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学生たちの休日6

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学生たちの休日6
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    ★    ★    ★
 
「うー、まだカレー臭いのだよ」
「早く、ハーブお風呂に浸かって、臭いを取るですぅ」
 アーサー・レイスによってカレーまみれにされた咲夜由宇と咲夜瑠璃は、入浴用のロングタオルを巻いた身体からむきだしになった腕をクンクンと嗅ぎながら、臭い消し用のハーブ風呂を探して大浴場の中を歩いていた。
 打たせ湯とか、真珠風呂とか、電気風呂とか、洞窟風呂とかはあったのだが、肝心のハーブ風呂が見つからない。途中、五右衛門風呂のそばでザンスカールの森の精 ざんすか(ざんすかーるのもりのせい・ざんすか)が倒れていたが、湯あたりしたのか、誰かに出汁を取られたのかは謎であった。
「こらこら、動かないでくださいよ」
 タライ風呂では、ラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)が、クロ・ト・シロ(くろと・しろ)を洗っている最中であった。
「ちょー、待て、くすぐったいじゃねえか」
「うるせーな。くすぐってえなら引っ込んでろ」
「お前は平気なのかよ。俺たち一心同体だってえのに」
「オレはそんなにやわじゃねえ」
「だから、同じ人間だろうが!」
 泡だらけになったクロ・ト・シロが、ほとんど一人漫才を繰り広げる。
「えーい、おとなしくしなさい」
 あちこち引っかかれたりしたラムズ・シュリュズベリィが、猫の姿のクロ・ト・シロの頭の上からお湯を滝のように注いだ。
「うぎゃぎゃぎゃあ!!」
「な、何しやがる! ごぼ、げぼ……」
 タライの中でクロ・ト・シロがおぼれかけてもがく。
「はい、石鹸は落ちましたから、乾かしに行きましょうか」
 クロ・ト・シロが入ったままのタライの水を切って持ちあげると、ラムズ・シュリュズベリィがサウナの中へと運んでいった。
「うぎああああ」
「熱い熱い熱……」
 ぱったりと、クロ・ト・シロが静かになる。
「うん、やっと静かになりましたね」
 毛皮をこすって乾かしてやりながら、満足そうにラムズ・シュリュズベリィが言った。
「さて、今度は私の方がゆったりとさせてもらいますか」
 そこそこにサウナを出ると、ラムズ・シュリュズベリィが流れる風呂にタライを浮かべた。それにつかまるようにして、自分も湯船に寝そべって流されていく。流れに身を任せのんびりしていると、近くをザンスカールの森の精ざんすかがゆっくりと流れていった。
「平和ですねえ」
 ラムズ・シュリュズベリィがのんびりしていると、そのそばを咲夜由宇たちが走り去っていった。その後ろからは、すっぽんぽんの朝野 未沙(あさの・みさ)が二人を追いかけてくる。
「お風呂では、水着とかタオルを巻いてお湯に入るのはルール違反なんだよー。あたしが剥ぎ取ってあげるよー」
「いやですぅー、痴女ですぅー!」
 必死に胸元でタオルを握りしめながら、咲夜由宇たちが逃げていく。
「誰か助けてなのだあー」
 ジャバジャバと大浴槽のお湯をかき分けて進みながら、咲夜瑠璃が助けを求めた。湯気のむこうに、人影が見える。
「よし、助けてやろう」
 言うなり、湯気の中から現れた国頭武尊が、電光石火の早業で二人のタオルを引き下ろして剥ぎ取った。
「きゃー!!」
 あわてて咲夜由宇と咲夜瑠璃がお湯の中に身を沈めて隠れる。そのまま、お湯の中を潜って、二人は逃げだしていった。
「剥ぎ取りたてのタオル二枚ゲットだぜ!!」
 高々とタオルをつかんだ手を突きあげながら、パンツ番長こと国頭武尊が叫んだ。
「ナイスなんだもん」
 二人を追いかけてきた朝野未沙が、国頭武尊を褒め称えた。
 どこか相通じるところがあったのか、湯船の中に下半身をつけた姿で、両雄が互いを見つめあった。とりあえず、国頭武尊は子細に脳内録画したが、男に興味のない朝野未沙は即座におぞましい国頭武尊の裸を記憶から消去した。
「風呂に入るのに、身体を隠すのは邪道!」
 奇しくも、二人の口から合い言葉のように同じ言葉が飛び出す。
「何を騒いでいるのでしょうか」
「さあ、また馬鹿が騒いでるんじゃないの?」
 もうもうとたちこめる湯気のむこうから、女の子たちの声が聞こえた。
「あなたたちも、お風呂で隠すなどという邪道を……」
 すかさず脱がそうと、朝野未沙が近づく。
「えっ?」
 泡だらけのリン・ダージと、彼女の小さな背中を流していた佐倉 留美(さくら・るみ)が何ごとかと振り返った。もちろん、二人ともしっかりとすっぽんぽんである。
「よ、よろしいんだもん……」
 まじまじと二人を見つめながら、朝野未沙が言った。
「よろしくなどない。まずは裸眼撮影だ!」
 国頭武尊が、ジーッとリン・ダージたちを見つめながら言った。
「あー、おぱんつ番長!!」
 ツインテールを下ろしていたリン・ダージが、やにわに立ちあがって国頭武尊を指さした。すっぽんぽんなのだが、佐倉留美に洗ってもらっていた途中なので、濡れた長い髪はスレンダーな身体にぴったりはりついてるわ、あちこち泡だらけだわで、まるで白いスクール水着を着て水からあがったばかりのようだ。よほど、いつもの方がエロい。
「なんだか、残念な物を見た気がする。微妙に嬉しくない……」
 溜め息をついた国頭武尊が、咲夜由宇たちから剥ぎ取ったタオルをだきしめる。
「やはり、俺は中身よりもパンツに愛情を感じるのか……」
 意味なく感慨深げに国頭武尊が言った。
「殺す!」
 自分としては凄く色っぽいと思っているリン・ダージが殺気だった。
 気をとりなおした国頭武尊が、佐倉留美に期待する。
 だが、すっぽんぽんだというのに、なぜか湯気が邪魔をして肝心の所が見えない。まるで、続きはブルーレイを買ってから見てねと言わんばかりの怪現象である。
「見えなくても、揉んでしまえばいいんだもん」
 微妙にリン・ダージの洗濯板をスルーしつつ、朝野未沙が手をワキワキさせながら佐倉留美を見据えた。
「あら、揉まれるくらいなら、先に揉みますわ」
 対抗心まる出して、佐倉留美も手をワキワキさせる。
 洗い場と湯船の中とで、四人が睨み合った。
「そこまでよ。全員おとなしくしなさい」
 そこへ、咲夜由宇たちに案内されてきた天城 紗理華(あまぎ・さりか)アリアス・ジェイリル(ありあす・じぇいりる)がやってきた。
「あれです、痴漢と痴女ですぅ」
 脱衣所で新しい貸しタオルを手に入れた咲夜由宇が、国頭武尊たちを指さして叫んだ。
「貴様ら、風呂で水着を着ているなどルール違反だ。まず、お前たち自身を取り締まれ!」
「そーよ、そーよ」
 国頭武尊と朝野未沙が、いかにも正論だと言わんばかりに叫んだ。
 若草色の薄いスリップのついたイルミンスール魔法学校公式水着を着た天城紗理華とアリアス・ジェイリルは、珍しくすらりとした肢体を顕わにしている。
「いいでしょう、脱いだ水着で顔が腫れるまでひっぱたかれたいのなら……」
 言いつつ、アリアス・ジェイリルが肩紐に手をかける。
「敵を喜ばせてどうするのよ! こんな所で、いつものずぼらは出さない!」
 スパーンと、天城紗理華がアリアス・ジェイリルをひっぱたいた。
「チッ」
 期待した国頭武尊と朝野未沙が舌打ちした。
「そのまま消し炭になりなさい! ケーナズ、ソウェル!!」
 天城紗理華のルーンと共に、ファイアストームが湯船に吹き荒れた。
「こんなこともあろうかと、防衛計画は完璧なんだもん」(V)
 ほくそ笑む朝野未沙の隣で、国頭武尊がサイコキネシスで噴きあげたお湯を自分たちにかけて炎を防いだ。
「さあ、どうかしら。二人を上にあげさせないで!」
 天城紗理華が叫んだ。直後に、国頭武尊たちの悲鳴があがる。
「あちあちあち……、熱湯だこれ!!」
 ファイアストームで熱せられた風呂のお湯が熱湯に変わったのだ。
「あつーい!」
 あわてて二人が湯船から飛び出そうとする。
「えーい」
 それを佐倉留美がランドリーで押し流し返した。
 やがて、悲鳴が聞こえなくなる。
「おとなしくなったわね。連行しなさい。あなたたちも、タオルぐらい巻きなさい。いつまた、第二第三のパンツ番長が現れるか分からないんだから」
 天城紗理華が、ゆであがった国頭武尊たちをアリアス・ジェイリルに捕縛させた。そのまま、リン・ダージたちを連れて脱衣所にむかう。
「あちちちち、なんで急にお湯が熱くなったんだ!?」
 途中で、流れる風呂でのんびりしていたラムズ・シュリュズベリィが、あわてて水を被っている姿があった。
「あー、あたしの服が荒らされてる!」
 自分の脱衣籠がひっくり返っているのを見て、リン・ダージがあわてた。調べると、パンツがない。
「きっと、こいつの犯行だわ」
 キッと、国頭武尊を睨む。
「後で追求しておくから、とりあえず購買で新しい下着を買っておくように」
「うううっ……」
 天城紗理華に言われて、悔しそうにリン・ダージが唸った。
「スースーするわね」
 さすがに、スカートのあたりを気にしながら、服を着たリン・ダージが言った。この格好で購買まで行くのはちょっと難しい気もする。
「チャイを呼んで買ってきてもらおうかなあ……」
 ごそごそと携帯を取り出しながら、リン・ダージだつぶやいた。
「大丈夫ですわ。わたくしがとっておきの歩き方をお教えしましょう」
 マイクロミニスカートの裾を完璧にゆらしながら、佐倉留美が言った。