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ホレグスリと魂の輪舞曲

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ホレグスリと魂の輪舞曲

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 終章
 

 空京病院のロビーにて。
「あっはっはっ、不自然な程にうまく行きましたね。これでホレグスリも安泰でしょう!」
「ハツネ先生は自分のプライドにかけて、一度言ったことは撤回しないだろう。あとはエリザベート様に報告するだけだ! さすがむきプリ君、ホレグスリへの執念は凄い!」
「ホレグスリが……何? エルさん……」
「え? だから、ホレグスリをハツネ先生に……はっ!」
「今度は『ハツネ先生』? やっぱりナンパしたんだね! エルさん!」
 ケイラは、メイスを手に全身から恐ろしいオーラを出していた。気のせいか、メイスも『やっと出番が来ましたか!』と喜んでいるように見える。
 ……気のせいだ。
「違う! 違うぞケイラ! ボク達はホレグスリを守ったんだ!」
「ホレグスリなんて守ってどうするのーーー!」
 ぼぐっっ!!!
 ……………………
「う、ううっ……!」
 エルは、暗転する意識の中でクロセルに、そしてロビーにいる患者達に言った。
「ホレグスリを護ろうとする同士諸君……もし、もしボクがいなくなったら、金の彫像を校長の隣に配置して欲しい。せめて彫像となって……校長の隣で、輝き続けるのだ……あと、伝言よろしく……」
 そのままエルは、看護士達に運ばれていった。

「ファーシーさん」
 騒動の治まったロータリーに戻ってきたファーシーは、ザカコに声を掛けられた。
「これから、空京の電波塔に行きませんか? 世界樹には敵いませんが……空京で一番高い展望台があります。そこから景色を見るのも良いものですよ」
「ルカルカ達、ホントはあのテラスで……ファーシーに夕日を見てもらいたかったの。太陽は世界に1つだけ。角度が変わっちゃうのは残念だけど……行ってみない?」
 時はもう夕方。断る理由など何処にも無くて。
「うん! ここにいるみんなで、行こ!」

 くっきりとした輪郭を保ちながら、夕日が地平線へと沈んでいく。
「綺麗ねー……」
「キレイであります!」
「電波塔は初めてなのですぅ」
「いつでも来れると思うと、意外と来ないものですね」
 ファーシーとスカサハ、メイベルにフィリッパが感想を漏らす。
 景色に見入るファーシーに、ルカルカは訊いた。
「ファーシーは、これからどうするの? 学校? それとも村で暮らす?」
 沈む夕日からは目を逸らさぬまま、ファーシーは答える。
「……とりあえず、学校、かな。勉強したいこともいっぱいあるし、いろんな冒険も出来るって聞いたわ。わたしはずっと、あの街から出たことがなかった。出ようとも思ってなかった。5000年前……みんなが……ルヴィが守ってくれたことは凄く嬉しいし、毎日楽しかったけど、自分の世界だけで完結していたような気がするの。世界樹から見たあの景色、そして、空京。いっぱいいっぱい知らない世界があって、知らない人達がいろんな事を考えて、体験して、暮らしている。そういうことに触れていきたいな。いつか……機晶技術を沢山の人達に伝えられる人になりたい」
 その答えを聞いて、ザカコはやれやれと首を振って苦笑いする。
「……人が皆ファーシーさんとルヴィさんみたいな関係だったらこんな騒ぎも起きないんですけどねえ」
 ルカルカは一度目を閉じ、開くと、凛とした口調で言った。
「――私達は、平和を守る為に戦うわ」
 軍人は民間人を守るのが役目。それが、自分の選んだ道。
「村の外には町が、町の外には国が、その向こうには世界がある。私達は、何所まで行けるかしらね」
 ルカが楽しそうに言うと、ルカルカにも笑顔が戻った。
「ねえ、ファーシー、記念写真撮らない?」
 カメラを取り出し、朔達も呼んで窓際に集まる。夕日が写るように左右に分かれて。
 ファインダーを覗いて全員が入っていることを確認すると、ルカルカはファーシーに走り寄った。
「これからも仲良くしてねっ」
 首筋に抱きついた時、シャッター音がぱしゃりと鳴った。

 クエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)を空京駅まで送ったぷりりー君は、無事に落ち合えたサイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)からロッカーの鍵を受け取った。
「さて、これからどうしようかな……」
 2人と別れ、ロッカーへ向かう道すがら、ぷりりー君は考える。
 布告が変更されようとしていることなど、予想もしていなかった。