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リアクション
第9章 両雄激突?
「どうする? のぞき部の作戦は失敗に終わったようだぜ……」
「くそっ。やられたか、にゃん丸さん……」
森の前の森で、村雨焔と弥涼総司が対峙していた。
総司はじりじりと間合いをつめ、カルスノウトを構える。
すると、
とんたかとんたか……
「焔ー!」
アリシアが焔のところまで走ってきた。
焔は黒衣を払い、アリシアの胸に手を添える。そして……
そのまま光条兵器の打刀“漆喰”を引き出した。
「総司。……覚悟はできてるな」
と漆喰を振り上げるが、総司は別のところを見ていた。
旧型の光条兵器は、取り出す際に服が破れてしまう。アリシアの胸元も当然……
「きゃっ!」
慌てて手で隠すアリシアは、確かに容姿が幼い。
しかし、女子は女子。のぞき部部長たるものがその胸元に視線を送らないわけにはいかなかった……。
焔は、ものすごくかるーく漆喰を振り下ろした。
「あ!」
漆喰が目の前に来てやっと気づいた総司に、為す術はなかった。
「し、しまった……油断した!」
「軽蔑……いや、ここまで来ると敵ながら天晴れ。その異常なまでのスケベ根性には敬意を表すぜ。だが、手は抜かん」
ズビズバーーーーーーーッ!!!
『弥涼総司、戦死』
焔は、そばで睨み合っている橘恭司とマスク・ド・ぢぇらしいを一瞥する。
「恭司なら負けるわけがないな。あとは任せるぜ……」
バサバサッと黒衣を身に纏い、片手一本で死んでる総司を担ぎ、去っていった。
「君。蒼空学園の講師だよな」
「ええっ?」
いきなり恭司に言い当てられ、マスク・ド・ぢぇらしぃは激しく動揺した。
「な、な、な、何を言っているのですか……私は、マスク・ド・ぢぇらしい」
「先生がそんなことしてて、いいのか?」
完全に正体がバレてる……? いや、まさか……マスク・ド・ぢぇらしいの頭を不安が駆け巡る。
「何度でも言う。私は……」
そのときだった!
ととととととととと……
「カッコいいにーちゃーーーん! 手伝うぜーーーーーーッ!!!」
アリスロリータを纏った幼い佐々良 睦月(ささら・むつき)が、バケツに熱々の熱湯を持って走ってきた。
両者の間には、葉月ショウが使っていたハシゴが残されている。
睦月はそのままハシゴに上る。
マスク・ド・ぢぇらしいは思った。――勝った! 勝利の女神は私に微笑みました!
恭司は思った。――さすがに、この間抜けなマスクマンをカッコいいとは言わないだろう。
そして、睦月はバケツの熱湯を……
バッシャーーーン!!!
恭司にかけた。
「あつううう!!! な、何故っ!!!」
「カッコいいエドワードにーちゃん! あっそぼーぜ☆」
「お、おう。でも、本当に私の味方ですか……?」
何はともあれ、今度は一転してエドワード・ショウ(えどわーど・しょう)が有利となった。
しかし、熱湯を被った割には恭司は火傷した様子がない。
「あれ? そういえば、熱くない。むしろ……暖かい」
睦月が運んでる間にぬるくなっていたのだ。
そして、バケツを持った子供がもう1人走ってきた。
マーク・ヴァーリイ(まーく・う゛ぁーりい)だ。
「うおおおおお! 行っくぜええ!!!」
恭司は身構えた。
「今度こそ熱湯だったら、本当にヤバいな……」
エドワードはしみじみと遠くを見つめている。
「仲間って、本当にいいもんですね……」
バッシャーン!!!
ぴちゃぴちゃぴちゃ……。
マークがぶっかけたのは、エドワードだった。しかも、水だ。
この季節、夜遅くに水をかぶって京都の冷たい風に当たれば、当然こうなる。
「へーーーーっくしょん!」
マスクの中に鼻水がべったりついて、呼吸困難になった。
『エドワード・ショウ、戦死』
マークは犬を追い払うように、手で「しっしっ!」とエドワードを追い払った。
エドワードの隣にいたマークも水をかぶっていた。
『マーク・ヴァーリイ、戦死』
とはいえ、恭司もこの後、風邪を引いた。
『橘恭司、戦死』
こうして、のぞき部の挑戦は終わった。
川原には、縄でぐるぐる巻きにされたミノムシ状態ののぞき部員がぞろぞろ繋がれていた。
「♪ チャーンチャーンチャチャーンチャーン チャチャチャチャチャーンチャーンチャーン」
メダルを授与するように、ウィノナ・ライプニッツが、それぞれの首に手作りの札をかけていく。
まずは、部長の総司だ。
『不埒な真似をしてしまいました。……スケベ部長』
札をかけると、捕縛者をそのまま引上げて、混浴城に吊っていく。
キリン隊の零は、のぞき部員1人ずつに吊り下げ用のロープを縛っていく。背中に手を回して、まるで抱きしめるようにして縛っている。
1人ずつの目を見て、心で語っていた。
「おまえら、よくやったよ……!」
心の底では、のぞき部だったのかもしれない……。
札は次々と下げられ、みんなが吊されていった。
『不埒な真似をしてしまいました。……ロックスケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……浅草ロックスケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……スケベバナナ』
『不埒な真似をしてしまいました。……ブラザースケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……スケベ騎士』
『不埒な真似をしてしまいました。……よだれスケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……スケベジジイ』
『不埒な真似をしてしまいました。……ぢぇらしぃスケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……スケベMAP』
『不埒な真似をしてしまいました。……転倒スケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……ぬるいスケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……スケベ手伝い』
『不埒な真似をしてしまいました。……キュウリスケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……ペンペンスケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……スケベ地獄』
『不埒な真似をしてしまいました。……スケベ暴発』
『不埒な真似をしてしまいました。……覚悟のスケベ』
『不埒な真似をしてしまいました。……光るスケベ(坊主)』
『不埒な真似をしてしまいました。……光るスケベ(ちんちん)』
最後に、いまだに脳みそがトコロテンの影野陽太が、『不埒な真似をしてしまいました。……鼻血スケベ』
そんな彼らの下を、引率で来ていた保健室の先生藍乃 澪(あいの・みお)が通りかかった。
「さぁて、ようやく仕事も終わったしぃ、お風呂でもゆっくり浸かろうかしらぁ」
澪は童顔で、かつ妙な色っぽさがある。
つまり……あの男が声をかけないワケはなかった。鈴木周だ。
「そこのお姉さん!! 俺たちと部活動しないかっ!?」
「あらぁ。みんなのぞき部なのぉ。まぁ若さゆえの過ちですものねぇ。怪我しないようがんばってねぇー」
みんな既に大怪我してることに気づかない点は置いといて、なかなか理解のある先生だ。
「先生! うちの顧問ってーのはどう?」
「ははは……と笑ってごまかしとこおっと」
「おーい。考えといてくれよう!」
澪は「はーいぃ」とだけ答えて、去っていった。
まだ入部を願い出ていなかったトライブ・ロックスターは吊られたまま総司に問うた。
「部長。俺は、果たしてあんたらに見せることができたか? 熱いのぞきの魂を。胸を張れるのぞきな生き様を……!! 見せることが、できたか?」
「もちろんだぜ。のぞきスター! なあ、みんな!」
みんな、口々にトライブの気高きのぞき魂を称えた。
こうして、今回の戦いでのぞき部は新たに数名の新入部員を獲得した。
「この屈辱を勇気に変えて、一緒に戦おうぜ! のぞき部万歳!」
「おお! のぞき部万歳!」
その頃、風呂場はすっかり静まっていた。
女子風呂には誰もいなくなり、脱衣所に漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)と玉藻 前(たまもの・まえ)がいるだけだ。
月夜は旅行中だと言うのに暗かった。
「玉ちゃん。あのね……刀真が私のことを女の子として見てない気がするんだけど……」
「そうか……ならば月夜。刀真と風呂に入って抱き付け! 胸を押しつけたら、なお良し。それだけでオチる」
「本当に? それだけでオチるのかなあ」
「物は試し。まだその辺りにいるから呼んでみればいいであろう」
確かに、目の前の休憩所には、樹月 刀真(きづき・とうま)がうろうろしていた。
伊達藤次郎正宗もいたが、マッサージチェアで眠っていた。のぞき部の活動が終わったため、エメら「プロジェクトN」のメンバーも遅い夕食を取っているようだ。
「刀真。えっと今ね、人いないからね、混浴しよう」
「え? 混浴? まあ誰もいないなら……修学旅行の思い出作りみたいなものですね。いいですよ、一緒に入りましょう」
と堂々と、しかしこっそりと鼻の下をのばしながら女湯に入っていった。
脱衣所に入ると……
ぐいぐいぐい。
月夜はいきなり刀真の背中に胸を押し当てる。
「おいおい。月夜、胸が当たってるから離れてもらえる? ほら、俺も男だし」
月夜はそれでも、ぐいぐいぐい。ぐいぐいぐい。
「月夜! 何でさらに押付けるのさ!?」
「だって、こうしたらいいって、玉ちゃんが教えてくれた!」
「玉藻! お前月夜に何吹き込んでんだよー! こんなことしてたら、のぞき部の人達に殺されそうだよー」
すっかり静かになった京都の夜。
脱衣所から露天風呂までの扉はたまたま全開で、刀真たちの会話は混浴城に吊されているのぞき部連中にしっかり聞こえていた。
「なんだ、あれ」
「許されるのか?」
「ズルいでござる」
みんな、羨ましいやら妬ましいやら、とにかくハラワタ煮えくりかえっていた。
そんな女湯の脱衣所に、新たな客が入ってきた。
「はーあ。せっかくの露天風呂なのに、ガートナと混浴できないなんてなー」
島村 幸(しまむら・さち)だ。
幸が脱衣所に入ると、まず刀真と目があった。
そして、2人同時に呟いた。
「なんで、女湯に男が……」
幸は男子の制服を着ているが、歴とした女子である。
しかも、それをひどく気にしていた。
「ふっふっふっふ」
幸は、きょとんとする刀真たちの前で、ただ笑っている。
「ふっふふふ……あっはははははっ!」
「……」
「私が男?」
「……」
「あーーーーーーはっはっはっ!!」
バシドガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
ぴゅーーーーーーーーー
幸の乙女の鉄槌を一発喰らい、刀真はぶっ飛んでいった。
「はっ。面白い冗談でしたね」
幸は、口をあんぐり開けたままの月夜&前を無視して、服を脱ぎ始めた。
刀真はそのまま露天風呂を越え、混浴城のてっぺんに引っかかり……オチた。
しかし、ぶら下がってるミノムシに掴まった。
「あ、君。元気でしたか」
刀真が掴まったミノムシは、秋葉つかさだった。
「秋葉。知り合いなのか?」
隼人が尋ねた。
「……知りませんね」
「またまた、変なこと言わないでくださいよ。知り合いじゃないですか」
「……知りませんね」
「ええー。そんなー。嘘ですよー。みなさん。知り合いなんですよー」
ゴツッ
つかさは無言で頭突きをかました。
ひゅーーーーーーー、ぐちゃっ。
まったく間違った考え方だが、のぞき部にとっては、こそこそせずに女性の裸を見ようなんて男はキリン隊以下なのであった。
『樹月刀真、戦死』
みんな、刀真のことをなかったかのように、仲間の戦いを褒め合いはじめた。
「それにしても、今日の陽太はすごかったな」
「んぱーんぱー」
「目が覚めたら、真っ先に聞かなきゃな。初島伽耶の裸を見たのかどうか」
「見てたら、うちのエースでござるな」
「いや、見てなくてもエースさ。希望の星だぜ……」
そこで、総司が口を挟んだ。
「おいおい。まだ希望は他にもあるぜ」
総司は忘れてはいなかった、捕縛されていないのぞき部員がしっかり残っていることを。
「そうですね。彼らはああ見えてもかなりの策士。期待できますね」
「ああ、きっとやり遂げてくれるさ……」
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