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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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4-03 決戦、ハルモニア(2)

 敵の砦に達したナリュキオジョカン(なりゅき・おじょかん)。ドリルを取り出す。
「妾のメイン武器じゃぞー。
 貫いたり抉ったりできるステキな武器じゃよね、にぱぱー♪」
 ファルチェも剣を抜き、行動を開始した。
「ぶちぬこもいるのにゃ……」
「ぶちぬこさん……。どうかいじけないでくださいね。ここからが出番ですよ」
 ファルチェは今回も、光学迷彩の指示を的確に出すと、自らは隠れ身で、砦の上階を目指した。
 あらかたの敵は、セシリアトロルとひなトロルによって潰し倒されていた。
「むきゅうううう(ごろごろ……)」「づばーんきゅーですー(ごろごろ……)」
「大丈夫かのぅ?」
 仲良く目を回しているセシリアとひなを、ドリルで突っつくオジョカン。トロルも一緒に目を回している。

 砦6の指揮官はバシバ(ばしば)だ。
 最上階で、コーヒーを啜っている。
「いた……」初めに指揮を乱すはことは定石(……あらかた倒してしまっているのですけど、ともかく)。ファルチェは隠れ身状態から、不意打ちで指揮官を斬りつけた。
「はっはっは。そうでしょう、そうこなくちゃあ、ねえ?」
 バシバは身を交わした。
 コーヒーカップが床に落ちて割れる。
「ほほほ」細い優雅な髭がくるりと上に曲がって眉の辺りまで伸びている。眉がきゅっと下に下がっていやらしい不敵な笑みを浮かべた。「黒羊の将バシバよ。あなた誰、見ない顔ね? ほほほー、名乗らなくていいわよ。ふむ……忍びかしら。奇襲に失敗した忍びが、剣道50段のあたしに勝てると思って?」
 バシバはフルーレを抜いた。ひゅん、ひゅん。鋭い突き。「さあどこからでもおいでよ?! この砦はあげるわ、けれど、あなたの命はもらうわ」
「くっ……こうなったら正面から」
 ファルチェは、斬りかかる素振りをして、合図を送った。
「何馬鹿な? きゃああああああ」
 光学迷彩で姿を消していたぶちぬこ達の一斉射撃に、撃ち抜かれバシバは果てた。
 剣を仕舞うファルチェ。「……主人の為なら、卑怯という言葉も喜んで受けましょう」
 砦6、制圧。



 砦4、制圧。
「次、このまま砦3へ!」
 一丸となって攻めるハルモニア解放軍の前には、100程の敵勢は敵ではなかった。
 光学迷彩でぶちぬこ達がまず見張りを倒す。
 ぶちぬこ隊はそのまま地上から、ヴァルキリー兵は上空から攻めるという二面作戦の采配をミリィが取った。この完全な奇襲によって、敵は別の砦に知らせることも、狼煙を上げることもできなかったわけだ。
 こうして、砦3、1、と……。(しかし一つ問題があって、この総攻撃のため防備が手薄になっている味方側砦の8、9もまた、マリー率いる敵勢による攻撃を受けて、一時陥落の危機に陥っていた。だがマリーは、結局、砦を解放することになる。そのことは冒頭で語られた。)
「俺が張 飛(ちょう・ひ)だ! 死にたい奴はかかってきやがれっ!」
 馬を駆って戦場に駆けつけたのは、張飛 益徳。(月島 悠(つきしま・ゆう)のパートナーになっている。)
 いきなり戦闘に参加するや、蛇矛をぶんぶん振り回し、敵を蹴散らす。
「張飛よ。あまり先へ進んで暴れるでないぞ? きちんと月島殿らの立てた作戦に則り、暴れるのじゃ」
「おう兄貴。わかっているぜ? だがよ、久々の出番なんだ。
 砦の一つや二つ、俺が手を貸せば簡単だぜ!!」
「ふん……まあそれもよかろう、だがな」
 {SNL9999008#関羽・雲長}。南部戦記にゲスト出演だ。
「へっ。ごちゃごちゃ言ってる暇はねぇ。行くぜ!」
 更に、
「関羽。おまえも、遠慮することはない、この作戦に間違いはなかろう。ここは戦場。思う存分、青龍偃月刀を振るうてくればいいさ」
 {SNL9998979#劉備 玄徳}。南部戦記にゲスト出演だ。
「私としても、誰かの指揮下で戦うというのも久しいこと。この雌雄の剣で、な。
 しかし益徳。おまえの新しい主、月島殿はなかなかの」
「兄者。もう張飛は行ったが……?」
「……皆、もうおらんな。我々も行くか。はぁっ!」

 砦3。
 上空から砦に乗り込むヴァルキリー達。
 ルミナやバルニアらが指示を繰り出すが、バルニアも、それにルミナもわりと突っ込んでいくタイプなので、その勢いや凄まじい。
 この男も……
「Ahan……馬鹿にしか解らない気持ちもあるんよ☆」
 シュレイド・フリーウィンド(しゅれいど・ふりーうぃんど)だ。「しっかし、レイちゃんは何処にいったんだろうねい☆」
「馬鹿だと?」
 隣で敵と切り結ぶバルニア。
「さあ? あんた誰だい、ところで」
 次々と敵を右へ左へ倒していくシュレイドだが、剣は敵をいなすために使っており、相手の得物を足で弾いたり顎を狙った拳で気を失わせたりと、殺めることをしない。それが彼の戦い方であり、それはまた、彼が戦い方を教えるレイディスにも通じるところがあるわけだが。そのレイディスは、今……?
 下の方では、ぶちぬこがすでに入り込み、銃声や爆発音が絶え間なく聞こえている。この砦も、もう、落ちる……



「ああ、出遅れちまったねぇ……」
 フィーネ・ヴァンスレー(ふぃーね・う゛ぁんすれー)も、砦攻めに合流する。そこには、レイディスの姿はない。彼は、どこにもその姿が見あたらなかったのだ。
 まさか、空京あたりにまで迷……
「だったらまだいいんだけどね。どうも、ちょっと嫌な予感がするのさね。
 とにかく、今は考えていても仕方がない。さあ出遅れた分、思い切り暴れっせてもらうとするさっ! おっと。逃がさないよ!」
 砦から出てきた兵を、グレートソードの腹でふっ飛ばす。



 最上階。
 砦3の指揮官は、ドクトナルド(どくとなるど)だ。
「む……敵将か」
 辿り着いたのは月島 悠(つきしま・ゆう)
「ほほほ。来たわね?」細い優雅な髭がくるりと上に曲がって眉の辺りまで伸びている。眉がきゅっと下に下がっていやらしい不敵な笑みを浮かべた。「黒羊の将ドクトナルドよ」(バシバ(黄色)の色違い(紫色)。)
「剣道60段のあたくしに勝てると思って?」
 ドクトナルドはレイピアを抜いた。ひゅん、ひゅひゅん。その突きは鋭い。「さあどこからでもおいでよ?! この砦はあげるわ、けれども、あなたの命はもらうわ」
「ふっ、そんなもの」
 月島は機関銃を向けた。
「アッー??!! ひ、卑怯じゃない貴方、正々堂々としなさいよ、正々堂々と。勝負はフェアじゃないと、おもしろくないわよ?
 さあ、これを使いナ」
 ドクトナルドは、レイピアを月島の足もとに投げて寄越した。
「……。私に、刀剣を使えか。面白い」
 月島は、レイピアを取って眺める。「ところで、おまえはどうする? 私にレイピアを渡したのはいいが、もう一本あるのか?」
「ほほほ。お馬鹿さんね♪ あなたみたいな人、好きよ?」
 ドクトナルドは壁に飛びつくと、スイッチを押した。
「はっはっはーっ。吊り天井だぁよ、押し潰されて、死んじゃいナ!」
「何?!」
 刃の突き出た天井が、凄まじい勢いで下降し月島に迫る。「ははは、言ったろう、あたくしは剣道60段だと!!」
「悠くん!」
 最上階の扉に、麻上 翼(まがみ・つばさ)の姿が。
「翼……来るな!」
「ほーほほほ! 死ね、死ねィィィ!!」