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リアクション
「む、武藏どの!」
「ぬ……っ!その声は、小町殿!」
裏通り沿いにある公園で二人は合流する。
奪取の際に逸れてしまった場合、落ち合う場所を定めていたのが僥倖となった。
「かなり手練たちであったな……」
「はい……。苦戦を強いられてしまいました」
「やっと見つけた……」
「ここにいたのですね……」
「……!」
二人が再会を喜ぶ時間も与えず、新たな追っ手が現れる。
声の主は遠藤 聖夜(えんどう・のえる)と小野 小町(おのの・こまち)、盗賊とメイドのコンビである。
「あっちでは『ミュリエル〜!』とか叫んでる人が君らを探してるし、危うくボクも被害を受けそうになったよ……」
「まぁ、先に見つけられたから良しとしましょう」
「さて、小野小町さん……」
「なんじゃ、貴様ら……」
「まずはボクとお茶を――げぶっ!?」
「何であなたは私を口説いてるんですの!?」
「いや、まずは親しくならないと話も糞もないしさ……」
「糞なんて汚い言葉を使わないで下さい!……まったく」
「……っ」
小町は理解した。目の前にいるのは、自分と同じ記憶を受け継いだ、同姓同名の英霊であるということを。
「こんな老けて干涸びてしまった小野小町より、『ぴちぴち』の肌を持った私が居るじゃないですか」
「なっ……!?ひからび!?」
「だってそうでしょ?いくら男が恋しい年でも、こんな稚児のやるような事普通はしないですわ」
「そ、それは言い過ぎじゃ……?」
「いいえ、静。こういう事ははっきり言わないと私、気が済みませんので」
「まず化粧も古臭い。もっと薄めにしないとただのケバいオバさんですの。
しかも服装も和服って……。かなり着崩れてるじゃないですか。女性としての品位に欠けています」
「人の恋路を邪魔する前に、自分のなりを整えてみたらいかがかしら?」
「…………!!!!!」
同時に、かなり口の悪い『自分』であることも。
「こ、小町殿が、二人……!?」
「あっちゃー、先を越されちゃってるよー。どうするー?」
「……」
「つ、次から次へと追人か………!――!?」
たじろいでいた武藏の方へやってきたのは、女性2人組の滝沢 静(たきざわ・しずか)と宮本 伊織(みやもと・いおり)。両者、サムライであり、ナイトである武闘派な人間だ。
「……い、いおり…………か?」
「……」
しかし、今回は戦う為に訪れたわけではない。
宮本 伊織。その存在は、武藏の精神状態を大きく揺さぶった。
「……」
「い、伊織だろう……?何でこんな所に……」
「……」
「実質赤の他人であるボクが仲介役って言うのも変だけど、彼女、相当怒ってるみたいだよ〜?」
「……!」
「ホワイトデーのお返しを奪って回る不届き者が仮にも義父だなんて、恥ずかしいってさ」
「……その通りですよ。っていうか、怒らない人間が何処にいますか」
「そ、それはだな、伊織。我々がやっているのにも、恋なんてものに現を抜かす若者が今世に増えてしまっていると言う理由が……」
「理由になってません!!第一、そんな事をしたところで人の気持ちはそう簡単に変わるものではないのです!」
「うぐ……」
「あはは、娘からお説教を受ける親の図〜!」
黒い大きな瞳に涙を浮かべる程の笑いを浮かべる静。
説教にも近しい諌め方をする伊織。
間に挟まれる武藏。
少しばかり異質な光景がその場にはあった。
「まぁまぁ、お二人とも。そうやって武蔵殿を攻めなさんな」
「あぁ、わしも若い頃を思い出すのぉ……」
アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)と司馬懿 仲達(しばい・ちゅうたつ)もまた、どこからともなく現れ、話に加わる。
「主ら、なにも――?!」
「まぁまぁ、武蔵殿もそう腰を上げずに……」
「まず、いいかい武藏とやら。君たちがやっていることは自分らの評判を更に下げている事に気付いているかい?」
「ぬっ!?」
「今では、武勇伝を語り継がれているものの……。実質、君は戦いの時に逃げ帰り、子分たちを連れよって反撃する等の悪い噂がある事は、知っているのか?」
「なっ!?拙者はそんな事は全くもって!」
「本当かな?今の世に出てこんなダサいことをやっていても、何の説得力もないね」
「き、貴様……ッ!」
「そんなことより、武藏とやら、貴公、女日照りならばわしがいい所を紹介するぞ」
「っ!?拙者、女性に飢えを感じて等……!」
「まぁまぁまぁまぁ!!そんな強がり言っても無駄じゃ。女子たちを悲しませる様な事をやってしまうのも、そういう勉学が足りてないからじゃろうて!」
「……ぬうううう!!」
「いいから、下らない事はやめて、わしと共にキャバレーへ行こうぞ!いい所だぞ!気に入らんなら梯子しても構わぬ!わははは――」
「いい加減にしろ!!!貴様らぁ!!!!!!!!!!!」
小町と武蔵の心からの怒り声は、天に木霊した。
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