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リアクション
第8章 光条……
ガッガッ。
ゴッド・アイの謎の男は、竹で作ったスキー板を装着する。その出で立ちは仮面ライダーのようで、素顔は見えない。
「にゃん丸さん。この隙に頼むぜ……」
男はカッコつけて呟き、今度は周囲に聞こえるように大きな声で名乗りを上げる。
「我の名は……マスク・ド・ゲイザー! 新世界の神!!! 見よ! オレのK点越えを!!!」
きゃあああああ!
女子風呂はこの宣戦布告を聞いて、一気に大混乱。
男子風呂でも、みんなの注目はマスク・ド・ゲイザーに集まっている。にゃん丸の挙動不審をすっかり忘れている。
佐々木 真彦(ささき・まさひこ)は立ち上がり、女子風呂に声をかける。
「文乃様! 気をつけてください! 特に盗撮に気をつけてくださいッ!」
「それもそうね。後々まで残るものね」
関口 文乃(せきぐち・ふみの)は、やる気満々。
その隣では、うねうねうねうね。
ルナ・テュリン(るな・てゅりん)の頭部についてる謎の白い何かが活発に動き出す。うねうねうね。
「ボクの体をのぞこうなんて、そういうのロリコンでございます。証拠写真を撮っちゃうでございます!」
「あら、あなた。お風呂場へのカメラの持込はマナー違反よ」
グロリア・リヒトがルナを制する。
「でもしかしでございます。ロリコンでございます」
「カメラはダメだわ」
文乃が取り上げてしまった。
「えーーーん」
白いうねうねも、くたっと倒れた。
その頃、森の前の森。
理沙はチェルシーのナンパを止めるのに精一杯で、のぞき部どころではなかった。
他にも見張りはいたが、葉月ショウはどこかおかしい。
「のぞき部、隠れてないで出てこい」
大きなぼっとんをいろんな角度からツンツンしていた。
その隙をついて、レースのパンティーに接近していた者がいた。
ササッササッと森を駆ける赤い影。額には大きくひらがなで「ぢぇらしぃ」と書いてある。
そう。彼の名は……
“マスク・ド・ぢぇらしぃ”
「んっふっふ……修学旅行に浮かれるけしからん女子生徒たちよ。私がしっかり見守ってあげるから、ね!」
しかし、そう簡単にはいかない。
さすがにピンチだと思ったのか、ついにキリン隊は大御所がふらりと現れた。――副隊長の橘恭司だ!
「既に他の者にも連絡してある。君はのぞくことはできん」
「ぐ……」
マスク・ド・ぢぇらしぃは拳を握りしめた。
「まずい。こいつ、できる……!」
マスクの下で冷や汗がたらり……。
ゴッド・アイでは、マスク・ド・ゲイザーが滑り出していた。が!
「う。しまった。このマスク。下が……見えない!」
急いで作ったためか、頬の加工に補強テープを貼りすぎていた。
囮のついでにしっかりのぞくつもりだったマスク・ド・ゲイザーだったが、既に竹スキーは滑っていて止ることはできない。この時点で、のぞきの夢は……破れた。
「うおおおお! ちくしょう!!! 来やがれ、キリン隊! 俺が相手だぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!」
ひゅーーーーーーー、バババッ!
飛んだ!
きゃああああああ!
逃げまどう女子たちをのぞけないまま、マスク・ド・ゲイザーが飛んでいく。
文乃が風呂桶をぶん投げる。
「誰だあんた! マスクなんかして卑怯よ!」
「ふふふ。俺か。通りすがりののぞき魔さ……なんてね。のぞけねえよ! ちくしょう!」
「グダグダ言ってんじゃないわよ!」
そして……ボウッフォ!!!!
風呂桶とともにぶちかましていた火術が炸裂!
「アチチチチチ」
マスク・ド・ゲイザーはマスクを溶かされながらもレースのパンティーを越え……スチャッ。両手を広げて、見事なテレマークポーズ。森の前の森に着地した。
顔を上げると、目の前には恭司とマスク・ド・ぢぇらしぃ。
マスク・ド・ゲイザーとマスク・ド・ぢぇらしいは、初めて顔を合わせる。しかし、互いが仲間だとニオイで感じ取った。
うん。2人は大きく頷き、恭司と対峙する。
休憩所で疲労回復を待ちながらテレビを見ていたケンリュウガーは、激しく嫉妬していた。
「俺の敵……だ……」
さて、形勢は一気にのぞき部に傾いた。
マスク・ド・ゲイザーはゴッド・アイから飛びながらも全くのぞけなかった悔しさを恭司にぶつける。
「うおおおおおお! のぞけなかったじゃねええかああああ!!!!!」
恭司はマスク・ド・ぢぇらしいを警戒していて、隙ができた。
目の前には、マスク・ド・ゲイザーの剣が迫る――
刹那!!!
ドドドガーーーーーン!
マスク・ド・ゲイザーを横から蹴り倒したのは……バサバサッと風に揺れて黒衣がはためく、キリン隊隊長、村雨焔だ!
文乃の火術で溶かされたマスクはこの衝撃でついに……ぺろーん。1/3程が剥がれて垂れた。
焔は冷たく鼻を鳴らし、
「やはりな」
そう。マスク・ド・ゲイザーの真の姿は、のぞき部部長、弥涼総司だった。
総司は男子風呂のにゃん丸を気にしていた。
「ふっ。部長はつらいぜ……」
男子風呂は風祭優斗が警戒していたが、ずっと湯船から見張っていたら少しのぼせてしまった。
その代わり、キリン隊ではないが佐々木真彦がしっかりしていた。
「さすが、文乃様。きっちり火術で撃退したようです。私もきちんとしなくては、万が一にものぞきを見逃してしまったら、あああああ!」
想像しただけで、異常なほど筋肉ムキムキの体をぶるぶると震わせていた。
「ま、間違いなく……サーロインステーキにされます。いえ、消し炭にされます!」
背水の陣の真彦は、壁際でなにやらお喋りをしているイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)に注目する。
「フェル。なんだって? よく聞こえん」
イーオンは女子風呂にいるパートナーと話していた。フェリークス・モルス(ふぇりーくす・もるす)とアルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)だ。
フェリークスは壁をペタペタ触りながら、首を傾げている。
「イオ。何故こうして壁を挟んで話をしているのだ? 目を見て話せ、と言ったのはイオだろう」
「はっ。それもそうだな。こっちへ来るか」
「そうしよう。その方が話しやすい」
と立ち上がる。
「待ってください。それはいけません」
アルゲオが慌てて止めた。
「何故だ。これではろくに話もできないではないか」
「ちょっと、イオ! フェリークスが本気にしてますよ。おかしなこと言わないで!」
このやりとりを側で聞いていた御凪真人は、溜め息ひとつ。
ゆっくり浸かりたいだけなのに、大きな声で話す迷惑なイーオンにチクリ。
「いっそのこと、君が向こうに行ってはどうです? 歓迎してくれるのではありませんか?」
「それはいい。では壁に穴をあけて行くとしよう」
「え? 冗談ですよね……」
引いてる真人を無視して、イーオンはおもむろに立ち上がり、力を溜める。
「ちょちょちょちょっと! 何をするつもりですか!!!」
「ん? 日本の風習にあるだろう、混浴というものが」
そして、壁をドラゴンアーツで破壊――
「ううううううーーー!」
壁は破壊されず、真彦が唸っている。
ドラゴンアーツを自らの体で受け止めたのだ。
「おやおや。これは悪いことをしたな」
「文乃様。やるだけのことはやらせていただきました……よ……」
『佐々木真彦、戦死』
これを見て、真人も怒った。
「お風呂は、ゆっくり浸かって温まるものですよ」
シュバアアアア!!!!
イーオンは真人の氷術を喰らい、カチコチに固まった。
「そのまま温まっていれば溶けますから。ま、ごゆっくり」
この後、イーオンを固めた氷はたしかに徐々に溶けてはいったが、秋の京都の風は冷たく……
「ひっくしゅん!」
風邪ひいて、『イーオン・アルカヌム、戦死』
志位大地はカメラをパンして壁の中央付近を捉え……口をあんぐり。
その異様な光景に、撮影していいものかと真剣に躊躇った。
「ど、どういうことです……か???」
なんと……なんと……なんと……
にゃん丸が、シコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコ…………
肝心の部分は湯の中でよく見えないが、あの手の動きは間違いない。
オ
オ
オ
オ
オ
オ
オ
オ
………………………………………ナニィィィィィィ!!!!
男子風呂は騒然!
みんな、じりじりと後退りしていく。
「さすがはにゃん丸さんだね。仙台藩黒脛巾組の血は伊達じゃない」
クライスは感心していたが、しかし体は素直。後退りしていた。
支倉 遥(はせくら・はるか)の英霊伊達 藤次郎正宗(だて・とうじろうまさむね)は、休憩所で1台しかないマッサージチェアを独占しながら中継を見ていた。
「下品だな。だが、なるほど読めたぜ。ああやって敵を遠ざけつつ……という一石二鳥の作戦だな」
と解説はしてみたものの、いかんせんのぞき部には興味がなかった。
浴衣姿でテレビを見ていたリリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)に声をかけた。
「なあ。俺の側室にならないか?」
しかし、リリィはにゃん丸のパートナーだ。茫然とテレビを見つめ、正宗の声なぞ耳に入らなかった。
「あああっもう! こんなにアホでスケベでアホなんて……!!!」
そうしてるうちに、にゃん丸のスケベオーラだろうか、画面の中、男子風呂は徐々に光り輝き始めた。
男子風呂で解説男が声を震わす。
「おお、神よ! これまで、こんなにも光り輝くオ…………………………………………ナニーが今まであっただろうか。こんなにも神々しいオ…………………………………………ナニーが今まであっただろうか。ああ! これはもう、光条性器だ!!!」
キス魔男がおもむろににゃん丸に近づき、その光条性器をツンツンする、と……
キーン!
固い!
そう。これこそ、正宗が言っていたことである。
これは光条性器ではない。本物の光条兵器だ。
にゃん丸は光条兵器で壁に穴をあけていたのだああああああああ!!!
こうしてる間にも、にゃん丸は休むことなく、
シコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコ…………
光条兵器はどんどん固い壁を砕いていく。
そのとき、のぼせて休んでいた風祭優斗が立ち上がる。
「そういうことですか。だったら、……覚悟してください」
ふらふらしながらも拳に力をこめる。
「そ、それはいけません!」
クライスが優斗の前に走った。が……
ポカン!
クライスは顔面を痛打。
シダ・ステルスに風呂桶で殴られたのだ。
「イタタタタ」
「あんた! のぞきは道徳的に……ダメだぞ」
あまりの正論に、クライスは一瞬固まった。
「あ、でも……」
「それに、とばっちりで家族まで裸を見られたらたまらん!」
「いえ、そういうことではなく、雷術はここにいるみんなが被害を受けると――」
遅かった。
女子風呂のカミナリ悲劇を知らない優斗は……ぶちかましていた!
バリバリバリバリバリバリ!!!!!
「あああああああああああ!!!!!」
湯船にいたみんなに感電し、にゃん丸は両手で股間を隠しながらぶっ飛んだ。
天井に激突し、光条兵器が突き刺さった。
そのまま、ピクピクしながらぶら下がっていた。
『黒脛巾にゃん丸、戦死』
『クライス・クリンプト、戦死』
『シダ・ステルス、戦死』
そして、雷術をぶちかました優斗自身も、感電した。
『風祭優斗、戦死』
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