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図書館“を”静かに

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図書館“を”静かに

リアクション

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「そう、わかったわ」
雅羅・サンダース三世が片野 ももかから伝達事項を聞くと、ももかはとてとてとした歩みでパートナー達の元に帰っていった。内容を頭の中で整理していると、甲斐 英虎(かい・ひでとら)が顔を覗き込みながら聞いてくる。
「雅羅ちゃん、一体何があったの?」
雅羅は悩み顔のまま、その質問に答える。
「整理、掃除とピクシー退治の他にも目標が出来たわ……ホント、やることは山ほどあるって感じね」
その口調はやれやれといった風。明日までに終わらせるには、課題は雅羅の言葉の如く山積みであった。
「やること、というと」
「もう一つ……というと、犯人が不特定多数の出入りやこの騒動に乗じて目的を達しようとする可能性もあるってことか?」
英虎の疑問には、伝達事項を聞きに来た源 鉄心(みなもと・てっしん)が代わって答える。
「そうよ」
「え、犯人がこの近くにいるってこと?」
いきなりな事柄に、英虎が首を捻った。
「でもそれだと、犯人がわざわざピクシーを使って探しものをしているのは」
「無論、只の見当違いの可能性もある。だが犯人の目的が明確になっていない以上、様々な可能性を考えないといけないからな。手を打ってなかったからまんまとやられました、じゃダメだ」
「うーん……何か手がかりが欲しい所だね」
そんな彼等に、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が胸を張って進言する。
「わたくしの勘では第一発見者の司書さんが怪しいですの、その魔本って今のところ司書さんしか見てないんでしょう?全くの妄言という可能性も……」
そこまで言った所で、横からそっとティー・ティー(てぃー・てぃー)がイコナに耳打ちする。
「イコナちゃんイコナちゃん、さっき司書さんと鉄心が話してる時に《嘘感知》をしたけど、反応なかったよ」
「えっ!?」
 見当違いの進言に、恥ずかしさで縮こまるイコナ。少し場が和んだ所へ何枚かの資料を持って三人、雅羅に声を掛けてくる。
「雅羅、待たせた」
「カシス、リアトリス、ユキノ……お疲れ様、どうだった?」
雅羅の労いにカシス・リリット(かしす・りりっと)リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)はそれぞれ答え、一人一人が報告していく。
「入口の観葉植物達や受付の花に聞いてみたんだけど、犯人らしい人は見てないって。ただ毎日人は出入りするから、一人一人を注視してた訳じゃないみたい……」
リアトリスは申し訳なさそうに答える。
「うーん、曖昧か。何らかの手段で図書館内にいるって可能性も残ってるな」
 残念そうな英虎に続いて、こちらもダメです、とユキノが付け加える。
「何人かで貸出帳簿や落し物リストを復元して調べたんですけど、有益な手がかりは……」
だが、とそれに続けたのはカシスだ。
「管理・検索用PCのデータチェックもやってみたんだが……ネット上の貸出管理データに外部からのクラック痕があった。まぁコピーされたりウィルスが放たれた形跡は無かったようだが……」
「進入されたのに、何もしなかったって事ですか?」
ティー・ティーの疑問には鉄心が答える。
「目的のブツがネット上に無かったか、図書館の見取り図の確認か……いずれにせよこの事件は何らかのブツの入手を目的で行われた犯行ということで確定だな。嫌がらせの類ではなさそうだ」
そこで手詰まりだけどな、と付け加えた。
「なら先ずは原因の魔本を見つけてみよう、そこから何らかの手がかりが手に入るかもしれないし」
少しでも先に進もう、というリアトリスの意見。それなら、と注目を集めたのはカシスだ。
「司書さんから情報をもらって、《光輝の書》をその本に近い装飾にしてみた。こんな本がこの図書館のどこかにあるはずだ」
そう言って《光輝の書》を取り出した。偽装された本は、真っ黒カバーにでかでかとオレンジの魔方陣、かなり厚めの不気味な本だ。
「へぇ、この表紙の魔方陣って何か意味があるの?」
ユキノの疑問に、英虎がそれを確認しながら《博識》を披露する。
「魔力増幅……かな?原本に後付でカバーをかけて、本の魔法力を少しでも増幅しているんだろうねー」
「じゃあ、魔本探しはお願いね。私は本の修復を手伝ってくる」
雅羅はその場を離れ、それ以外の者はまだ整理されていない本棚へ向かっていった。
(……さて)
そんな中、何を考えたか鉄心だけは、とある場所へと歩を進めていった。



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外のベンチ、頬杖をついたサングラスの男は窓越しに図書館内を見ている。咥えたタバコは根元まで灰になり、ポロリと地面に落ちた。
「揃っているな、優秀な人材が。だが呼ぶのは計算違いだった、他校生まで……」
先程から目に入るのは皆と話し合いながら陣頭指揮をとっている金髪の少女。情報はある、カラミティ・サンダース……あいつがリーダーか?
「もう一手必要だな、ここにて」
誰ともなく言い放つ次の一瞬、その場には誰もいなくなった。


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