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リアクション
残り時間が迫ってきている。
西の樹海の入口付近、チーム「シャッフルオブジョーカー」はチームを3分割させられていた。
一つは援軍に現れたハートのクイーン(12)と戦う面々である。絵柄兵のカルスノウトによって弾かれ戻ったのはナイトの藍澤 黎(あいざわ・れい)である。
「ジャックに等しい、やはり強い」
「黎、平気ぃか?」
「れいちゃん、ケガはない?」
黎に寄り来たのはパートナーのフィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)とエディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)である。エディラントは黎に飛び寄るなり、指の先にキスをした。
「問題ない、舞い戻る」
絵柄兵はウィザードの御凪 真人(みなぎ・まこと)のパートナー、セイバーのセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)と打ち合っていた。
「御凪殿」
「えぇ、手段を選んでいる場合では無さそうですね」
そう言って二人は目つきを変えた。
黎は絵柄兵との打ち合いをセルファと代わり、セルファを御凪の元へと戻した。
黎の突きをカルスノウトが受けたと同時に、フィルラントのバニッシュが光を放つ。瞬間にも動きの止まった絵柄兵を、ソルジャーのクリスフォーリル・リ・ゼルベウォント(くりすふぉーりる・りぜるべるうぉんと)がスナイパーライフルで撃ち狙う。
間髪を入れずに御凪はスプレー缶を絵柄兵に投げつけ、炎術で着火、爆発させた。
威力ではない、衝撃が更に体の硬直を誘い、そこへ、十分に力を込めたセルファの轟雷閃が斬りつけた事で、何とかに、ようやくに。
動きを止めるにも2つ3つと仕掛ける必要がある。単体では隙を作るのは難しい。しかしそれを作れてしまえば。
一番に遠くから戻り来たクリスフォーリルはトランプへと戻った絵柄兵を手に取り、大人びた表情を優しく和いだ。
はてさて、こちらのお相手はスペードのキング(13)。
セイバーのシルバ・フォード(しるば・ふぉーど)は息を切らしながらウィザードのレオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)へと話しかけた。
「なぁ、おまえは向こうのチームの人間なんだろ?何で居るんだ?」
「…… 本来ならば我々が倒すべき相手だ。お前達にばかり任せる訳にはいかんのだよ」
「だったら少しは手伝え!」
「手伝って良いのか?一人で戦う事に固執しているように見えたのだがな」
「ぐっ、それは」
レオンハルトは絵柄兵、そして場を収束させた御凪たちを見つめて口を開いた。
「そうは言っても、そろそろ時間のようだ。終いにしよう」
「へっ、偉そうに。足引っ張るなよ」
レオンハルトは瞬間にシルバのカルスノウトを奪うと走りながら、シルバのパートナーであるナイトのマリア・ペドロサ(まりあ・ぺどろさ)を片手で抱きかかえた。
「えっ、ちょっと、何っ?」
「盾をかざすのを忘れるなよ」
そう言ってレオンハルトはマリアを勢い良く絵柄兵へと投げつけた。
「きゃぁぁぁぁあ」
「おぃテメェ、なにしてんだ」
パートナーのプリースト、雨宮 夏希(あまみや・なつき)にパワーブレスをかけて貰ったシルバは投げ飛ばされたマリアを追い駆けた。
従順に盾をかざしたマリアに絵柄兵が迎撃の構えをした時、マリアの影からレオンハルトのパートナー、プリーストのシルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)が飛び出してバニッシュを放った。一面に光が撒かれる。
光の中、レオンハルトは絵柄兵に轟雷閃を放つと、追い来たシルバにカルスノウトを投げ渡した。
「決めろ」
「ってオイ!くそっ、うぉぉぉぉぉぉ」
渾身の轟雷閃が絵柄兵を裂いた。煙の後にヒラヒラと。腰を抜かしたマリアと共に地面にゆっくりと座り込んだ。
「テメェ、無茶し過ぎだぜ」
「無茶ではない、前例を見た上での戦術だ、おまえも中々の動きだったぞ」
シルバは顔を歪めてからマリアに声をかけた。安心して流れた涙を見て、シルバは優しい笑みを得ていた。
そうしてこちらはチームの本命、いや、本丸を狙っているのです。
相手はジョーカー、向かっていくのはソルジャーのイリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)とセイバーのルカルカ・ルー(るかるか・るー)である。
戦いの内にジョーカーも慣れてきたのだろうか、イリーナの銃撃を巨大なアサルトカービンの銃身で受けると、ルカルカの剣撃もそのまま銃身を振りて弾き返した。
故に左右に広く。二人とは反対の方向からピエロのナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)がアーミーショットガンで狙いたが、巨大なリターニングダガーを放ちてナガンの銃撃を防いだ。
上下を加えてやる。イリーナは木を蹴り登り、上空へ飛び出した。ルカルカはジョーカーの足元へ、ナガンはジョーカーの視界の隅から。
銃撃と斬撃の一斉攻撃。ジョーカーは巨大な空飛ぶ箒を地に立てて、その先端に逆立ちをして全てを避けた。ルカルカの斬撃が箒の柄を斬ったが、回転させた箒がルカルカの体を弾き、飛ばされたルカルカの体がイリーナへと飛び当たった。
「目立ち過ぎだぜ」
一気に距離を詰めたナガンはジョーカーの顔の前で舞いながらショットガンを放った。ジョーカーはそれを重心移動だけで避けると、巨大なカルスノウトで薙ぎ払った。
銃身で受けても飛ばされた。イリーナのパートナーでゆる族のトゥルペ・ロット(とぅるぺ・ろっと)がナガンに寄った。
「あのっ、あなたもエレーナにヒールしてもらうが良いであります!」
「…… 結構だ、体の傷は勲章だからね」
ルカルカの元にはパートナーのプリースト、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)とドラゴニュートのカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が駆け寄っていた。
「やはり、一撃に賭けるしかない。俺達の希望はルカ、お前だ」
ダリルはそう言ってルカルカにパワーブレスをかけた。
「お前もドラゴンアーツ、使えるだろ?更に強力になる」
「でも」
「必ず隙は作る。ルカ、お前が奴に引導を渡すんだ」
二人の真っ直ぐな目に、ルカルカも顔を上げた。
「わかった。私が倒すわ、必ず!」
3人は笑みあってから向き睨んだ。パートナーのエレーナ・アシュケナージ(えれーな・あしゅけなーじ)のヒールを受けたイリーナも駆け向かっている。それにダリルとカルキノスが加わった。
攻撃力、それも強いが何よりも、身のこなしを含めて防御力が特出しているのだ、つまり、最後の一撃をルカルカに託すのであれば他は如何にジョーカーの動きを止めるか、その一点に絞れば良い、絞るしかないのだ。
ドラゴニュートのカルキノスが連続で火術を放つ。180度を違えてイリーナが銃撃を連発した。火術を銃身で、銃撃をカルスノウトで受け捌いている瞬間に背後からナガンが跳びかかる。
気配を感じたジョーカーは火術を捌くのを止めて、身のこなしだけで火術をかわしながら銃身でナガンに対処する、イリーナの銃撃を剣で捌きながら。
この時、全ての攻撃に対処しているとは言え、ジョーカーの体勢は崩れに崩れていた。
ナガンの銃撃を未然に防いだ瞬間に、飛び出したダリルがバニッシュを唱えた。
光に包まれた一瞬に、ダリルとカルキノスはジョーカーの足を、ナガンはロープを用いてジョーカーの首を引き上げた。
音速を超えた一撃。二段強化されたルカルカのソニックブレードが、ジョーカーの体を斬り裂いた。
追撃のアサルトカービン、アーミーショットガン、火術が絶え間なくジョーカーに降り注ぐ。煙が上がる瞬間まで、姿が消えるその時まで、地面にトランプが舞い降りるまで。
トランプになったジョーカーを手に取って、ルカルカはみんなに笑顔を見せた。
歓喜の声が自然と体から出て行った。それぞれにハイタッチをして笑みあって抱き合って。
共に戦った一瞬の刹那がそれぞれに刻まれている、それは参加した全ての生徒のひとりひとりに言える事であり、それこそを経験と言うのであろう。
わぉわぉわぉわぉわぉわぉわあぉ
聞いた事のある音がして、続いてノーム教諭の声が響いて聞こえた。
「さぁ、時間一杯だ。全員本陣に集まるよぅに」
制限時間の3時間が過ぎたようだ。授業の終わりが近づいていた。
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