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リアクション
現在パビリオンにおける1シーン
透玻・クリステーゼ(とうは・くりすてーぜ)は、万博の手伝いができなかったため、少々罪悪感を感じていた。
「空京万博、手伝うのをすっかり忘れていたな…ちょっと見に行く位ならありだろうか……」
璃央・スカイフェザー(りおう・すかいふぇざー)がそっと言う。
「透玻様、ちょっと遊びに行くだけでも、力になれると思いますよ。
皆様、成果を見ていただくために努力しておられるんですもの」
「うむ……そうか……そうだな」
遊びに行くことも貢献であると思い直し、璃央を連れて、せめてひとつでも多くの展示を見て回ろうとやってきたのであった。さまざまな展示は、どれも素晴らしく見えた。人出もかなりのものだ。
「すごい……壮観だ……皆、頑張っていたのだな。
私も、ちょっと手伝えばよかっただろうか……」
なんとなく物思いにふけりながら、展示の数々を見て回る。しばらく歩き回ると、人波と展示に圧倒されたこともあって、軽い疲労感を感じてきた。
「結構人がいますね……透玻様、大丈夫ですか? 少しそこに座って休みませんか。
何か、飲み物買ってきましょう」
「ああ…茶を買ってきてくれ。少し休む」
代金を手渡し、やはり体力をつけるべきか、と思いつつベンチに腰掛ける。何事もなく万博が成功裏に終わるよう……そんな祈りの気持ちを込めて高い蒼い空を見上げる透玻であった。
「おおおおおお! 素晴らしいのう!!」
さまざまな展示を見てはしゃぎまわる飛良坂 夜猫(ひらさか・よるねこ)のお供でやってきた弥涼 総司(いすず・そうじ)はぶつぶつとぼやいていた。
「万博ってよぉ〜、あんま興味ないんだけどなぁ〜
まぁ師匠がどうしても来たいっつーから仕方な〜く付き合って来たけどよぉ……」
ふと目を落としてパンフレットに目をやると、現在パピリオンのコスチュームのセクシーさが目を引いた。ここれはぜひ拝まなければ。機械系のパビリオンに興味津々で見て回っている夜猫のあとを追っていくと、まさに見たいと思っていたコスチュームに身を包んだ雅羅を発見した。
「へぇ、コンパニオンやってたんだな」
「そうよ。みんなが作ったりした展示品を紹介したり、案内したりしているんだ」
「オレもなんかやりたくなってきたな……。
そうだっ、絵でも描こう、ヌードモデルやってくれないか?」
雅羅は目をむいた。
「じょっ、冗談じゃないよっ!」
「お? なになに?? ヌードモデル??」
夏野 日景(なつの・ひかげ)と歩いていた深沢 ごまりん(ふかざわ・ごまりん)が敏感に反応する。見た目はゴマフアザラシの可愛い外見でありながら、中身はずぼらでものぐさ。万博に来る動機はというと、
「そりゃあもうオネエちゃんを見るために決まってんだろ!」
である。問題を起こさせないためには、どうあっても同行し、絶対に目を離してはいけないのだ。日景は長い一日を覚悟して、ごまりんを連れてやってきたのであるが、しょっぱなからこれである。
「見本のオネーちゃんほど透けてねーぞこれー」
雅羅を見てぶつぶつ言うごまりん。
「恥ずかしいからやめろよな!」
雅羅にお構い無しに、描画のフラワシを使って絵を描きはじめる総司。パートナーは動かない、見るものはない。夜猫は退屈してきた。
「つまらん……つまらんぞ」
ちょっかいを出して邪魔しようとするが、総司は完全スルーである。夜猫は万博コスチュームをどこからか借りてきてうろうろし始めた。総司はノリノリで想像で勝手に色っぽいポーズをさせたり、露出度も上げて雅羅を描いていく。雅羅が覗き込んで叫ぶ。
「ちょっ! やめてよっ!! 何よこれ!!!!」
「なにを言うんだ、これも立派な芸術。アートだよアート」
ごまりんも覗き込んで口ぞえする。
「うーん、立派なアートだとも。 実にいい。うひひ」
いい加減頭にきた雅羅は、総司から絵を取り上げ、びんたをひとつお見舞いして立ち去った。
「うーん、残念。 ……んじゃ次いこぜー」
総司はまったく懲りていない。夜猫を連れてまたふらふらと見学を始める。
「お前も行くぞ」
「きゅっきゅ〜」
都合が悪くなったり、いい子モードで見せたいときだけ発動する鳴き声による抗議もものともせず、日景は無理やりごまりんを掴んで、KUKYO ROCK FESに向かった。目的のひとつ、たいむちゃんのぬいぐるみを買い、深い深いため息をつく。
「はぁあ……。
この子みたいに可愛くてまともで善良でおとなしくて自立したゆる族だったらなぁ」
さまざまな人々、さまざまな思いを抱いて、万博会場は賑わっている。