空京

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戦乱の絆 第二部 第二回

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戦乱の絆 第二部 第二回
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■キマク防衛戦と蒼十字2

そのころ、王 大鋸(わん・だーじゅ)の蒼十字船は、
怪我人が次々と運ばれてきていた。
キマクの町の避難がほぼ終わったとはいえ、
取り残された人はいたし、特殊部隊の攻撃を受けた人たちもいた。
それに、戦場では、シャンバラ側、エリュシオン側ともに、当然のことながら多くの負傷者が発生した。
「チッ、派手にドンパチやりやがってよォ……」
大鋸が、顔をしかめる。

「あたしの目にとまったのが運の尽きだよ。徹底的に治癒します!」
三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)は、
従龍騎士に笑顔で近づいて言う。
プリーストとしての能力を生かして、救助活動にあたること。そのことで。
真言の役に立ててるはず……。
大丈夫、きっと一緒にいるより、こうした方が、心強いよね?)
重傷者は、のぞみが応急処置をした後に、ミカ・ヴォルテール(みか・う゛ぉるてーる)
ワイルドペガサスに乗せ、蒼十字船に運ぶ。
「よーしよし、空気読んでくれよ」
ミカは、気性の荒いワイルドペガサスが、
この状況に協力してくれているように思う。
「やっぱ、誇り高い生き物だからかな」

鷹野 栗(たかの・まろん)も、ワイバーンのシェリダンで、
怪我人の搬送を行っていた。
伊礼 悠(いらい・ゆう)は、今まで何度もやってきたように、
小型飛空艇に乗せての搬送を行い、羽入 綾香(はにゅう・あやか)も同じことをする。
(イコンやワイバーンは誰かを傷つけるだけでなく、誰かを護ることもできる。
私はそう思っています)
イルミンスール魔法学校生物部部長であり、
獣たちを友としている栗にとって、
エリュシオンの龍騎士団のドラゴンやワイバーンと戦うのは辛いことだった。
だからこそ、ワイバーンで一人でも多くの人を救いたいと考えていた。
「速さではワイバーンに劣るが、その分安定はしておるかの?」
綾香は、小型飛空艇に乗せた怪我人に毛布をかけながら言う。
雨で身体を冷やさないための配慮だった。
悠も、怪我人が雨に濡れないように毛布をかぶせながら言う。
「大丈夫ですよ。蒼十字船までつけば、温かいし、安全です」
ディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)は、護衛のために同行し、
禁猟区で警戒を行う。
「悠。少し休んだ方がいい。
身体が冷え切ってしまっている」
ディートハルトが、悠の肩に手を置いて言う。
「ディートさん、大丈夫です。
まだ、救わなきゃいけない人はたくさんいるんですから」
「うん、でも、無理しちゃダメだよ」
のぞみは、同じイルミンスールの後輩である、悠に優しく言う。

一行が避難所につくと、
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)
エイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)が、怪我人の対応に追われていた。
「特に緊急を要する人から見ますが、
怪我をしている人は誰でも来てください」
涼介は、重傷者から順番に、治療のための技術を全力投入する。
医者の卵である涼介は、これまで何回か、同様の活動を行ってきている。
その分、対応にも慣れてきており、落ち着いて仕事をすることができる。

『エイボンの書』は、みらくるレシピで温かいスープをふるまい、
避難民を並ばせる。
「皆さんこれを食べて温まってくださいね」
こうして、分担をしているおかげで、スムーズに治療をすることができていた。

神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)山南 桂(やまなみ・けい)も、
おにぎりや、温かいスープの炊き出しを行い、
身体が濡れた人にはタオルや毛布を配る。
「この状況ですと、体冷えますから体力つけませんとね」
「主殿、休んで下さい。無理しすぎです」
桂は、自分のことはかえりみない翡翠に言う。
「そうしないと、これ飲ませますよ」
手にした温かいココアを示して、笑顔を浮かべる桂に、翡翠は苦笑する。
「桂、苦手な物、勧めますか?」
翡翠は甘いものが苦手である。
疲れた体を癒すためにたっぷり砂糖の入ったココアなど、とても飲めたものではない。
「無理やり飲まされるのがいやだったら、ちょっとは休んでくださいね。
皆さんもですよ」
桂は、悠や栗、のぞみ達、負傷者を運んできた者達にもココアを配る。

蒼十字の一行が負傷者を治療し続けたため、
ヴァラヌスのパイロットや随伴の従龍騎士も多く助かることになり、
大いに感謝されたのだった。