教官は受け取って一口、美味いな、と言った。
「あまり騒いで、ご近所からクレームが入らないように」
「伝えてあります」
外はもはや、狂乱の嵐だった。
マリーアが余った豆を全部食べてくれたのはいいとして、セオボルトは芋ケンピを配って布教活動に専念し(仲間を増やしたようだ)、岩造は豆撒き組の女生徒に声をかけまくっていた。
椎名が手当たり次第に配る激甘のチョコは、一部の非モテを泣くほど感動させ、ナギの苦いコーヒーを拒否するほどだ。
ゲーム中二名を倒した剛太郎は、自身も脱落となったものの、最優秀選手として賞味期限の切れたチョコレートを贈られ、頬を引きつかせていた。
ティーが(勝手に作った)参加賞の勲章型チョコを配り、イコナはセレンフィリティとセレアナにクッキーと紅茶の出来を褒められた。イコナは顔を赤くして、ティーの後ろに隠れてしまった。「可愛い」と微笑む二人の女性の水着姿に男たちの目は釘付けだったが、セレンフィリティたちはお互いしか見ていなかった。
ニーナはスタンリーの勧めで、誰かにチョコ作りを習おうとウロウロしている。
アキラとサイはさっさと帰り、怪我人の治療を終えたロゼはその場を離脱し、知り合いにチョコを渡しに行ったが彼らの不在には誰も気づかなかった。
「何と言ったかな、キミに直接意見を言った二名。些かやりすぎの感もあるが、そういう奴はうまく育てればいい軍人になる。キミにとっても、いい勉強になるだろう」
「……そのことについて、一つお尋ねしたいのですが」
「何だ?」
「今回のイベントの真意を」
「思い付きだ」
「……」
「というのは半分冗談だが、これで少しは真剣に考えることもあるだろう」
「何をです?」
「軍人である以上、恋人に『死ね』と命令することもある、ということをだ」
鈴は息を飲んだ。
「だから俺は、隊内での恋愛には反対なのだ。そうそう、人間関係掌握のためにも、付き合っている奴らは上官に報告するよう言っておけ。それにな」
その教官は声を落とした。
「ここだけの話、古今東西、教育隊で恋愛すると損だ。卒業すれば地方に飛ばされて遠距離になるわ、端から遊びのつもりの奴はいるわで」
そう言って、今回の言いだしっぺの教官、ヘンリー中佐はにやりと笑った。
サバイバルゲームの打ち上げは消灯間近まで続き、最後まで冷静に監視していたクレアとクレーメックの指示の下、粛々と片付けが行われたという。
泉 楽です。この度はシナリオ参加、ありがとうございました。
初めてだったので、かなり気合を入れて書いたつもりですが、いかがだったでしょうか。書いても書いても足りないような気がしています。
サバイバルゲームでありながら、戦争やバトルではなく人間関係を重視した内容のため、些か拍子抜けというプレイヤーさんもいるかもしれません。きちんと明記しなかったことを、お詫びいたします。
最初は普通にゲームして、勝った方に従うつもりだったのですが、思いっっ切り想定外のアクションもあり(こういうことがあるから、面白いんですよね)、この結果になりました。甘いと言えば甘い結果ですが、落ち着くところに落ち着いたとも言えるでしょう。
ヘンリー中佐はNPCですが、データはありません。また教導団でシナリオを書くことがあれば、出すかもしれません。
なお、武器は指定がない限り、共通の物を使ってもらいました。ちょっぴり趣味が入っています。
では機会がありましたら、次のシナリオでお会いしましょう。