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リアクション
4
連絡消失地点で分かれたもう一方の救助チームである、
国頭 武尊(くにがみ・たける)とシーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)、
神代 正義(かみしろ・まさよし)と大神 愛(おおかみ・あい)、
羽瀬川 セト(はせがわ・せと)とエレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)、
島村 幸(しまむら・さち)とガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)、
イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)とアルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)、
緋桜 ケイ(ひおう・けい)と悠久ノ カナタ(とわの・かなた)、
ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)と雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)、
天 黒龍(てぃえん・へいろん)、
の十五人からなる第二班は、調査団が利用していたというベースキャンプへと辿り着いた。
「なんじゃ。ベースキャンプとやらは、結構しょぼいモンなんじゃのう」
開口一番、エレミアは残念そうに肩を落とした。
隣で見ていたセトが尋ねる。
「どんなものを想像してたんですか?」
「名前の響きから、もっとこう、難攻不落の要塞的なものを」
「あははは。なるほど。今度、そういうベースキャンプを探しに行きましょう」
「うむ」
ベースキャンプはエミリアには不評だったが、二〇人の調査団が利用するには十分な広さを持ったものだった。
プレハブや、小さいながらも二階建てのユニットハウス、仮設テントなどで構成されている。
家屋の突起に天幕を引っかけて作った機材置き場を見て、セトは笑った。
「なんだかフリーマーケットみたいですね」
「いつぞや見た、あの市場みたいなやつか。ふむ、確かにのう」
「脳天気な事いってる場合じゃないだろ。早く探すぞ」
武尊が二人を促した。
「施設を調べるヤツと、周辺を捜索するものとに分かれるか」
「おー」
「んじゃ、俺とシーリルはあっちを調べてくる」
武尊は北東の道路を指さした。
「解りました。じゃあ俺とエレミアは……」
「施設! 施設じゃ!」
エレミアはセトに強く主張した。どうやらユニットハウスの中を見てみたいらしい。
「じゃあ、施設に行きます」
「おう」
「私たちも施設にします」
「一通り回ったら、周囲を探してみますよ」
そう言ったのは幸とガートナだ。
「私は北西に向かおう」
黒龍が進み出た。
「ならば、オレたちは南西で」
「イエス・マイロード」
と、イーオンとアルゲオのペア。
「北東だ。こいつも連れて行く」
ケイはソアを目配せした。
「は、はいっ」
それぞれのペアであるカナタ、ベアも同行する。
「北東が大人気だな。まぁ当然か」
「本命だからな!」
北東の道は、聖堂へと至る中央広場とキャンプをつなぐ最短コースだ。要救助者がいる可能性も高かろう。
「じゃあ、俺たちは……」
最後に決めたのは、赤いマフラーをたなびかせる正義のヒーロー、パラミタ刑事シャンバランと太陽戦士ラブリーアイちゃんだった。
説明しよう! 彼らは神代正義と大神愛がお面を被って変身した姿である! 本人たちのテンションが上がったぶん、そのパワーは変身前に比べ1,01倍にもなるのだ!
「俺たちは南東にするぜッ!」
いま来た道だった。
「それじゃあ後でな」
皆、決めた場所へと向い出す。
「とりあえず、道中でやってたみたいに声を出しながら探すか」
「そうね」
武尊は拡声器のスイッチを入れて叫んだ。
「誰か居るかー! 助けに来たぞー!」
「助けてくれー!」
「……ん、んん?」
あっという間に発見できた。
「はやっ!」
エレミアが驚いた。
武尊は続けて拡声器で呼びかけた。シーリルも肉声でそれに続いた。
「おーい! どこに居んだー!」
「どこですかー!」
それに応えて、今度は複数人の声が返ってきた。
「こ、ここだっ!」「一階だ!」「やった! 助けが来た!」
どうやらユニットハウスの一階のようだ。
一同は慌てて駆け寄り、端から順番に開けていった。
二つ目の扉を開けた部屋の中に、五人の男が居た。
彼らは、研究者にヒラニプラで雇われた現地人ガイドと労働者だった。
現在、部屋の中にはその五人に加え、武尊ペア、ケイ、ソアが入っていた。それで満員、残りのメンバーはキャンプ周辺の捜索に出ていた。
「助かった、助かった……」「やっと帰れるんだ!」「う、うううう……!」
男たちは、救助隊が来た事を口々に喜び、感極まって泣き出していた。
極度のストレスにより情緒不安定になっているようだが、ひどい憔悴も大きな怪我も見られず、火急の問題はなさそうだった。
「大丈夫そうだな」
彼らの様子を見て、武尊は鷹揚に頷いた。
そして、
「感動に水を差すようで悪ィんだが」
と前置いて尋ねる。
「この辺りに、まだ他に人はいるのか?」
「わ、わからない……っ。外には出られなかったからっ」
男の一人が嗚咽を上げながら答えた。
「出られない?」
「こっ、ここは結界があるからいいけど、外に出たらっ、また水晶が……!」
「水晶が襲ってきた、ってヤツか」
「それって、一体どういう事なの?」
シーリルの問いに男たちの感情が爆発した。
「そんなのオラたちにだってわかんねぇよぉおお!」
「何が何だかわかんないうちに、みんな、こっ、殺されて……っ! 逃げた後はもう、ずっとここに居たから……」
「な、なあぁ、早くヒラニプラに帰してくれよぉっ!」
「駄目だな。まだ捜索が終わってねぇ」
一蹴だった。
男たちから必死の懇願が上がる。
「そんな!」「勘弁してくれよォ! 頼むよォ!」
「もう少しの辛抱だから我慢して下さい」
胸を痛めながら、シーリルは彼らをなだめた。
往路が何にも襲われなかったからと言って、復路もそうだとは言い切れない。五人を街の外へ出すにはそれなりの時間と人員が必要だったし、今、それを割くだけの余裕はなかった。
「ううっ、う……っ……」
「早く帰る為にも話せ。何が起こった」
彼らの感情が少し落ち着いた頃合いを見計らって切り出した。
「オ、オイラたちなんて、ほとんど何も……」
「構わねぇよ。何でもいい」
男たちは、おずおずと顔を見合わせ、やがて一人が話し始めた。
「オレらはよく解らンけれど、せ、先生たちはずっと聖堂を調査してて……。でも聖堂ってヤツの入り口は、デッケェ水晶で塞がれてるンよ。先生たちは、それを壊そうって」
「で、聖堂に入った?」
「たぶん……。オレたちはそン時、別の仕事をやってたからわかんねぇ。そしたら急に水晶に襲われて……。オレらはこの近くで仕事してたから、すぐに駆け込めたけど……他の、奴らは……」
「聖堂か」
ずっと黙って話を聞いていたケイが口を開いた。
「行くぞ。ソア」
ソアを促して、扉へ向かう。
「おい、どうすんだ」
「聖堂に行く。どうやら原因はそこにあるみたいだからな」
「ふぅん。ま、好きにしな」
「言われなくてもそうするさ。ソア」
「はいっ」
そうしてケイたちは出て行った。
そして、それと入れ違いに、
「シーリルさん! シーリルさん!」
幸が駆け込んできた。
「は、はい? 何でしょう?」
「もう一人見つけました。怪我をしてて、意識を失っています。今、ガートナが治療しているのですけれど、手伝って欲しくて」
「わかりました。すぐに行きます」
シーリルは急ぎ立ち上がった。
「今、二階の簡易ベッドに運んでます」
「はい!」
騒がしく外階段を行き来する音が聞こえ、天井の上からバタバタと足音。
やがて再び静寂が訪れた。武尊は男たちへ向き直り、口を開いた。
「あー。……じゃあ、続きを聞かせてくれ」
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