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 エピローグ 蒼空学園編

 1、命の危険を伴う薬を飲むか
 2、果実でバーベキューをしてキスをするか
 3、1週間ほっとくか

 その情報がHPに追加され、各校に伝えられる。ツァンダの街のスピーカーからも放送が流れ、事態は収束しようとしていた。
 蒼空学園の校庭では、焼きフルーツ大会が行われようとしていた。勿論、例の薬も運び出され、希望者に配布される――予定なのだが。
「…………」
 生徒達は、未だ変態行為を続ける巨熊 イオマンテ(きょぐま・いおまんて)を見上げて途方に暮れていた。まずコレを何とかしないと、焼きフルーツ大会は開けない。
「どうする……?」
「これは強制薬コースだろ……」
 何せ、変熊 仮面(へんくま・かめん)の姿が何処にも見えないのだ。キスをさせることは難しそうだったし、1週間もあのままなど有り得ない。
「変熊殿の居場所なら、知ってるでござるよ?」
 そこに、椿 薫(つばき・かおる)がやってきた。浮かない顔で、一言。
「服を着て、女子とカフェに居るでござる」
「「「「「「服を!?」」」」」」」

 方針が決まると、男達は20人程でイオマンテまで飛んでいって動きを押さえて何とか口をこじ開けた。女達は、笑顔で変熊に声を掛け、難なく薬を突っ込む。
「いやだー! いやだー! 戻る薬なんて飲むの嫌だー!」
 駄々っ子のようにじたばたとするイオマンテにぶっとばされながらも、皆は必死だ。
「僕が一番上手にイオマンテを使えるんだ! ……うっ!」
 イオマンテの起き上がりかけていた体が力を失い、どどーん! と校庭に地響きが起きた。

「今の地響きは……? ……えーと、どりどりー、どこに行ったんですかー? もう果実突っ込んだりしませんから出てきてくださいー」
 神楽月 九十九(かぐらづき・つくも)は、蒼空学園の周囲を装着型機晶姫 キングドリル(そうちゃくがたきしょうき・きんぐどりる)を探して歩いていた。少し心配しているようだ。
「……あっ!」
 そして、九十九は見つける。
 蒼空学園の建物の陰で、程良くミキシングされた果実のジュースを放射しているキングドリルを――
 キングドリルは、気絶していた。

「わ〜 ホントに入れ替わるんだぁ〜!」
 遅まきながら入れ替わった真奈は、イオマンテの周り――つまり校庭を全力疾走していた。
「真奈の身体になったら……やっぱ走らなきゃね!」
「ミルディ! あんまり走ると戻った後に私が……!」
 ミルディアが止めようと、真奈を追いかける。
「……あら?」
 何だか走るのが気持ちいい。身体が軽く、パワーに溢れていて何でも出来そうだ。
「さすがミルディですわ! 待ちなさーい!」
 しかしそう時が経たないうちに、真奈は捕獲された。
「ハァハァ……この身体疲れすぎ……!」
 抑え込まれた状態で、真奈は言った。
 ただ、簡単にハイになれるのもイイかも……♪

 環菜は、絆魂の実を持って校長室に向かっていた。
「解決して良かったです。特にひどいことも起こりませんでしたし……」
 ……そうだろうか。
「うおおおおぉぉぉ!!!!」
 正面から、鳥羽 寛太(とば・かんた)が走ってくる。環菜の前まで来て急ブレーキをかけ――
 握り締めていた天下の宝刀『マッキー』の蓋を開ける。
 きゅぽんっ!
「……?」
「千載一遇のチャンス!」
 しゅしゅしゅしゅしゅっ、と環菜の顔の前で手を動かすと、そのまま逃げるように脇をすり抜け、逃げていった。
「……何でしょう……?」
 首を傾げながら、環菜は校長室に入っていく。
「環菜さん……果実、持ってきました。これで、いいですよね?」
 仕事をしていたルミーナは顔を上げ――こめかみを、ぴきっと引きつらせた。
「……それ、誰にやられたの……?」
「はい?」
「誰にやられたかって訊いてるのよ! 鏡、見てみなさい!」
 環菜の額には……『デコっぱち』とはっきりと書かれていた。

 購買ではキスで元に戻ったひなと沙幸が、すっぱだかに大きなリボンをコーティングして、透明なプラ板にサンドイッチされていた。『写真あります』の張り紙がされて、隣では同じ格好の写真をナリュキと美海が販売している。
 購買には、スケベ男達が殺到していた。
「ふふ……写真の売上倍増ですわよ」
「負けたのだから当然の罰ゲームじゃな。晒し者の刑じゃ」
「こんなの聞いてませんよ〜」
「いつの間に売ってたの、ねーさまー」
「ほっほっほっ!」
 プラ板の間で抗議する声もなんとやら、である。

 翌日――元に戻ったイオマンテは目覚めた途端に叫んだ。
「うおおっ! 筋肉痛が!」
 そこに、いつも通り「ピー」を晒した変熊仮面がやってくる。

「こら! なぜ知らない女からこんなにメールが来てるのだ!」