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七草狂想曲

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七草狂想曲

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実食

 
 
「俺たちは勝った! いただきます!!」
 高らかな処理宣言と共に、朝霧垂が七草粥を頬ばった。
「うまい!」
 まさに、自分で作った奇跡の味である。
 
    ★    ★    ★
 
「状況終了後の食事は、また格別であります」
「うむ、今日は頑張ったからのう。遠慮なく食べようぞ」
 パワードスーツを脱いでくつろぐ大洞剛太郎に、ねぎらうように大洞藤右衛門が言った。
 すっかり七草たちは倒され、福神社の境内は本来行うはずだった七草会がのんびりとした空気で行われている。そこかしこで、今日、この福神社を守った者たちが、七草粥に舌鼓を打っていた。
 
    ★    ★    ★
 
「珍しい。今日は、カレー粥はないみたいね。でも、油断はできないわ」
 浅葱翡翠と一緒にコタツでぬくぬくしながら、何か一抹の危機感につつまれて、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が言った
「あ、布紅ちゃん、一緒にコタツでぬくぬくしようよー」
 かいがいしく参拝客に七草を振る舞う布紅を見つけて、小鳥遊美羽が叫んだ。
「ありがとうございます。でも今手が一杯で……。後でまたおうかがいしますね」
 そう言うと、布紅は七草御膳を運んでいった。
「まあ、まだ忙しいみたいですから。ミカンでも食べます?」
 浅葱翡翠が、そう言って小鳥遊美羽にミカンを差し出した。
 
    ★    ★    ★
 
「うむむむ、なんとも微妙な食べ物であるな」
「そう? ボクは山菜は好きだから、結構好きな味なんだよね」
 七草粥を食べて、なんとも珍妙な顔になったジュレール・リーヴェンディに、カレン・クレスティアが普通に言った。
「どれ、これ食べ終わったら、みんなに配るのを手伝おうよ」
「まあ、このまま食べ続けるよりはその方がよいな」
 ジュレール・リーヴェンディは、ほっとしたようにカレン・クレスティアの言葉に同意した。
 
    ★    ★    ★
 
「みなさん、お疲れ様でした。さあ、七草粥をいただきましょう」
 やっと人心地ついたと、東雲いちるが、長曽我部元親と石田三成の前に七草粥を運んできた。
「いやいや、いい腹ごなしの運動になったぜ。これで、七草粥も美味しく食えるってもんだ」
 長曽我部元親が豪快に笑う。七草との戦いも疲れるほどではなかったらしい。
「そういうことであるな。苦労が多かった分、また格別ということであろう」
 石田三成も同意する。
「じゃ、みんなでいただきましょう」
「いただきまーす」
 
    ★    ★    ★
 
「うむ、この味だ。うまいぞ」
 空京稲荷狐樹廊(木曾義仲)が、満足そうに七草粥をがっついている。
「よかったですね」
 木曾義仲から解放された中原鞆絵が、隣で微笑んだ。
「ふっ、平和だわ」
 そんな二人から空へと視線を移して、頬杖をついたリカイン・フェルマータは小さくつぶやいた。
 
    ★    ★    ★
 
「にゃにゃくしゃがゅ、おいしーおー」
「おお、よかったな、コタロー。うん、さっきちょっと張り切って歌ったから、疲れた喉にこの七草粥はいい感じだな」
 喜んで七草粥を食べる林田コタローを見ながら、林田樹も満足そうに七草粥を啜った。
「喉にはいいだろうが、耳にもいい物が何かほしいもんだね」
 さんざん林田樹の歌を聞かされた緒方章が、ちょっと疲れたように言った。ジーナ・フロイラインは、まだ本郷涼介を手伝っているようだ。
 
    ★    ★    ★
 
「これが、あの暴れていた七草だと思うと不思議ですね」
 緑色の葉の入ったお粥を前にして、燦式鎮護機ザイエンデが言った。
「まあ、普通の七草は暴れないから、確かに不思議ではあるよね」
 別の意味で、神野永太が同意する。
「わたくし、これ初めて食べます」
 そう言うと、燦式鎮護機ザイエンデは、七草粥を口に運んだ。
「美味しい」
「そうか、よかったな」
 初詣はなんだか大変なことになってしまったが、燦式鎮護機ザイエンデが喜んでくれたのならまあいいかと、神野永太は心の中で思った。
 
    ★    ★    ★
 
「なんだか、元気なくなっちゃったね」
 お粥に浮かぶくたーっとした七草をつまみあげながら、クマラ・カールッティケーヤが言った。
「それは、調理した物だからな。すでに死んでいるわけだ。だが、だからこそ粗末にしてはいけないぞ。葉の一枚一枚、米の一粒一粒に感謝して食べるんだ」
「はーい」
 エース・ラグランツに言われて、クマラ・カールッティケーヤは七草を噛みしめた。