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リアクション
第二章 戦いは始まり、色めいてゆく
各地の各場所m各ポイントにおいて、己の取るべき行動は定まり、戦いの場へと辿りついていた。
西の樹海の上空では、イルミンスール魔法学校のナイト、水神 樹(みなかみ・いつき)がサニーの9と戦っていた。
棒状武器であるハルバートにて数字兵の斬撃は防げる、がしかし、何度か樹はその威力に体勢を崩されていた。
「くっ、やっぱり待って受けるのは、それだけで不利ね」
地上では腕力に加えて足腰、そして全身の力で受ける事が出来る、しかし箒の上ではそうはいかない。相手の斬撃に突進の勢いが付いただけで、簡単に腕力を上回ってしまうだろう。
数字兵が再び迫ってきた。
「ここでは、受けない」
樹は一気に高度を上げると、降下の力を加えて数字兵に向かって行った。
衝なる突のぶつかり。軍配は樹、数字兵は箒からも落ちそうに体勢を崩し、樹の追撃、ハルバートが数字兵を突き上げた。
トランプへ戻る数字兵。落ちてゆく箒を拾ったのは、パートナーのカノン・コート(かのん・こーと)だった。
「お疲れ様、良い戦いだったね」
「えぇ、ようやくコツを掴んできたわ」
空中戦。条件と状況が変われば戦術も変わる。強くなるには多様の経験を積んでおく事が大切だと樹は改めて思わされた。
「そろそろ移動しないと、門を抜けられないよ」
「そうね、そろそろ行きましょうか」
授業でやれるならば有難い。カノンを、そして己を守るための、命を懸けた戦いの時、その時が来る前までに。
二人は出来る限りに高度を下げての移動を始めた、樹はふと、その光景を見た。
「数字兵が、一方に向かっている……?」
森の外れから、そう、門の方向へ、一体、二体、いや三体は居る。
界下を見ずに、飛び向かう。指令を受けた兵のように。
木々を間を行くが得策か。二人は更に高度を下げて門へと向かった。
見つめる先には南の門、ポールの前にはハートのキング(13)、ムーンのキング(13)、サニーのジャック(11)が三角陣を敷いていた。
顔を合わせたは二つのチーム。チーム「王族を狩る者」とチーム「クイーン・オブ・カード」の面々、そこに蒼空学園のセイバー、樹月 刀真(きづき・とうま)と組んでいる百合園女学院のナイト、ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が加わった。
各チームから一人が立つ。
チーム「王族を狩る者」からはナイトの姫神 司(ひめがみ・つかさ)、長い黒髪を揺らしながらに。
「ふむ、絵柄兵があれほど集まると、やはり壮観だな」
「そうですね、でも、負けてあげる気はないですよ」
ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)の言葉に、司は笑み返した。
「当然だ、チームの結束も高まっている、負けるはずがない」
チーム「クイーン・オブ・カード」のセイバー、荒巻 さけ(あらまき・さけ)は箒を持つ絵柄兵を見つめて言った。
「彼、サニーのジャック(11)は私達がお相手しますわ」
「そうだな、勢力が3つあるのだ、狙いを分けるのが良いであろう」
「それならボクたちがムーンのキング(13)♪」
「我々がハートのキング(13)だな」
互いの健闘を視線に込めて、それぞれの仲間たち狙いを伝える。チーム「絵柄兵」の戦力を分断すること、それは大いに効果的であろう。
互いの狙いには手出し無用。狭きに3つの戦場が構築されるようであった。
戦始まりの南門。蒼空学園のソルジャー、カライラ・ルグリア(からいら・るぐりあ)は戦況を遠きに見つめていた。
二機の小型飛空艇と箒が一機がポールに向かい行けば、サニーのジャック(11)が飛び向い上がった。
続いてに、前衛後衛を構成しながら7人が飛び出していた。キング(13)の一人が立ちはだかり、剣との衝突が始まった。
カライラの横顔を見つめて、パートナーの機晶姫、ティファナ・シュヴァルツ(てぃふぁな・しゅう゛ぁるつ)は問いかけた。
「ねぇ、私たちは戦わないの?」
「あぁ、せっかく戦ってくれてるんだ、僕らはチャンスを待てば良いよ」
揺るぎのない目が。ティファナの瞳は曇った。
「戦わないで…… は、卑怯じゃないのかな?」
「卑怯? 戦略的で効率的な方法だよ、そうだろ?」
カライラがティファナを見つめても、瞳は変わらない。
戦況へと目を移す。笑んでいる者もいるが、誰もが真剣な瞳をしていた。
チャンスを待てば良い、もちろんに良い。それが良いのだ、それなのに。
「なんだよ。戦闘は短く少ない方が良いって言ったの、ティファナじゃん」
唇を噛み締める、そんな事をしている自分にはカライラ自身は気付いていないようだ。それでも、心が揺らされている事には気付いている、思い知らされている。
彼の青い目が、戦況をじっと揺らして見つめていた。
北の門、待ち構えるのは、ダイヤのキング(13)にムーンのジャック(11)、そしてサニーのキング(13)である。
その男、仮面の男。シャンバラ教導団のソルジャー、神代 正義(かみしろ・まさよし)はトレードマークの赤いマフラーをなびかせて駆けていた。いや、パートナーのプリースト、大神 愛(おおかみ・あい)と共に絵柄陣に向かって突進していた。
「ダイヤのキング! お前は俺の手で倒ぉぉす!!」
「ちょっと、はぁ、はぁ、待って下さい、このマスク、息しづらい……」
「ラブリーアイちゃんよ、我にパワーブレスだ」
離れ見ているはローグの北条 御影(ほうじょう・みかげ)。
「なんだ……、あれは」
辺りを見渡してみれば、同じ画を見ている数人が見てとれた。
イルミンスール魔法学校のウィザード、魔楔 テッカ(まくさび・てっか)はパートナーの機晶姫、マリオン・キッス(まりおん・きっす)に声をかけた。
「あの方、目立ってますね、あたい達も合体して戦いましょうか」
「えっ、でも……」
「へぇ、あんた達、合体できるのか?」
御影がテッカに声をかけた時、イルミンスール魔法学校のウィザード、八畝 八尋(やつせ・やひろ)とパートナーのウィザード、イスタ・フォン(いすた・ふぉん)が箒に跨り、辿りに着いた。
「あぁっ、もう戦っている人がいますよイスタさん」
「そのようですね、…… 凄い格好ですね」
御影は順に2人と視線を交わした。
「空飛ぶウィザードが2人か。そこに隠れてる二人は、何が出来るんだ?」
御影の指摘に体をビクつかせて。岩の陰から笑い現れたのは蒼空学園のセイバー、一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)とパートナーのセイバー、宮本 紫織(みやもと・しおり)である。
「あちゃぁ、なしてバレたんやろなぁ」
「扇子の音、じゃないかしら」
扇子をパタパタ、燕は扇いで笑んでいた。
「人数は居るか…… 面白い」
「面白い? 何の事です?」
八尋の問いに、御影は一同を見回してから絵柄陣へと視線を向けた。
「倒す、必要なんて無いんだ。突破できれば良い」
御影の言葉に一同は惹かれ集まった。急造であれ、同じ方向を向けるようだった。
ジョーカーに挑んでいるは4人、笑っているのはジョーカーだけ、誰もかれもボロボロであった。
巨大な箒で宙に舞うジョーカーに、ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)がリターニングダガーを放ち、同時にジョーカーの上空から紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)が斬撃を放つ。
ジョーカーは巨大なカルスノウトでダガーを、巨大なアサルトカービンで斬撃を受けて弾いたが、この瞬間には緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)の雷撃が巨大な箒を襲っていた。本体には当たらずとも、箒には当てられる、そして雷撃はジョーカーの体に伝い動きを止めた、刹那にはアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)の轟雷閃がジョーカーの胸を抉り傷を刻んだ。
それでもジョーカーは倒れ得ない。雷撃を振り弾き、アリアを拳で叩き落とした。
地に叩きつく直前に、アリアを抱きかかえたのは薔薇の学舎の藍澤 黎(あいざわ・れい)であり、チーム「シャッフルオブジョーカー」の面々がジョーカー戦線に姿を現した。
「お待たせしました。後は任せていただきたい」
アリアを下ろしながら言う黎に、体を起こしながらにヴェルチェが言った。
「なんだぃ?横取りしようってのか?」
「心意気では戦えないのですよ。ナガン、お願いします」
「おぅよ、待ちくたびれたぜ」
ピエロ姿のローグ、ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)は、黎からスペードのジャック(11)を受け取り、空を見上げた。
「ピエロなジョーカーだと?違うな、ピエロは俺様、ジョーカーはこの俺様ただ一人だ。ほらよ、かかってきやがれ」
トランプを掲げて同時にアーミーショットガンをナガンは放った。それがチーム「シャッフルオブジョーカー」の戦略実行の合図となった。
黎はレオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)の、そして黎のパートナーの一人、フィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)はレオンハルトのパートナー、シルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)の軍用バイクのサイドカーに。黎のもう一人のパートナー、エディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)はルカルカ・ルー(るかるか・るー)のサイドカーに乗り込んで、ルカルカのパートナーであるダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)とカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が乗る軍用バイクと並走して走りを始めた。
ジョーカーは、カービンの銃身でナガンの弾を易く防いだが、トランプ、そして一斉に逃げ出した様を見て、一層に歪めて追いかけて行った。
チーム「シャッフルオブジョーカー」が目指すは西の樹海、そこでは仲間が罠を張っている。
敵が強大ならば尚の事、領界に誘い出すまでよ。
面々はジョーカーの箒の速さに驚きながらも笑みを浮かべて逃げ誘っていた。アリアにヴェルチェに遙遠に遥遠も、悔しさを含んだ笑みを放った。
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