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君が私で×私が君で

リアクション公開中!

君が私で×私が君で
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リアクション

 一仕事終えたルミーナは、分厚い書簡に封をすると顔を上げた。
「ルミーナ、これを葦原明倫館に届けるように……ああ、居ないんだったわね」
 仕方なく立ち上がり、広く静かな校長室を出る。だが、しばらく歩いた所で何者かの気配を感じて飛び退った。だが、ルミーナの身体では一瞬反応が遅れ――
 気付いた時には後ろから抱き締められていた。真横から顔を近付けてくる。
「ルミーナ……」
 熱い吐息を吐くルークが名を呼んだ時、シリウスが火術を放った。仮に避けられてもルミーナには被害が及ばないようにコントロールされている。
「やめんかこの変態吸血鬼が!」
「おっと。それじゃあね、校長センセ」
 ルークはそれをうまくかわした。
「待て!」
 去っていくルーク達を見送るルミーナは、焦げた廊下の一部を確認してメモを取ると、2人の顔をしっかりと脳裏に刻み込む。そして、ルミーナの身体とはいえ不覚をとってしまったことに苛立ちを感じた。
「どうにも舞い上がりすぎているようね。薬を早く完成させないと校舎にも被害が及びそうだわ」
 携帯電話を取り出して、陽太に連絡を取ろうとする。そこに、他の女の子と話していた優斗がやってくる。演技は完璧で、彼女は優斗とリョーコが入れ替わっていることに気付いていなかった。だからこそ、子供をナンパしたあの出来事で絶賛評価だだ下がり中である。
(ふふ……環菜ちゃんは、どんな反応をするかしら……)
 ラブ軍師を自負している『リョーコ』は、優斗の男の子らしいモノで自分の策がどれくらいの効力があるのか、ナンパを繰り返してそれを確かめていた。ルミーナの目前まで来て、笑顔を浮かべる。
「ルミーナさん、いろいろあってお疲れでしょう。僕とお茶でもしませんか?」
 隙あらば密着し、モノを発揮しようとする優斗だったが――
 んなことが出来る訳もなく。
 いい加減イライラしていたルミーナはバニッシュを使った。続いて、ブロックバスターで殴ろうとする。しかし、バニッシュの効果が収まった時には、優斗の姿は消えていた。
 まんまと逃げおおせた優斗は、ラブセンサーをチェックする。
(環菜ちゃんにも反応しなかったわね……優ちゃんってモテないのかしら?)
 やりかたに問題があると思います……。

 ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)音羽 逢(おとわ・あい)は、それぞれ着替えを手に女子更衣室に向かっていた。逢はメイド服、ナナは執事服を持っている。
「ちと違和感はあるが、初めてのメイド服の着心地は中々に感慨深い物があるで御座るなあ。しかし、メイド服では動きにくいのも事実。執事服でも良いで御座るが……いつもの服では駄目で御座るか?」
「ナナの外見で逢様の服装では、お知り合いに衝撃が強すぎます」
「そうで御座るか……?」
 ちなみに、逢の普段の服装とはホルターネックのハイレグ衣装プラス鎧である。
「ナナも逢様の身体とはいえ、メイドをするにはいささか不都合です。入れ替わりに関しては何も問題無いのですが」
 たとえ外見が変わってしまったとしても、見た目は逢、心はナナ、真実はいつもメイド。まったく問題ない。
「であるな。拙者はナナ様に仕える武士というのは不変の事柄故。最初は驚いたで御座るが……」
 更に、ナナの身体になってしまうなんて恐れ多い……というか幸福! とか思ってしまったわけだが。
「常の如く、外見が変わろうと動揺することなく、淡々とメイドとして行動する。それが、ナナなのです。逢様も戸惑わずに堂々としていればいいのです」
 言いながら、女子更衣室のドアを開ける。
「…………」
 途端に、逢の足が止まった。更衣室では、ひなが沙幸の胸をわし掴みにしている所だった。2人共制服のスカートに、上半身はブラ1枚だ。ロッカーが背景になるようにカメラが設置されている。
「あら、お着替えですか? 折角ですから、ご一緒に1枚いかがです?」
「拙者は別に構わんが……ナナ様?」
 ナナは沙幸の誘いに平然としていたが、無表情の逢を見て得心したように頷いた。逢は少々戸惑っているようだ。
「遠慮しておくで御座るよ。今日は忙しいのでな」
「そうかえ? なかなか良い乳を持っておるのに残念じゃな……くしし」
 そう言って、ひなは手をもにゅもにゅと動かす。沙幸は官能的な声を出した。撮影対決の衣装の中では、まだ健全の範疇に入るものの筈なのだが……。
「さすがは全身性感帯少女ですわね。この身体、少々感じすぎてしまうのが難点ですわ」
 やはり、着る者――いや、やることによるらしい。
「ナナはメイドの仕事がありますから。申し訳ありません」
 逢はそこで、猫カフェで身に着けた営業スマイルを浮かべた。すぐさま表情を消し、早く着替えようと、ハイレグを脱ごうとする。
『絶対捕まえてやるんだからねっ!!』
 更衣室の外から、ドタバタと騒々しい音と声が聞こえてきた。高めで女の子と思えないこともないが、紛れも無く男の声だ。爆発音や、派手な破壊音もしてくる。
(入れ替わりでトラブルも起きているようですね……)
 音から被害を想像し、壊れた備品を安全に片付ける方法を考えながら服を脱ぎ、メイド服のシャツを羽織る。
 ドアが開いたのは、その時だった。
「あの、助けてくださいっ! キレた変質者に追われてるんですっ!! おおっ!?」
 濡れたスク水を着たその女子は、更衣室の中を見て目を輝かせた。

 そのちょっと前。
「おい! 周りの物とかが片っ端からぶっ壊れてんぞ!」
 レミは追いかけてくる周に叫びながら、廊下を必死で走っていた。武器を振り回す周は、一応自分の通ってきた道を振り返る。
(あ、結構スゴいけど……)
「まぁ、周くんの仕業になるから特に問題ないよねっ、えへへっ!」
「何だよそれ!」
 なんて恐ろしいことを言う奴だ。
 しかし、レミもただ闇雲に走っていたわけではない。女子更衣室はもうすぐそこだ。
(男子禁制の楽園まで逃げ切れば、俺の体じゃ入れまいっ!!)
「絶対捕まえてやるんだからねっ!!」
 恐怖のソニックブレードが迫る中、更衣室の表示板を見て、急いで駆け込む。
「あの、助けてくださいっ! キレた変質者に追われてるんですっ!!」
 言ってからキレた変質者=自分になることに気付いたが、目に入ってきた素晴らしきかな光景にそんな瑣末な事は吹っ飛んだ。
 ブラ1枚のひな達に、着替え中の逢とナナ。流石、女子更衣室である。彼女達は校内でスク水という奇怪な格好に眉を顰め――最後の「おおっ!?」という下心丸出しのその声に、ナナがハルバードでチェインスマイトを繰り出した。
「ナナ様には指1本触れさせんで御座る」
「うわっ!」
 極狭い空間が災いして逃げる場所が無い。
「中身は周じゃな……」
 ひなが言う。もう、ばればれだった。シャツを着終わった逢も、野分を持ってふるふるとしている。フルボッコ確実かというところに、周がやってきた。いつのまにか武器を光条兵器のバスタードソードに持ち替えている。
「周くん、覚悟しなさーい!!! あ、それあたしだけど、遠慮なくやっちゃっていいから!」
 身体の持ち主の了解を得て、ナナ達が武器を振りかぶる。
「はあっ? バカかおま……っ!」
 こうして、1人のスケベは粛清された。

 そして、スケベではないが無神経な発言をした為に鬼ごっこをするハメになったアイナは、3階の化学実験室に向かっていた。
「あそこに、ルミーナさんがいるはずだ!」
 アイナ(本物)はルミーナに憧れている。彼女に説得してもらえば、アイナ(ほんも……略)も凶行を止めるかもしれない。
 何より。
(ハッピーエンドになる前に死ぬわけにはいかないぜ!)
 進行方向に、環菜とファーシーの後姿が見える。用事でもあったのか、実験室に戻る途中のようだ。
「ルミーナさん!」
 振り向いた環菜は、ただならぬ様子のアイナを正面から受け止めると驚いた、しかし柔らかい眼差しを向けてきた。その間にファーシーも向きを変える。
「アイナさん、何があったのですか? そんなに慌てて……」
「俺は隼人です。匿ってください! よく分からないんですが、アイナを怒らせてしまったようで……」
「また不用意に失礼な事を言ったのでしょう。僕は、これまでにそういう場面を何度も見てきましたから」
「優斗!」
 いつのまに来ていたのか、環菜達の背後に優斗が立っていた。彼は微笑むと、ファーシーの前に出て、そこに常にない色を乗せて誘うように言う。
「ファーシーさん、それでは移動も大変でしょう。僕が補助をしてさしあげますよ。勿論、今日だけじゃありません。これから、ずっと毎日付き添いますよ」
「え? ど、どうしたの?」
 ナンパなどされた事の無いファーシーは、戸惑って声を上擦らせた。訳が分からないながらも、その視線にどぎまぎとする。何だかいつもと違う。友達として、単純な親切な言っているのではないということは何となくわかった。
「優斗! 彼女に大事な人がいるのは知ってるだろう!」
(あ、そうなの?)
 優斗の中の人であるリョーコにとっては初耳である。慌てるファーシーににっこりと笑顔を向けてこっそりとラブセンサーを見てみる。その針は、わずかな反応を示していた。
(あら♪)
 それで満足すると、優斗はターゲットを環菜に変えた。
「そうですよね、すみません。……ああ、ルミーナさんは今、フリーでしたよね。僕と……どうですか?」
「いいかげんにしろ! さっきから、何トチ狂ったこと言ってんだ!」
 激昂したアイナがヘキサハンマーで攻撃する。
(ルミーナちゃんのことになると熱くなって……ふふ、かわいいわね)
 それを女王の楯で防ぐと、もう少しからかってやろうかと優斗はブライトグラディウスを出した。しかし、そこで環菜が割って入る。
「兄弟で争ってはいけませんわ。わたくしは気にしていませんから、やめてください」
「ルミーナさん……」
 途端に申し訳無さそうな顔になり、アイナは身体から力を抜く。それを見て、優斗も武器を収めて踵を返した。
「では、僕はこの辺で。他にもやることがありますので」
 思わせぶりに言って去って行く彼に、アイナは眉を顰めた。
「まだ、何かやる気なのか……?」
「風祭さん、先程の話ですが……隠れなくていいのですか?」
「隠れ……? あっ!」