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リアクション
第二章 鳥小屋作り?
一方、ロック鳥の卵が盗まれて一時間後。
闇夜のイルミンスール魔法学校屋上では――
「ねぇねぇ。この臨時校長室ってさ、もう使わないなら上手く利用できないかな?」
「たしかに、これはベースになるとは思いますが……私達だけでは人手が足りませんよ?」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)とパートナーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が、なにやら相談し合っていた。
と、そこへ――
「二人とも、こんなところで何やってるですかぁ?」
校長のエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)が、火術をランプ代わりにしながらやって来た。
「あ、校長先生! 実はね、去年作ったこの臨時校長室を利用して、雛用の鳥小屋を作ろうって思ってるの!」
「そうだったんですかぁ。てっきり、盗賊の仲間かと思ってビックリしたですぅ」
「お騒がせして申し訳ありません。でも、美羽も私もいても立ってもいられなくて……」
沈痛な面持ちのベアトリーチェたち。
二人は卵の奪還へ迎えないぶん、必ず仲間達が卵を取り返すと信じて、何か少しでも役に立ちたかったのだ。
そして、そんな彼女たちの気持ちはエリザベートにも充分わかっていた。
「だけど……二人で間に合うんですかぁ? ロック鳥は雛と言ってもすぐに大きくなりますから、鳥小屋も大きくなくちゃいけないんですよぉ?」
「そ、そうなんだよね。そこが問題なんだよ」
「二人だけだと、かなり時間が掛かってしまいそうです……」
仮にエリザベートが手伝ったところで、鳥小屋作りはなかなか難しそうだった。
しかし――
「だったら……生物部の部長として、私にも手伝わせてください」
ちょうど良いタイミングで鷹野 栗(たかの・まろん)がやって来て、鳥小屋作りへの協力を申し出てくれた。
「ロック鳥の飼育経験はありませんが、猛禽類の育雛知識を役立たせることができると思うので、おまかせください」
イルミンスール魔法学校生物部の部長を務める彼女としては、奪われた卵のことは心配でたまらなかったが、ここは仲間の力を信じて孵化の準備へと回ったのだった。
そして更に――
「だったら、私も農家として一緒に手伝うわ。農家が活躍できるのは、こいう時だからね」
多比良 幽那(たひら・ゆうな)も鳥小屋作りにやって来た。
「なんだか、たくさん集まって来ましたねぇ。これなら、なんとかなりそうですぅ!」
エリザベートの言うとおり、いつの間にかイルミンスールの屋上は夜中にもかかわらず賑やかになっていた。
「とりあえず、鳥小屋はどれぐらいの大きさで作ればいいんだろう?」
「そうですね……空を自由に飛ぶ鳥を狭い場所に閉じ込めると、胸郭筋が衰え飛べなくなります。ロック鳥は成長すれば全長五十メートルにもなりますけど、さすがにそこまで巨大な鳥を飼うための小屋は、ここには作れそうにありませんね」
「だったら、ある程度まで成長したら小屋をバラして巣にしちゃうのはどうかしら? それまでは、自由に飛びまわれるように五十メートル四方ぐらいあれば良いと思うわ」
トントン拍子に決まっていく建設計画。
「それでは、まず始めに鳥小屋作りに必要な物資を運び込みましょう。私は、レッサーワイバーンと一緒に重たい物資を運び込みます」
そう言って、栗はレッサーワイバーンに跨り物資の運搬を買って出た。
「それじゃあ、私はアルラウネたちと一緒に、材料を加工していくわ。終わったら、小屋の改造も手伝うわ。コロナリア、アトロパ、ローゼン、ヴィスカシア、リリシウム。さっそく取り掛かるわよ!」
幽那は、マンドレイクの一種であるアルウネラたちと材料を切ったり加工していく。どうやら、餌箱や水飲み場も一緒に作るようだ。
「私達は、臨時校長室を改築していっちゃおうかっ!」
「そうですね。卵が戻ってくるまでに終わらせましょう」
美羽とベアトリーチェは、他の二人より先に臨時校長室の改造作業へと取り掛かる。
そして――
「まったく、仕方ないですねぇ。今回だけ特別に手伝ってあげるですぅ! レビテートで」
やれやれ……と言いつつも、エリザベートは魔法を駆使して手伝うのだった。
「みんな! どうせだったら、とびっきり立派な鳥小屋を作って、雛を喜ばせてあげようね!」
美羽の言葉に、その場にいた全員が顔を見合わせて頷く。
卵の奪還を信じて、鳥小屋作りは進んでいくのだった。
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