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七草狂想曲

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七草狂想曲

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    ★    ★    ★
 
「よっしゃあ、おかわり!」
 テノーリオ・メイベアが、十杯目の七草粥を平らげて叫んだ。
「すっごい食欲だねぇ」
 近くで食べていた七刀切がちょっと呆れる。彼としては、布紅手ずから受け取った七草粥は一口一口しっかりと噛みしめて味わいたいところだったからだ。
「何あれ……。もしかして、出遅れてしまったのかしら。このままじゃ、あの人に食べ尽くされてしまうわ」
 のんびりとお参りにやってきた西尾 桜子(にしお・さくらこ)が、テノーリオ・メイベアを見てちょっと焦る。
「うーん、そーだねぇ。あの勢いだと本当に食べ尽くしちゃうかもしれないねえ」
 思わず、七刀切がうなずきながら言った。
「急いだ方がいいかも」
「そうですね」
 七刀切にうながされて、西尾桜子は急いで七草粥をもらいにいった。
 さすがにテノーリオ・メイベアに食べ尽くされてはいなかったけれども、すでに結構な量が配られており、残りはもうわずかだった。
「それにしても、これだけの人数分の七草だなんて、集めるのは大変でしたでしょうに」
 まさか七草が暴れていたなどと知らない西尾桜子は、普通に感心していた。お椀の中には、たっぷり七草が入っている。
「あら」
 ふと、その七草が動いたような気がして、西尾桜子はちょっと首をかしげた。
 
    ★    ★    ★
 
「ふふふ、これで完全勝利だわ」
 オルベール・ルシフェリアが、満腹のぽんぽんをさすって言った。彼女的には、七草は食べ終わってこそ真に止めを刺したと言うことらしい。
「あ、布紅ちゃん、ごちそうさまでした」
 師王アスカが、通りかかった布紅に、お礼を言った。実際に七草を倒したのは自分たちであるが、なんといっても今日の会の主催は布紅である。ここはちゃんとお礼をすべきだった。
「いえいえ、みなさんのおかげで助かりましたし、美味しく楽しんでいただけたのでしたら幸いです」
 そう言って、布紅が軽く会釈した。
「ふう、やっと落ち着いたようです」
 コタツに戻ってきて、布紅がやっと一息ついた。配膳は、漆髪月夜たちが引き続きやってくれている。ちょっと小休止だ。
「お疲れ様です。はい、七草粥を召しあがれ」
 ベアトリーチェ・アイブリンガーが、自分が作った七草粥を運んできて小鳥遊美羽と布紅に出した。これを待っていた小鳥遊美羽と違って、先に七草粥を食べ終えていた浅葱翡翠は、満足してコタツでごろんと横になっている。
「試食ってことかしら。もしまずかったら、ハリセン百八発なんだもん」
 いつでもベアトリーチェ・アイブリンガーを張り倒せるようにハリセンを横におきながら、小鳥遊美羽が言った。意外と、味には厳しいようだ。
 もぐもぐもぐ……。
「どうでしょう……」
 恐る恐るベアトリーチェ・アイブリンガーが訊ねる。
「美味しいですよ」
 布紅がニッコリと微笑んだ。
「うん。合格」
 小鳥遊美羽も太鼓判を押す。
 ベアトリーチェ・アイブリンガーが、ほっと胸をなで下ろした。
 
    ★    ★    ★
 
「ちょっといいですか、審査員をしてもらいたいんですけど」
「なんの審査員です?」
 ソア・ウェンボリスに声をかけられて、コタツでくつろいでいた小鳥遊美羽が聞き返した。
「料理勝負の審査員なんだが……」
 あまり乗り気でないような声で、緋桜ケイが説明する。
「いいわよ。私に任せて。審査しちゃうよ!」(V)
 元気に、小鳥遊美羽が答えた。布紅や浅葱翡翠たちはもうお腹いっぱいだ。
「では、至高の七草粥と、究極の七草粥の勝負を行います。もしまずい物があったら、ハリセンで百八回叩きです」
 小鳥遊美羽が高らかに宣言した。そして、悠久ノカナタと雪国ベアの七草粥を口に運ぶ。
「判定、でました。覚悟できてるよね。結果は……」(V)
 そう言うと、小鳥遊美羽は、すっとハリセンを持った手を挙げた。
 バシバシバシバシ……!
「今、何が……。ちょ、なんでわらわを叩く!」(V)
 いきなりバシバシ叩かれて、悠久ノカナタが悲鳴をあげた。
「苦い! 青臭い! 以上、百八叩き! 待てー!」
 そう言うと、小鳥遊美羽は逃げる悠久ノカナタを追いかけていった。
 どうやら、事前に七草を凍らせたために、細胞破壊が起きて必要以上の成分やえぐみがすべてお粥の中に出てしまったらしい。青物は、冷凍に適する物と適さない物が明確に存在するということを知らなかった悠久ノカナタの失策であった。
「これで勝ったと……」
 遠くから、悠久ノカナタの声だけが聞こえてくる。
「ふっ、これで、手紙に書く俺様の栄光の記録がまた一つできたよな、御主人」
「ええーっ……」
 勝ち誇る雪国ベアに、なぜそれをお父様の手紙に書かなければならないのかと自問するソア・ウェンボリスであった。
 
    ★    ★    ★
 
 パンパン。
 すでに人影もまばらとなった福神社で、火村加夜が恋愛成就のお参りをする。
 嫌がる夜月鴉を蹴飛ばしながら、アグリ・アイフェスたちも後片づけにいそしんでいた。他にも、調理に携わった者のほとんどが後片づけをしている。
 巫女装束姿の久世沙幸が、境内を箒で掃き清めていった。
 静けさが戻りつつある福神社で、明日からは平和で静かないい年になりますようにと、布紅は祈った。
 

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 
 ふう、ずいぶん遅くなりました。正月進行はきっついです。
 ちょっとぶつ切れ感はありますが、みんなお正月らしかったですねー。
 それにしても、福神社って本当に何があるんでしょうか? 今度、桜月マスターに聞いてみましょうか。