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五機精の目覚め ――紅榴――

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五機精の目覚め ――紅榴――

リアクション


間章


『はい、分かりました』
 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は、上階の一室にて情報処理を行っていた。無線で入ってきた内容を、自前のノートパソコンに落とし込んでいる。
(冷静、狂気、悲哀、無垢、喜楽。失敗作は、感情の制御が出来なかったから、だけなのでしょうか?)
 PASDのデータベースの情報を参照しつつ、彼女は考える。『研究所』の際も同じように情報処理に徹していたため、彼女のパソコンにはワーズワースの研究成果に関するデータがほぼ全て収まっていた。
(大部分が生身だったもの、というのも気になりますね。最終計画も剣の花嫁のような姿だったといいますし……機械ではなく、それまでの技術を有機生命体で再現する、なんて事を考えたのでしょうか?)
 機晶石による魔力増幅回路、及び身体機能の強化。魔導力連動システムによる循環系統。それらを一つの存在に凝縮したとなれば、いかなる事が可能になるのか?
(五機精にはそれぞれ、何らかの能力特化もあるみたいですし、あとはそれが分かれば……)
 五機精の能力特化性については現在も資料室で調査が進んでいる。まだ、それに関する資料は発見されていない。もっとも、『アンバー・ドライ』に関してはガーネットと同行している一ノ瀬 月実が持っているのだが。
 そこへ、地下一階から連絡が入る。
『生存者の方が目を覚まされましたか? はい……』
 落ち着きを取り戻した生存者の話を彼女がまとめる。
『ええ、こちらでも調べてみます。過去のデータからも、何か分かるかもしれません』
 生存者の報告から、事態が急を要する事を彼女は知った。有機型機晶姫、合成魔獣、機甲化兵のデータを調べそれらを伝える。
『こちら上階です。聞こえますか――』


            ***


 遺跡内、その影は動き出した。
「挨拶は済んだ。準備も整った」
 ただ静かに、呟く。

「さあ、そろそろ仕事の時間だ」