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リアクション
数時間後――
「皆さん。そろそろ、休憩にしませんか? 僭越ながら、紅茶とケーキを用意させていただきましたので、よかったらどうぞ」
鳥小屋作りは、ベアトリーチェの提案で一旦休憩に入ることとなった。
「わぁーい、美味しいですぅ♪ やっぱり、労働の後のケーキは格別ですぅ!」
ベアトリーチェの紅茶とケーキは、その場にいた全員に大好評だった。
と、そこへ――
「あのぉ、ちょっと良いですか〜?」
神代 明日香(かみしろ・あすか)がやって来た。
「なにやってるですかぁ、明日香? ロック鳥の卵を取り返しに行かなかったですかぁ?」
「だって……卵も心配ですけどぉ、イルミンスールに残ればエリザベートちゃんの傍にいられr……じゃなくてですねぇ! エリザベートちゃんが可愛いすぎるから、盗まれるかもしれないと思って用心のために残ったんです〜!!」
「……何言ってるんですかぁ」
珍しく、呆れたような目を向けるエリザベート。
「じょ、冗談はこのぐらいにしておいてぇ……実は、本当は盗賊団の共犯者を調べてたんですぅ!」
「共犯者……ですかぁ?」
明日香の言葉に首を傾げるエリザベート。
「実は今回の強奪事件、イルミンスールの内部に共犯者がいたとしか思えないんですぅ!」
「ど、どういう根拠ですかぁ?」
「さっき、生物部の生徒に何人か聞いたり、襲撃された部室をサイコメトリーで調べてみたんですけどぉ、部室は普段から戸締りもしっかりしていたし、卵のあった位置も普通は生徒でもない人間からは見えない位置に有ったらしんですぅ」
「な、なるほどぉ。確かに、部外者から見えない位置の卵を知っているのは……おかしな話しですねぇ!」
「この犯行の手際良さから考えて、生徒に共犯者がいたとしか思えないですぅ。そもそも、ロック鳥の卵が孵る時期が遅れているのを知る方法なんて――」
エリザベートに自分の集めた情報と推理を教えていく明日香。
と、更にそこへ―
「私も、その推理に賛成だわ」
水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)と、パートナーの天津 麻羅(あまつ・まら)と火軻具土 命(ひのかぐつちの・みこと)がやって来た。
「最初、私はセキュリティや卵の管理に問題があったんじゃないかと思って、セキュリティの穴や情報経路を探ってみたんだけど……どう考えても、部外者である盗賊がロック鳥の卵の孵化情報や位置を知りえるのは難しかったわ」
緋雨としては、犯行の再発防止を考えて情報を集めていたのだが……どうも、今回の事件は内部からの共犯者がいるようだった。
「エリザベートさん。最近、イルミンスールで怪しい人はいませんでしたか?」
「そ、そんなこと言ったら……イルミンスールににいる生徒や教師なんて、ほとんどが初対面で見たら怪しいに決まってますぅ」
たしかに、エリザベートの言うとおり。その場にいた生徒達は、自分の容姿や普段の行動を思い出して赤面する。
「あ、そういえばぁ……去年の秋ごろに、波羅蜜多実業高校から生徒が何人か編入してきたですぅ。別に編入は珍しいことではないんですけどぉ、全員が同じ時期に波羅蜜多実業高校から編入してきたっていうのが……今考えると少し怪しいですぅ!」
エリザベートがおぼろげな記憶を思い出した瞬間――
「それですよぉ、エリザベートちゃん!」
「エリザベートさん、その人たちの生徒名簿は残ってる? もしかしたら、偽名などを使ってるかもしれないけど……そこから盗賊団の正体がわかるかもしれないわ!」
明日香と緋雨は、同時にピンと来たようだ。
「なるほどぉ。相手の正体がわかれば、現場に向かった生徒達に有意義な情報を教えて上げられるかもしれませんねぇ」
二人の提案に納得したエリザベート。
すると――
「だったら、緋雨。夜の学校は何が起こるかわからんからな。校長に付き添って、一緒に生徒名簿を取りに行ってやれ」
「校長の抜けた穴は、うちらが手伝って埋めとくさかい。緋雨、うちらはさっき調べた情報を生かして、鳥小屋のセキュリティ強化でもしとくわ」
緋雨のパートナーである麻羅と命が、エリザベートの代わりを買って出てくれた。
「二人とも、ありがとうございますぅ。それじゃあ、さっそく校長室に戻って生徒名簿を確認しましょう〜!」
急遽、エリザベートたちは校長室へと向かうこととなった。
そのころ、イルミンスール魔法学校の図書室では――笹野 朔夜(ささの・さくや)とパートナーの笹野 冬月(ささの・ふゆつき)が、数冊の本とメモから何やら情報をまとめていた。
「なるほど……部員や寮にいた生徒達の目撃証言を照らし合わせてみましたけど、盗賊たちは『イビンシヴル』という窃盗集団のようですね」
「黒塗りの低騒音型飛空艇で現れる有名な盗賊集団で、潜入まで行ってから犯行する周到な奴らか……盗賊っていうわりには、意外と用心深いんだな」
彼らは、まず始めに生物部や寮生に聞き込みを行い、そこで得た情報を元に盗賊団に関する情報をまとめて資料を作り、奪還に向かった生徒たちに情報を伝える予定だった。
「でも、部室の場所はともかく卵の位置なんてよく分かったよな……聞いた話しだと、窓際に置いてたわけじゃなさそうだし。やっぱり、内部の犯行なのか?」
「そうですね……潜入を得意としているという事は、やはり盗賊が学校に潜入していたと考えるのが妥当でしょうか? でしたら、エリザベートさんに生徒の編入歴などを聞いてみたほうが良いかもしれませんね」
さっそく、と言わんばかりの勢いで席を立ち校長室へと向かう朔夜。
「はぁ……本当、こういうときの行動力は流石だな」
「何をおっしゃってるんですか。僕は、本来であれば泥棒さん探しのお手伝いに行きたかったんですよ?」
「俺だって、本来だったら授業のレポート作りをしたかったんだぞ? かと言って、朔夜を放置したままじゃ、実力もないのに取り返しに行く連中に付いて行きかねないからな。まぁ、卵のピンチだし、俺たちに出来ることをやろう」
何だかんだ言いつつも、二人は校長室へと向かうのだった。
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