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第一章 集う追跡者たち
「うははははっ!! チョロイもんだったぜ!」
下卑た声で高らかに笑ったヒゲ面の大男は、藁の上に安置しただけの巨大な卵を雑に撫上げた。
「ボス、これでまた大金が入って来ますねっ!!」
ヒゲ面の大男の周りには、これまた下卑た笑みの小悪党達が群がっていた。
「あとは、このロック鳥の卵を空京の取引組合に売りつければ……しばらくは遊んで暮らせるぜ!」
再び高らかに笑い出すヒゲ面の大男。彼は、イルミンスール魔法学校の生物部を襲撃した盗賊団のボスだった。
ロック鳥の卵を盗み出した彼らは、飛空艇でキマクへと向かっていた。
「さぁ、野郎ども。もう一踏ん張りで大金持ちだ! 気合入れて行くぞっ!!」
「「「おぉ!!」」」
飛空艇内部に、盗賊たちの鬨の声が上がった。
そこへ――
「た、大変だボス!」
一人の盗賊が、卵を安置している倉庫へと駆け込んできた。
「どうしたっ!? 何かあったのか?」
「そ、それが……敵が現れたんです!」
盗賊がそう告げた瞬間、飛空艇内に鈍い振動が奔った――
「さて……アレが盗賊団の飛空艇か」
黒洞々とした宵闇が広がる、イルミンスールの森。
鬱蒼とした木々の隙間から上空を見上げた天真 ヒロユキ(あまざね・ひろゆき)は、盗賊団の飛空艇を発見した。
「闇夜に紛れるように黒塗りにして低空飛行中か。まぁ、地の利はこっちに分があるんだ。思う存分暴れさせてもらおう」
そう言うとヒロユキは、剣竜の背に跨り駆け出した。
「この木なら、何とか届きそうだな」
飛空艇の航路に先回りしたヒロユキは、巨木へ登ると――
「ふんっ!」
巨木の近くを低空飛行していた飛空艇に跳び移った。
そして――
「悪いが、足止めさせてもらうぞ」
幻槍モノケロスを掲げ、ヒロユキは機体を突き刺した。
「な、何やってんだっ! 機銃で蜂の巣にしろ!!」
ボスが盗賊たちを囃し立てると、すぐさま備え付けの機銃による一斉掃射が始まった。
しかし――
「だ、ダメです! 敵の野郎、とんでもねぇ素早さで弾があたりません!! しかも、弾が機体に当たって飛空艇がダメージを受けちまいます!!」
ヒロユキは不安定な機体上にも関わらず、神速の勢いで機銃や砲塔を破壊していく。
「チッ……こうなったら。野郎ども! 卵が転がらねぇように、しっかり押さえとけよ!」
ヒロユキの猛攻に焦りを隠せないボスは、艦橋へ向かうと操舵手から舵を奪うと――
「落ちろっ!」
突然、機首を上げながら舵を横に切った。
すると、飛空艇は高度と進行方向を変えることなく一回転し始めた。
「うははははっ! バレルロールだっ!!」
バレルロールとは、一般的に戦闘機などがミサイルを回避するために用いる技術なのだが……ボスは、機体上のヒロユキを振り落とすためにこの技を使ったのだった。
そして――
「くっ……しまった」
さすがに機体が回転したために、ヒロユキは宙へと投げ出されてしまう。
しかし――地上には剣竜が控えていたため、上手く跨り地面との激突は避けることができたのだった。
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