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リアクション
第三章 残りの時間に想いを込めて
東の門の関所に辿りつく、メイドのナナ・ノルデン(なな・のるでん)はパートナーのズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)と共にスペードの3を破棄して門を通過した。
「はぁ、折角ですから、(1)か(2)の数字兵さんを手に入れたかったですわ」
「でも、前半に比べてトランプ兵が少なかった気がするんだよね、だから」
「その通りだ全く、どうなってんだ」
ズィーベンの言葉に乗せてきたのはチーム「数奇兵」のプリースト、和原 樹(なぎはら・いつき)である。
「あれから探したのに、サニーの2にしか会えなかったぞ」
チーム「数奇兵」の面々は次々にバイクと箒を降りて歩み寄ってきた。
迎えるようにノーム教諭は笑み応えた。
「この辺りを探したって居るはずないだろぅ?各門に生徒が集まっているんだ、数字兵だって門のそれぞれに集まるさ」
ノーム教諭は子供に諭すように、各門の挟撃戦術について話した。みな一様に顔を歪めていったが、ナイトの白砂 司(しらすな・つかさ)が辛うじて問いを生み投げた。
「しかしジョーカーにあれ程のポイントを付ければ討伐希望者が殺到する、結果、数字兵の数は増す。各門の挟撃が成功したとは思えないんだが……」
「その通りだよ。だから」
ノーム教諭は一層に笑みに歪めた。
「ジョーカーには一切、数字兵の援軍は無しだ。代わりに、彼らに援軍に行ってもらっているんだ♪」
「彼ら?」
くっくっくっ、というノーム教諭の笑い声だけが不気味に響きわたっていた。
ジョーカーと戦いしはチーム「シャッフルオブジョーカー」は、ジョーカーを西の樹海に誘い出す事に成功していた、いや、後の少しで成功する所であるのだ。
上空を巨大な箒とジョーカーが行く。森の罠の上空付近、ウィザードの御凪 真人(みなぎ・まこと)は小型飛空艇に乗りてジョーカーの前に立ち現れると、アシッドミストを放ち、辺り一面の視界を奪った。そこへルカルカ・ルー(るかるか・るー)のパートナーで、軍用バイクから飛び出したドラゴニュートのカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)がミスト上部へと連続で火術を放つ。視界を奪われた上の爆発と音に、さすがのジョーカーも高度を一気に下げるに追い込まれた。
「予定通り。来るぜ」
罠を構えるは二人のソルジャー。イリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)がクリスフォーリル・リ・ゼルベウォント(くりすふぉーりる・りぜるべるうぉんと)に合図を送る。
ジョーカーの巨体が木々に張り巡らせたワイヤーに掛かった、その瞬間に、仕掛けた爆薬が一斉に爆発した。
好機!!
クリスフォーリルはスナイパーライフルを構えて狙い撃った。
カルスノウトが弾を弾いた。この光景が、一同を固まらせた。
弾を弾いたのはハートのクイーン(12)、さらにジョーカーを狙っていたイリーナにスペードのキング(13)が斬りかかったのだ。
動揺が反応を遅らせた。瞳を見開いた瞬間に、絵柄兵のカルスノウトが振り下りた。
カルスノウトの衝突音。絵柄兵のカルスノウトを受け弾いた。イリーナを守り、一撃を防いだは蒼空学園のセイバー、シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)である。
間髪入れずにシルバは絵柄兵に斬りかかる。パートナーの雨宮 夏希(あまみや・なつき)がシルバに続き駆けながらイリーナに言った。
「キングはシルバが受け持ちます、あなたたちはジョーカーを」
離れ見ていたレオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)は藍澤 黎(あいざわ・れい)に並び言った。
「ジョーカーとクイーン、チームを二分するか」
「えぇ、それが良いかと」
ノーム教諭の不気味な笑い。どうしてこんな所に、よりにもよって。
難易度が明らかに、そう、釣り上げられたのだった。
北門戦線、ダイヤのキング(13)と剣を交えるのはソルジャーの神代 正義(かみしろ・まさよし)である。
片手に光状兵器、片手にアサルトカービンを携えて、いや、それでも絵柄兵のカルスノウトを受ける度に神代の体は吹き飛ばされていた。
「くそっ、奴のバリアのせいで、俺の攻撃が効かん」
「いや、バリアって……、そんなの張ってるわけないですよ」
パートナーの大神 愛(おおかみ・あい)のツッコミを聞いてから、神代は再びに向かい構えた。
それに合わせて、ウィザードの八畝 八尋(やつせ・やひろ)とパートナーのイスタ・フォン(いすた・ふぉん)が、空飛ぶ箒で滑り向かって行った。誰もが北条 御影(ほうじょう・みかげ)の指示を受けている。八尋は出来るだけ派手に飛んでから、一気に高度を下げて向かった。
「空中からの仕掛けにはサニーのキング(13)が迎え撃つ」
そこへ魔楔 テッカ(まくさび・てっか)のパートナーで機晶姫のマリオン・キッス(まりおん・きっす)が駆け続く。
「絵柄兵の高度が下がれば、身長3メートルのマリオンで十分に届く」
マリオンは意を決してサニーのキング(13)を箒ごと握りしめるに成功した。
「すぐに次が来る、マリオンの巨体はアサルトカービンの良い狙いになるからだ」
御影の言葉の通りにムーンのジャック(11)が狙い来た。すかさずマリオンの背から魔楔 テッカ(まくさび・てっか)とセイバーの一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)とパートナーの宮本 紫織(みやもと・しおり)が飛び出した。
テッカはムーンのジャック(11)に雷撃を、燕と紫織は時間差にてカルスノウトを振りおろした。
絵柄兵は雷撃を受けながらもカルスノウトの二撃を受け捌いたが、足は地面にめり込んでいた。
「瞬間で良い、動きが止まれば」
握りしめたサニーのキング(13)をマリオンはムーンのジャック(11)目掛けて投げつけた。
「ここだ、行くぞ」
燕と紫織は小型飛空艇で、八尋とイスタはそのまま空飛ぶ箒で、テッカはマリオンにしがみ付いて長い歩幅で。
「マルクス」
「声をかけたけど、残ると言ってるアルよ」
「…………」
突破するならここしかない。御影が神代と愛に目を移した時、二人は背を向けたまま親指を高々と立てていた。
無言の背中。御影は白馬に跨り、駆け始めた、そう、振り向く事なく一直線に8人はポールを駆け抜けた。
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