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図書館“を”静かに

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図書館“を”静かに

リアクション

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魔本の真実が発覚してから、犯人捜索に力を入れる者たちが多くなった。魔本から《サイコメトリ》しようにも何故か反応が引っかからないが、何か憎悪めいたように思える程、決死の捜索が続いている。
そんな中、ピクシー解析を進めてきた者たちも一度意見を交換することになった。ユノ・フェティダやトゥトゥ・アンクアメン達が捕獲し、紐で縛り上げたピクシー達。
「ふーむ」
「ううむ」
そこへやってきた雅羅とリアトリス・ブルーウォーターが一団に声をかける。
「何か分かったの?」
佐野 和輝達の元を離れ、一人で研究していたルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)が答える。
「あんまり、ですぅ……」
「妙に狡賢いだけで言葉は通じないし、身振り手振りもダメなんだよねー」
「合体もしないのだ」
ピクシー捕獲の功労者、リリ・スノーウォーカーとユノ・フェティダもダメだという顔をしていた。
「頭は良いハズなんだけど……」
「脅せば一応意志は示すしな」
リアトリスの質問には、他の者よりも仏頂面の犬養 進一が返答する。
「多分頭がいい『から』であろうな、自分の命に関わる事以外はきっちり判断しているのだ」
そんな進一の考察に、リリ達も賛同していく。
「洗脳されてるかどうかも分からないですぅ〜」
「もう少し詳しく調べられる環境があればな……」
参考になりそうな書籍も、現在整理の真っ最中である。今は無理、と結論付けた皆と共に雅羅も落胆した。
「そう……じゃあこれ以上、犯人を追う材料が」
「おーい!」
そこへ唐突に駆けてきたのは猪川 勇平と魔導書『複韻魔書』。
「どうしたのだ?あわておって」
肩で息をしながら、勇平がトゥトゥの質問に答える。
「犯人の目的が分かった!」
「!?……まことか」
「焦るな馬鹿者、まだ予測段階じゃろうが」
複韻魔書が、裏拳のツッコミと共に勇平の言葉へ付け加える。
「それで、どんな意見なの?」
「ああ……」
 勇平は深呼吸し、少し落ち着くと一気に考えを吐いた。
「気付いたんだ、ピクシーってズル賢いだろ?何であんだけアタマが回るのに、こんな場当たり的なモノの探し方をしているんだ?ってさ」
 その発想に、そういえばと考えた皆は気付いていく。考えたことを即時言葉にしながら、進一がまとめを行ってみる。
「会話はできなくとも、ある程度の知能があるなら捜し物がある場所を絞った上で効率的にやるはずだな」
ということは、とユノが考察を推し進める。
「ピクシーへの指示は『何かを探せ』じゃ無いということになるのかな?」
「探しものじゃ無いってことは……図書館を荒らすのが目的ってこと?」
 リアトリスがさらにそれを発展させ。
「多分、俺たちの目を引けばいいんだよ。目の前の事件に躍起になってるうちに」
 締めたのは暫くこの考察を覗いていた杜守 三月だ。杜守 柚も後ろからついてくる。
「雅羅さん、この辺りの整理はだいたい終わりましたよ」
「ああ、ありがとう」
柚の報告に雅羅が答える。
「で、目を引いて……どうするんだ?」
 勇平が三月を急かす。これ以上の頭脳労働は丸投げしてるようだ。
「先ずは、指揮官を潰そうとした」
そう言って三月は、雅羅を掌で指し示した。
「私のこと?」
「今回の一件は雅羅さんが中心になって動いていましたから。この場の指揮官と捉えられてもおかしくはないかと」
「指揮官を叩く必要性は何じゃ?さっさと目的を達成したほうがいいじゃろうに」
複韻魔書は納得がいかないとばかりに疑問を投げかける。
「……成程。多分、我々の混乱誘発と追撃防止であろう」
その問いには、何かを掴んだリリが答えた。
「危険な潜入作戦であればあるほど、重要なのは退路の安全性なのだ。指揮官だと思わしき人物を行動不能にし、指示を止めて全体を動揺させれば……」
「自分の存在が発覚していても、こちらのミスで逃げおおせられる可能性が上がる、ということか」
進一も納得。そこへ雅羅が疑問を提示する。
「ミス……って、起こせるものなの?」
「ピクシーによる妨害や片付けでの疲労と指示の不備による混乱……人為的な条件と偶発的な条件を重ねれば、ミスというのはかなり高確率で起こるものだ。」
「存在がバレていなくとも、棚の転倒であれば雅羅さんの“カラミティ”扱いになってしまうでしょうしね」
「じゃあ、犯人の本当の目的って?ここまで大掛かりにするんだから相応のものだよね」
リアトリスが核心に迫る。
「ああ、それは……」
その時、唐突に鳴り響く甲高い音。色気のない乾いた単調な音は、数秒で図書館全体を駆け抜けた。
「笛?」
少しの沈黙。しばらくして、雅羅が口を開く。
「今の音―――」
「た、大変だぞ!」
案の定、と言うべきか、慌てて走ってきたのは白雪 椿とコープス・カリグラフィーの二人。
「椿、コープス!どうしたの」
雅羅の心配を他所に、息を切らしながらも、椿が叫んだ。
「残りのピクシー達が一斉に襲いかかってきたんです!」


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