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リアクション
同刻 山岳地帯
「ああん、涼司くんが壊れかかってる……」
本部と回線を繋いだままのインカムから聞こえるやりとりに、火村 加夜は情けない声を上げた。
「……追い詰められちゃってますね」
同情に堪えないという顔で、エレノアもため息をつく。
三人は佳奈子の飛空挺に集まって、ドラゴンを監視しながら次の一手を考えていたのだが、あまり状況に余裕はないようだ。
「やっぱり、早く何とかしなくちゃ」
加夜は思い詰めたようにつぶやいて、立ち上がった。
「近づいて『子守歌』をためしてみます、私」
「そっか。眠いなら、もう少し眠っててもらうって訳ね」
佳奈子がそう言うと、エレノアも立ち上がる。
「それじゃあ、私がフォローします。佳奈子は上空で指示をお願い」
「了解。……ふたりとも、気をつけてね」
飛行翼を羽ばたかせて飛び出して行く二人を見送って、佳奈子が言った。
蛇行しながら低空を飛ぶドラゴンには、すぐに追いついた。
「……行きます」
短く言って、加夜は羽ばたきを止める。
木の葉落としの要領でスピードを上げ、一気にドラゴンの間近まで高度を下げた。
そしてその前方に回り込み、ふたたび翼を広げて滞空体勢に入る。
息を深く吸って、子守歌の歌唱に入った。
抑えめの柔らかな歌声は、しかし、すぐに中断を余儀なくされた。
「加夜さんっ、下っ!」
エレノアの鋭い声が飛び、加夜は反射的に身をかわす。
ドラゴンが振り上げた首が、音を立てて加夜のいた空間を薙いでいく。
加夜は小さく舌打ちして、一旦ドラゴンから距離を取った。
「……もう一度、お願いします。私が注意を引きます」
エレノアが言って、ドラゴンの前方に飛んだ。
「気をつけて!」
エレノアの機転を無駄にはできない。加夜は今度はドラゴンの視界を避けて、背後から近づく。
そして、もう一度「子守唄」の詠唱に入った。
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