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少年探偵、墨死館(ぼくしかん)へゆく

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少年探偵、墨死館(ぼくしかん)へゆく

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 終章「闇の眷族」

「とりあえず、みなさんの話を総合して、わかったことを話します。なにか言い分があれば、おっしゃってください。いいですね」
 あたしとくるとくんが、彼とむかいあった時、彼、自称ノーマン・ゲイン六世は疲れた切った表情で、地面に座り込んでいました。
 半壊した墨死館の前の荒地です。
「まず、この館は、ゲイン家のものではなく、偽物だった。あなたは、ノーマン・ゲインになりきっていた。あの、返事をして欲しいんですけど、首を振るだけでいいでもいいですから」
 ノーマンは、物憂げに首を縦に振りました。
「意見があれば口を挟もう。なければ・・・・・・」
「わかりました。あなたのパートナーは、あなたそっくりになり、どちらがどちらかわからなくなっていた」
 異議なし。
「これは、さっき、メソニクスさんから教えてもらったのですが、あなたは、ゲイン家がかって失敗した、別世界の存在、旧支配者と人間の混血児の製造と、旧支配者の召喚に挑戦していた」
「・・・・・・認めよう。が、その理由は、なぜだ」
「本物のゲイン家に、勝ちたかったんですね」
「禁忌を犯すことに、勝ち負けはなどあるのか」
「「ザ・マジックアワー」。勝ち負けでなくて、自分こそ本物のゲイン家になろうとしたんだ」
 くるとくんが題名を言った映画は、さすがに知らないのでしょうが、ノーマンは黙りました。
「ゲイン家に関係のある犯罪者を集めた晩餐会を開いたのは、虚栄心を満足させるため。ジョーカー。バートン版」
 異議なし。
「メイドの姿が全員同じだったのは、母親を館内にたくさんおいておき、「神の子」をなだめるため。有名なアニメと似たような設定」
 異議なし。
「そして、パートナーを失い、館を調査されて弱気になったあなたは、万が一の保険として用意していた、粉と禁書をニコさんに使わせて、くるみさんと旧支配者の間に生まれた神の子を滅ぼしたんですね」
「出処のわからん怪しい禁書でも、役に立って、得な買い物をした気分だよ」
「一つ、質問があります。ラドゥさんとあなたは、どんな関係があるんですか?」
「つまらぬことをきく女だ」
 こたえる意思がないように、ノーマンが顔をそむけた時、いままで、どこに隠れていたのか、メイドがあたしたちの前に立っていました。
「ラドゥには、フラれたのよ。闇の眷族を名乗っていても、ゲイン家もしょせん人間だと、言われてね」
「お前は・・・・・・」
 ノーマンは顔を上げ、メイドを見つめました。
「バカ共を踊らせる術はまあまあだが、闇の眷族にしては、この結末は不様すぎる。貴様のメイドも、分身も、待っている。晩餐会の時間だ。早く行ってやりたまえ、御主人様」
「お前、あ、貴方様は・・・・・・」
 メイドは、ノーマンの耳元に口を寄せ、なにかささやきました。
「・・・・・・」
「まだ、血は絶えてはいないのか」
 ノーマンはつぶやき、その首は、胴を離れて、地面へ転がる。
 首を失ったノーマンの体から、血飛しぶきが噴きあがりました。
 あたしも、周囲にいた人たちも、突然の事態に驚いている間に、全身に返り血を浴びたメイドは、くるとくんの頬にキスをし、
「すまぬな。偽物は、しょせんこの程度だ。少年。キミは、ボクの好みだ。また遊ぼう」
「ちょっと、あんた、なにすんのよッ!」
 反射的に、ひっぱたこうとしたあたしの手をヒラリとかわして、自分の髪に手をやり、かつらを取りさりました。
 ポケットからだしたハンカチで、一拭きした、その顔は。
 赤い目、病的に痩せた白い顔。
「ノーマン・ゲイン!」
「諸君。失礼するよ」
 突如、疾風のごとく現われた黒い影が、ノーマンを連れ去りました。
「墨死館へ逃げたぞ」
 誰かが叫んでいます。
 ノーマンを追おうとした人もいましたが、ノーマンたちが屋敷に消えた直後、

 BANG!

 墨死館のどこかが爆発し、館は炎に包まれました。

 ノーマンは姿を消し、犯罪者に拉致されていたアリアさんも無事保護され、調査隊のメンバーは、ぼろぼろになっている人もいますが、全員、墨死館から生還しました。
 何人かのメイドさんも救出されました。

「とにかく、終わったね」
「うん。「シャイニング」」
 あたしとくるとくんが、一息ついているところへ、
「ふふふ。館の炎上は、はじめから決まっていたのよ」
 ブリジットさんと推理研のメンバーが近づいてきました。「It’s elementary my dear〜」
「あれ。あなたは?」
「これを見てください。代表が、ほら」
 マイナさんは携帯をだし、堂々となにかを指差しているブリジットさんと、困った表情の舞さんが写った画像を見せてくれました。
「あなたたち、大活躍だったのね」
「当たり前よ。屋敷に入った途端に犯人がわかったんで、急遽、行く部屋を変更したの」
 なぜ、ブリジットさんは、いつも自信にあふれているのか、あたしは不思議に思います。
「で、どうして館の炎上を知ってたわけ?」
 あたしの質問に、待ってましたとばかりに、ブリジットさん、舞さん、イルマさん、千歳さん、春美さん、ディオちゃん、みらびさん、マイナさんが、みんなで、せーの、
「It’s elementary my dear〜」

Q.E.D.

担当マスターより

▼担当マスター

かわい家

▼マスターコメント

 「墨死館事件」お疲れ様でした。かわい家です。
 新人のシナリオにご参加くださって、ありがとうございました。
 皆さんの書いてくださったアクションは、どれも個性的なものばかりで、読んでいるだけでもとても楽しかったです。
 多くの方の書いてくださったPCの声(推理、思い、個性)を少しでも文字にしたかったので、「V:」システムを取らせていただきました。
 今回は、ミステリーっぽい雰囲気(謎、探偵、トリック、推理、等)を楽しむシナリオでした。
 蒼フロ主流系のシナリオではないので、いろいろ不安でしたが、皆さんのアクションにすごく励まされました。
 ブログ「かわい家 広報部」で、あれこれ書いたりしていますので、よろしければごらんください。
  それでは、またお会いできる時を、少年探偵とともに楽しみにしております。失礼します。