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リリーハウスにいらっしゃい☆

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 5杯ほど飲んだところで、オグシェリはテーブルに突っ伏した。アーデルハイトにはまだ余裕があるようだ。勝敗は決した。

 べろべろになりながら、しかしオグシェリは不敵にも言い放った。

「はにほ! れも、れんじはしょっとひはおはねをほってきへないんらかられ!」
(口語訳:なによ! でも、千治はちょっとしかお金をもってきてないんだからね!)

 しまった、と思うアーデルハイトであったがすでに時遅し。



アーデルハイトの売り上げ:−2700G(計2000G)


 気の大きくなっているアーデルハイトは続けて指名を受けることに。

 高月 芳樹(たかつき・よしき)はパートナーであるアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)と連れだってリリーハウスを訪れ、アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)を指名した。

「私を指名するとは、女の魅力がわかっておるやつじゃな。いい女がわかる男をパートナーにしたのは幸福じゃぞ?」
などと二人に話しかけるが、本心からか営業用トークなのかはわからない。

 芳樹は自分とアメリアのぶんはヒラニプラ茶を頼み、アーデルハイトには黄金の蜂蜜酒を勧める。
 アーデルハイトを勝たせるためには、さらに値の張る酒を飲んでもらうしかないのだ。

 アーデルハイトはすでに酔いが回りつつあったのだが、勧められるままに蜂蜜酒を飲む。外見に反してなかなかの酒豪ぶりだ。しかし徐々に早口になり、声を立てて笑うようになった。

「見たところ姉さん女房のようじゃの? 夫婦仲はむつまじいかえ? どこまで関係は進んでおるのじゃ?」
などと絡んでくる。
「僕とアメリアはそういう関係じゃない」
と言っても、
「まあ若い人はそういう話は恥ずかしいんじゃろうな、いや悪かったのう」
と言って笑っている。

 さすがにこれ以上飲ませるとまずい、という気がしたので、芳樹は精算を済ませて帰ることにした。


アーデルハイトの売り上げ:+4200G(計6200G)


第23章 “好き”の反対は“嫌い”じゃなくて“無関心”

 御神楽 環菜(みかぐら・かんな)を指名したその客は、異様な人物であった。
 その人物は蒼空学園制服を着込んでいるものの、明らかにそれとは違う気配を発している。
 環菜には果実ジュースを、自分には日本酒を頼み、ごくごくと飲み干しながら、大声でエリザベートの悪口を言い始めた。

「……7歳の子供が……やる学校なんて……つぶれる……よね!
 ……パートナーもロリババアだし!」

 たしかにそうだと思ってしまう環菜だが、何かが引っかかる。環菜は厨房に行くといってその場を離れた。

 一方その頃、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)にも奇妙な指名が入っていた。イルミンスールの制服を着ていて、大声で
「あのデコ校長ぶっちゃけズラじゃん? おでこの位置もうゲキヤバじゃん!」
などと環菜を挑発するような発言をしている。

「ルミーナ、どう思う?」
 環菜に聞かれたルミーナは、携帯電話を操作して答えた。
「我が校のデータベースにはありませんわ。他校の生徒と思われます」
 蒼空学園に入学するには、厳しい試験をパスするか、環菜のお眼鏡にかなうかしなければならない。一般学生相手ならともかく、環菜本人をだますのは容易ではないのだ。

 何者かの罠を見破った環菜だが、問題はエリザベートのほうだ。あの偽蒼空生の言葉を聞いて、エリザベートがどう思うかはわからない。
 迷った末、環菜は敢えて罠に踏み込むことにした。

 エリザベートのテーブルまで行く環菜。
「あなたのところの学生は随分と失礼なのね」
「そっちこそぉ、ひどいことばかり言っているのですぅ〜」
 二人が口喧嘩を始めると、偽イルミン生はにやっとして、こっそりその場を立ち去った。

 偽イルミン生と偽蒼空生が外に出るのを確認すると、環菜とエリザベートは喧嘩をやめた。
「環菜がルミーナに相談しているのが見えたですぅ」
 エリザベートは、環菜の様子がおかしいことに気づいていたのだ。
「あのふたりはルミーナが追っているわ。後で何かわかるでしょう」



 後日の調べでわかったことだが、偽蒼空生はサイコロ ヘッド(さいころ・へっど)、偽イルミン生はクラウン ファストナハト(くらうん・ふぁすとなはと)であった。どうも本名ではないらしい。両者ともナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)のパートナー、というか駒であり、こうして環菜とエリザベートの対立を煽っていたのだった。


第24章 ゆるゆるツイスター

 褐色の肌が見栄えするように白のパーティドレスでお嬢様風に魅せながらも、胸元は隠さず大胆に。それがカリン・シェフィールド(かりん・しぇふぃーるど)のその日の装いであった。
 パラ実のレベルの高さを他校の連中に見せてやろうという意気込みである。
 事前の予約どおり、日下部 社(くさかべ・やしろ)からの指名も入った。

 ただひとつ予定外だったのは、社のパートナーであるゆる族、望月 寺美(もちづき・てらみ)も付いてきたことである……

 社はいきなりテンションの下がった状態で、果実ジュースを3人ぶん注文する。
 カリンとしては寺美もお客さまなので、そうそう無下には扱えない。むしろ考え方によっては獲物が増えたとも言える。
 下心のある男と、勝負に燃える女とでは、これほどまでに気の持ちようが違うのであった。

 社を中心として、左右にカリンと寺美が座っている。両手に花、と言えないこともない。カリンは寄り添いながらお酌をし、飲み物を消費させようとする。社がゆるんだ表情でジュースを飲もうとしたそのとき、
「いただきま〜す、ですぅ〜☆」
寺美がコップを強奪、飲み干してしまった。

 これで社の闘志が燃え上がった。かくなる上はなんとしてでも楽しんでやるという覚悟が決まったのである。

 カリンは寺美が飲み干してしまったぶん追加のオーダーをねだりつつ、ツイスターゲームをしようと持ちかける。即座にドリンクを注文しながらゲームをしようとはしゃぐ社。
 寺美はゲームに参加しようとはせず、自分がルーレットを回す係になると言い出した。

 赤。緑。赤。黄。青。緑…………

 気がつくと、カリンと社はマットの左右に分かれた状態になっていた。ふたりの体が交差するとか、バランスを崩しそうになるとかいった“難しい”体勢になる気配が一向にない。寺美がルーレットを操作して、ふたりの体が接触しないようにしていたのだ。

 こうなると社もムキになって、わざと無茶な体勢を取ってカリンの動きを阻害しようとする。カリンもそれに合わせて変な姿勢を取る。
 プロレスラーを目指すカリンにとっては訓練の一部のようなものだが、ウィザードの社にとってはムリがあった。しばらくすると、社は体勢を維持できずに倒れてしまう。カリンはうまいことその下に体を動かして、社がマットに激突するのを防ぐ。

「大丈夫かい?」
「おかげさんで助かったわ〜」
 起き上がった社が寺美を見ると、妙に悔しそうであった。



カリンの売り上げ:1100G