シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

特別授業「トランプ兵を捕まえろ!」(第2回/全2回)

リアクション公開中!

特別授業「トランプ兵を捕まえろ!」(第2回/全2回)

リアクション

 南門における戦陣は正に混戦となっていた。その中で、戦況を見つめるナイトのアラン・ブラック(あらん・ぶらっく)は目を大きく見開いた。
 ナイトのヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)ムーンのキング(13)が放つアサルトカービンの銃弾をナイトシールドで受け防いだ。絵柄兵が手を休めた瞬間にヴァーナーは前進してはランスを構える。
 距離を詰めたヴァーナーの盾からセイバーの樹月 刀真(きづき・とうま)が飛び出して、斬り狙うは絵柄兵の手。爆炎波を放つも、間一髪に絵柄兵は避けた。そこへ刀真のパートナー、プリーストの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)はホーリーメイスで逆の手を狙い突く。ムーン兵は2丁を携えている、故に月夜に銃口が向けられる事になるのだが、二人の狙いは絵柄兵の体を開かせる事、そこへヴァーナーが突進からの突きを放った。
 絵柄兵はすぐにアサルトカービンを構えたが、3人もすぐに散り離れた。
 2度目のヒットアンドアウェイが成功した時、戦陣一帯にサンダーブラスト、そして火術が連続で放たれた。この攻撃を3人と絵柄兵は避けるに成功したが、辺り一面の視界が遮られた、アシッドミストも唱えられたようだ。
 刀真の頭にハンドガンが突きつけられた、その瞬間、ロングスピアがハンドガンを突き弾いた。
 ロングスピアはアラン・ブラック(あらん・ぶらっく)、ハンドガンは桐生 円(きりゅう・まどか)である。
「どこかで見た顔だね」
「アナタの好きにはさせませんよ」
 円のパートナーで英霊の、ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)にはアランのパートナーでこちらも英霊のアーサー ペンドラゴン(あーさー・ぺんどらごん)が立ち塞がった。
「貴公の好きにはさせぬ」
「二人で一緒にあーそーぼー」
 絵柄兵、数字兵、そこへ襲撃者までも現れた。戦う理由はそれぞれに、それでも戦いは確実に加速していくのだった。


 南門での戦い、チーム「王族を狩る者」の前衛が戦うはハートのキング(13)、そこへ突然のアシッドミストが辺りを包み、視界を遮られた。
「なぜ急に……、しかしこれは好機だ」
 ナイトの姫神 司(ひめがみ・つかさ)はパートナーのプリースト、グレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)のヒールを受けながらに思考を巡らせた。好機である、優位に進めながらも決め手に欠けていた、決めるなら、ここしかない。
 グレッグは心配そうな色を目に浮かべていた。
「これは、大丈夫なのですか?」
「心配ない、ここで決める」
 パートナーのプリースト、アーヴィン・マーセラス(あーう゛ぃん・まーせらす)は禁猟区の反応を見て、声を荒げた。
「司っ」
 司が振り向いた時、霧の中から絵柄兵が現れた。瞬間的にランスでの一撃を入れた。
「ヒューバート!」
 パートナーのローグ、ヒューバート・マーセラス(ひゅーばーと・まーせらす)はゼロ距離からハンドガンで絵柄兵へ撃ち放つ、と同時に司とヒューバートは飛び離れた。
「へっ、良いお膳立てだ」
 とどめの一撃はソルジャーのラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)、アーミーショットガンの連射で勝負あり。絵柄兵はトランプへと戻り始めた。
 それを見届けて、司は振り向き戦況を見つめる。
 悪い視界の中、ムーンの4と戦っているのはソルジャーの大草 義純(おおくさ・よしずみ)とパートナーのナイト、ジェニファー・グリーン(じぇにふぁー・ぐりーん)だった。
 慌てた構えの数字兵を霧の中からジェニファーの一閃、そして義純のハンドガンでこちらも勝負あり。
「途端に動きが悪くなったね」
「あぁ、まぁ、この霧なら仕方がないのでは?それよりも今の内に」
 義純の視線が司にぶつかった。その瞬間に義純も司も駆け出していた。チーム「王族を狩る者」はポールを目指して駆け出した。


 南門、上空は空中戦。地上を霧が包んだことで、箒に跨る水橋 エリス(みずばし・えりす)と小型飛空艇に乗りし荒巻 さけ(あらまき・さけ)とパートナーの日野 晶(ひの・あきら)は高度を上げた。遅れてサニーのジャック(11)も高度を上げて飛び来たが、これほど動きを限定できたのは今の中で初めてだった。故に、エリス達はここで一気に仕掛けた。
 迎え撃つようにエリスは雷術を絵柄兵に放った。同時に地上からの火術が絵柄兵を襲った。放ったのはウィザードの駿河 北斗(するが・ほくと)、彼の放った火術にパートナーの魔女、クリムリッテ・フォン・ミストリカ(くりむりって・ふぉんみすとりか)が火術を重ねた事で、より大きな火術となっていた。
 上下からの攻撃に、絵柄兵の体は完全に空中で止められていた。そこへ、小型飛空艇の加速を利用した、さけと晶のクロス轟雷閃が絵柄兵を十字に裂いた。
 チェーンソーバイクがムーンの5を跳ね裂いた。運転するはソルジャーの国頭 武尊(くにがみ・たける)、舞いるトランプをキャッチしたのはタンデムシートからパートナーのシーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)である。
「よぅし悪くねぇ。おっ、あっちも終わったみたいだな」
 武尊の声にシーリルも見上げみた。いま正に絵柄兵の箒が落ち始めた所であった。
「よし、北斗たちを拾って、門を通過だ」
「はいっ」
 空中戦をクリアした。見事な連携で、集中攻撃で、地上ではポイントも加算している。それでもポールを通過するまでは、襲撃を受ける可能性だってあるのだ。
 一様に緊張感を緩めなかった辺りも、授業の意図を理解した、良き判断であった。
 チーム「クイーン・オブ・カード」サニーのジャック(11)を撃破したことで、南門の上空は守りが居なくなった訳で。
「行くよ! アクア、ガッシュ」
 蒼空学園のセイバー、葉月 ショウ(はづき・しょう)の号令、二機の小型飛空艇が空を行く。
 ショウが界下を見下ろした。霧はだいぶ晴れてきたが、今も残っている。
「お先に」
 そう呟いて、ショウ達はポールを楽々に通過した。


 南門を護る絵柄兵は全て討伐されても、数字兵は残っている。が、突破するだけであれば、そう、難しい事は何ひとつない。
 白馬を走らせるバトラーの清泉 北都(いずみ・ほくと)とパートナーのプリースト、クナイ・アヤシ(くない・あやし)と、ウィザードのソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)は、
北都の手作り目潰しを数字兵にぶつけて道を開けさせていた。
「バトラーってか、盗賊みたいな奴だぜ全く」
 ソーマが呟いている間に3人はポールを通過した。戦略を立てて実行する、その案が優れているほどに成功率は上がるわけだが。何事も、余計な物を省いた簡略化された物ほどに優れているようだった。
 もう一度。南門を護る絵柄兵は全て討伐されているのだ、それなのにまだ。
 アラン・ブラック(あらん・ぶらっく)のロングスピアを避け抜いて、向かい消えては跳び現れる、桐生 円(きりゅう・まどか)はハンドガンをアランの額に向けた時、アランのスピアも円の喉元に突きつけられていた。
「そう何度もやられませんよ」
「はぁ、また邪魔者?」
「えっ?」
 意識を円以外に解いた時、円にはカライラ・ルグリア(からいら・るぐりあ)のアサルトカービンが、アランにはカライラのパートナー、ティファナ・シュヴァルツ(てぃふぁな・しゅう゛ぁるつ)のカルスノウトが突きつけられていた。
「僕は静かにポールを通過したいんだ、戦う意味、もう無いだろ?」
 カライラの言葉と視線にアランと円は武器を下ろした。
「数字兵を倒したいなら止めないけど、離れてやれよな」
 ティファナが笑みながらカライラに続いた。
 アランと円は最後まで笑み合う事なく、互い違えた。