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学生たちの休日5

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学生たちの休日5
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「ん? なんだか騒がしいな。こういうときは絶対にやっかいごとが起きているに決まっている。巻き込まれてたまるか」
 書店への近道をしようと裏通りに足をむけかけた橘 恭司(たちばな・きょうじ)だったが、バタバタとそちらにむかって走っていく者たちを見て、あわてて表通りに引き返した。
「待ちやがれ、怪しい奴らめ!」
 全身を蒼銀のパワードスーツで固めた篠宮 悠(しのみや・ゆう)が叫んだ。いや、町中で完全武装している篠宮悠の方がよっぽど怪しいのではないかと思えるのだが、それはここ空京である、頻繁であるとは言わないものの、珍しくはない光景であった。
「まったく。せっかく工具とかいろいろ買えると思ったのに、悠! 真理奈! 懲らしめてあげなさい!」
 逃げる黒いローブの男たちを指さして、瀬良永 梓(せらなが・あずさ)が叫んだ。機械部品の店で見かけた男たちの持つバッグからのぞいた部品が爆弾の物であると見抜いたのは彼女だ。
「くそ、どこでもいい、適当な店にそいつを投げ込め」
 男の一人が、銃を取り出して叫んだ。バッグを持った男たちが走って先に行く。
「私たちに、武器をむけるとは……」
 素早く光条兵器の散弾銃スターバニッシャーを取り出した真理奈・スターチス(まりな・すたーちす)が、弾幕援護で威嚇する。光弾で銃を吹っ飛ばされた男が、一瞬怯んだが、すぐに短刀を取り出して構えた。
「真理奈、フラガラッハを!」
 篠宮悠に呼びかけられた真理奈・スターチスが、持っていた光条兵器を篠宮悠にむかって投げた。その手を離れた瞬間に光につつまれた散弾銃が姿を変え、大剣の柄となる。
「召刀フラガラッハ! 絶刀戦士パラフラガ、推参!!」
 高く右手をさしあげた篠宮悠が、クルクルと回転しながら落ちてきた大剣の柄をピタリと受けとめた。その瞬間、青白い光条が閃光とともにのびて二メートルを超える大剣の刀身を形作った。
「また、勝手な御当地ヒーローか。どいつもこいつも……」
 ぼやきながら、男が突っ込んでくる。
「お前たちのその悪意、両断する!」
 迎え撃つ篠宮悠が、大剣を一閃させた。人間以外の物が真っ二つにされ、連続技として叩き込まれたドラゴンアーツの衝撃で男が吹っ飛んだ。
「真理奈、その男を縛りあげておけ。梓、追うぞ。爆弾をなんとかしないと!」
 そう叫ぶと、篠宮悠は逃げた男たちを追った。
 仲間の作ったわずかな時間のおかげで、男たちが反対側の大通りに逃げ込もうとする。そこへ、運悪く女性の一団がやってきた。
「ちょうどいい。人質にして、爆弾をセットする時間稼ぎを……」
 男たちは短刀を取り出すと、人質と定めた女の子たちにむかって突っ込んでいった。
「まずい、人質を取るつもりか……。って、あれは! いや待て、その人質はやめておけ! 悪いことは言わねぇからよ! お前たちの身のためだぞ!!」
 その様子を見てとった篠宮悠が大声で叫んだ。何を言っているのかと瀬良永梓が不審に思う。心配するなら、犯人ではなく、人質になろうとしている女の子たちの方ではないのだろうか。
 
「そこの女、動くな!」
 ローブの男たちが叫んだ。
「ん? 誰よ、あなた?」
 指をさされた篠宮 真奈(しのみや・まな)が、自分たちのことかと聞き返した。
「おとなしく人質になってもらおう」
「ほうほう。あたしたちを人質扱いしようってわけね。いい度胸してるじゃない! あたしに勝てたら人質なり何なりするがよいわ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァ!!!」
 たいして話を聞きもせずに、篠宮真奈が、男たちをボコボコに殴りだした。
「だから言わんこっちゃ……」
 手加減を知らない自分の姉の姿に、篠宮悠が呆然と立ちすくんだ。
「真奈姉様に変なことしちゃダメですー!!」
 篠宮真奈が戦いだしたのを見て、サージュ・ソルセルリー(さーじゅ・そるせるりー)も無茶苦茶にそばにいる男たちを殴り始めた。
「待て、真奈姉ぇ! バイオレンスもそのへんにしとけ! そいつら、爆弾を持って……」
「爆弾って、これですか?」
 モリガン・バイヴ・カハ(もりがん・まいぶかは)が、持っていた包丁でスパッと紙袋を両断した。中から、時計とダイナマイトで作られたなんとも簡単な作りの爆弾が転がり落ちる。
「梓、頼む」
「ううっ、大丈夫かなあ」
 顔の形も分からなくなった男たちに本の角で止めを刺している著者不明 エリン来寇の書(ちょしゃふめい・えりんらいこうのしょ)のそばに恐る恐る近づくと、瀬良永梓は爆弾を確認してケーブルを切断した。トラップのない単純な爆弾で助かったというところだ。そうでなければ、今ごろはここで吹っ飛んでいたところだろう。
「あら、そこの仮面、誰かと思えば悠? 久しぶりじゃない! ……にしても何その格好ー!! おっかしいー! あはははっ!」
 今さらながらにパワードスーツ姿の篠宮悠の声に気づいて、篠宮真奈がお腹をかかえて笑いだした。
「ねぇ、何か真理奈そっくりの人が滅茶苦茶にしばいてたけど、いったい誰なの?」
 瀬良永梓が、篠宮悠に訊ねた。
「姉だ。と言うことで逃げるぞ」
「えっ?」
 あわててその場を立ち去ろうとする篠宮悠に瀬良永梓が戸惑っていると、つかつかと篠宮真奈が近づいてきた。
「ちょうどいいわ。悠、荷物持ちしなさい。パワードスーツ着てるんだから、それぐらいできるでしょ。せっかくいろいろ生活必需品買い集めたのに、なんか今のでずいぶんだめになっちゃったから、買い直しよ」
 有無をも言わさず、篠宮真奈が言った。
 そこへ、真理奈・スターチスが、空京警察を連れてやってきた。
「はじめまして」
 互いのパートナーたちが初対面の挨拶をしている間、篠宮悠は面倒くさい事情聴取を一手に押しつけられ、状況から過剰防衛一歩手前というありがたくない評価をもらったのだった。その後、買い物から戻ってきた女の子六人の荷物をすべて運ばされたのは言うまでもない。