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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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4-02 それ行けぶちぬこ風味トロル添え隊!!

 セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)桐生 ひな(きりゅう・ひな)は、前回攻略した砦5の地下より、敵側砦6を目指し、進んでいた……と言うより、転がっていた。
「むきゃああああ(ごろごろごろ)」「いやーん、づばーんですーっ(ごろごろごろ)」
「……その、まあ、太る勢いだけは落としてもらいたいですが……」
 それに付いていく、ファルチェ・レクレラージュ(ふぁるちぇ・れくれらーじゅ)。「ナリュキさん、そろそろ止め頃かと……」
「くしくし、それはもう無理なのじゃっ」
 前回、ぶちぬこ食い倒れ分隊として敵の補給部隊を襲い、奪った食料を食いまくってきたセシリアとひな。
 ナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)は計画通り、その後も二人にタンパク質&炭水化物を中心に与え続け更に特性濃縮ドリンク数ガロン用意した故、たらふく飲むがよいぞぇと言って飲ませ続けてきたのだ。その絶え間ない努力の結果がこれだ。セシリアとひなは皆が見て驚くまんまるべろんちょと化した(大きさはマリーくらい)。御凪などは、これを見て完全に胃を壊してしまった次第だ。
「むきゃああああ(ごろごろごろ)」「いやーん、づばーんですーっ(ごろごろごろ)」
 叫ぶセシリアとひなを、ごろごろ転がしていくナリュキオジョカン。
「ナリュキさん、そろそろ止め頃かと……」
「いやなのじゃ、駄目なのじゃ、にひひ」
「むきゃああああ(ごろごろごろ)」「いやーん、づばーんですーっ(ごろごろごろ)」
「ナリュキさん、そろそろ止め頃かと……」
「駄目なのじゃ、にひひ、と、と、止まらんのじゃっ」
「むきゃああああ(ごろごろごろ)」「いやーん、づばーんですーっ(ごろごろごろ)」
 セシリアとひなは、オジョカンの手を離れ、地下をどんどんと転がっていってしまった。
「……」「……」
 地下を転がる二人に、暗闇の中に浮かぶ恐ろしい瞳がいくつか、見えてきた。
 ヴァレナセレダの地下に生息する、恐るべきトロルだ。
 「……む、あれはトロルかえ。よし、ここは私が(ごろごろごろ)」
 セシリアとひなは、トロルをぜんぶぶっ飛ばした。
 「今春限定のダブルローリングアタックなのですー(ごろごろづばーん)」
 トロルを巻き込んだセシリアとひなは、大きな塊となってそのまま地下を転がり、敵の砦に突っ込んでいったのである。
「……」「……」
 暗闇の中を行く、ファルチェとオジョカン。
 もう、誰もおらず、ずっと先の方から、砦の陥落する音が聞こえてくるようであった。



 一方同じく、砦8の地下を行く、朝霧 栞(あさぎり・しおり)とハルモニア領主の娘・ニケ
 しんとした暗闇が、二人を包む。
「にゃはは。暗いね……静かだね。ニケさんは、騎凛先生のことはどう思うの?」
「そうね。大事な戦友……ね。
 ほんの数週間くらいだったけど、一緒にこの土地を(屯していた盗賊団から)解放するのに戦ったのは、もっと昔のことで思い出に残っているから」
「ふぅん……そうかぁ」
「どうかした?」
「ううん。騎凛先生、心配だよね。あんなことになって……垂、うまくやっているかな」
「えぇ……」
 会話しつつ、しばらく行く二人。
「栞さん」
「ああ、どうやら……」
 暗闇の向こうに、浮かぶぎらつく光。二、四、六……ヴァレナセレダ産トロルの瞳だ。ここに潜んでいることはわかっていた。随分大きいトロルだ。
 オークスバレー解放戦役でも直に戦いはしなかったが、その死骸をいくつか見た垂の記憶を引き出すが、それに勝るとも劣らぬ巨体。
 ひゅんっ。鉄球が来る。
「栞さん、気を付けて。あっ?」
 ニケの剣が弾かれる。相当な怪力。
 栞の氷術が、相手に降りかかる。寒さに強いのか、少しくらいではびくともしない様子。怒りにまかせ、襲いかかってくる。
「こういうときは……逃げるべし。にゃはは!」
「し、栞さんっ」
 ニケの手を引き、一緒に逃げる。でも、後戻りはしない。敵の砦の方角へ、暴れるトロルを引き連れて……
「にゃはは、考えを思いついたんだ。このまま行く」
 小悪魔モードが発動したのか、トロルをいいように挑発しつつ。