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リアクション
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「よし、と」
杜守 柚(ともり・ゆず)が仕上げた本を、司書がささっとチェックする。破れたページがしっかりとテープで止められ、文字もはっきりと読めるようだ。
「綺麗に修繕出来てるわ、ありがとう」
「はい」
笑いながら本を受け取りろうとすると、雅羅がひょいと横取りしていった。
「へぇ、キッチリ出来てるわね」
キッチリと仕上げられたそれに感心する雅羅。柚はえへへと笑いながら答える。
「小さい頃から本は好きでしたし、一冊一冊、大切に直したいんです」
「矢張りと言うか、手伝いに来てる方々は本好きさんが多そうですわね」
そう言いながら台車で直った本を運んでいるのはセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)。女性ではあるが、力仕事を進んでこなしていた。
「貴女はどうなんですか?」
「新たな知識の増加はよい経験です」
そこへ先程から話を聞いていた南部 豊和(なんぶ・とよかず)が質問してくる。
「そういえば、雅羅は本って好きなの?」
言われて雅羅はうーん、と考えてみる。本が好きか、と聞かれて即答できる人は存外に少ないものだ。
「どちらかと言われれば、まぁ……好きかな?この災厄体質を変えたくて色んな本を読んだりしたし」
「それにしては治りませんね」
白星 切札(しらほし・きりふだ)の冷静なツッコミに、雅羅はそうなのよねと肩を落とす。
「内容は面白かったけど、効き目があった本は今のところゼロなのよ」
「……それでよく、本が嫌いにならないね」
談笑している皆をよそに、淡々と仕事をこなしていた禁書 『フォークナー文書』(きんしょ・ふぉーくなーぶんしょ)が、やはり山積みになった台車を押してやってきた。
「歴史書と語学系の分類分け、終わったわ。何処に置いておく?」
ぼーっとした雰囲気ながら、彼女はテキパキと仕事をこなしていた。
「珍しくやる気を出してますわね」
「本の事だから」
冷やかすようなセシルをよそに、やはり眠そうな、しかし何か意気込みを感じる雰囲気のフォークナー文書は踵を返し、別の分類の仕分け作業にとりかかる。
「うわー……すごい量ね」
「これは結構、大変だね」
雅羅と豊和は、フォークナー文書の置いていった分類分けされた本を整理しに入った。台車一台にこれでもかと積まれた本は、今にも倒れてきそうな危うさだ。
「わっ、とと」
「気をつけなよ。焦ると荷崩れが起きるかも」
杜守 三月(ともり・みつき)の注意の通り、高く積まれた本が崩れるようにぐらつく。豊和が慌てて山を押さえて事無きを得た――――ハズだったが、窓からの日差しで出来た影はまだ揺らいでいる……その揺らぎは、本の高さの比では無い。
「えっ」
揺らいでいたのは奥の影。気付き時既に遅し、雅羅と豊和目掛けて円柱状の本棚が倒れ込んで―――。
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