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【カナン再生記】迷宮のキリングフィールド

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【カナン再生記】迷宮のキリングフィールド

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■第4章 第1のドア(1)

 ドアをくぐった先はそれまでと違い、明るかった。
 闇に慣れた目には少々痛いほどだ。
「しかし、闇の中で戦わずにすむのは助かるね」
 庇ってあてた手ひさしの下で目をすがめつつ、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は周囲をぐるりと見渡した。
「あっ…!」
 驚きの声が後ろで上がる。そちらを振り返ると、閉じたドアが壁と同化するところだった。
 まるで壁の中に埋没していくようにドア枠と壁の境目が薄れていき、線となって、やがて消える。
「そんな…っ!」
 バン! と長い黒髪の女性――師王 アスカ(しおう・あすか)がドアのあった場所を叩く。しかしそこはもう、ただの壁だった。数歩離れれば、どこにドアがあったかすら分からなくなってしまう。
「私たち、閉じ込められたんですの〜?」
「あわてるな、アスカ」
 蒼灯 鴉(そうひ・からす)が引き寄せ、壁を見せまいと胸に押しつけたとき。
「動じるな」
 そんな言葉が正面からして、唯斗は再びそちらへ向きを戻した。
 はるか先――ここが教会内部であることを思えば絶対にあり得ない広さの――まるでローマのコロシアムのような室内の、崩れた巨大な列柱の影から男が現れる。
「この部屋から出られるのは勝者のみ。さすれば勝敗が決したとき、おのずと扉は現れよう」
「あれは――…」
 三道 六黒(みどう・むくろ)
 その名を、唯斗はいくぶん沈んだ思いでつぶやいた。
(こりゃまた厄介な相手とあたってしまったもんだ)
 だが見たところ、魔鎧は装着していないようだ。手にしているのは龍骨の剣のみ。
「唯斗、気をつけてください。彼は黒檀の砂時計や勇士の薬を用いての高速剣術を好んで使うといいます。あなたのように近接攻撃を行う者には強敵です」
 魔鎧プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が忠告をささやく。
「なに、俺にも彗星のアンクレットがあるさ」
 にしても、いくらなんでもやつだけのはずはないが……ほかの者はどこに?
「罠か…?」
 なんにせよ、行けば分かるだろう。
 唯斗は肩越しに後ろの仲間たちを見た。
「あっちの旦那はひとまず俺が何とかするからさ、そのほかに何か出てきたらそっちを頼むわ。
 睡蓮、エクス、サポートよろしく」
「任せてくたせさい!」
 いつでも放てるよう、妖精の弓を引き絞る紫月 睡蓮(しづき・すいれん)の力強い声を背に、唯斗は走り出した。まっすぐ、三道 六黒へ向かって。
「……ああ、やっぱりなぁ」
 瓦礫と化した列柱のいたるところからアンデッド――骸骨戦士が飛び出してくるのを見て、ぽつりつぶやく。しかし足は止めない。仲間を信じるのみだ。
「よし! 始めるぞ皆の衆! 初撃は派手に行こうではないか!」
 高らかに言い放つ、小気味いいエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)の宣言が聞こえる。
 応じるように次々とケセドの矢、コクマーの矢が横を走り抜け、彼をねらって剣やギロチンを振り上げる骸骨たちを砕いていった。
「唯斗兄さん! 危ない!」
 正面に立ちはだかった骸骨の剣を持つ手を、弓矢にあるまじき不自然な楕円軌道を描いた矢が貫いた。睡蓮がサイコキネシスで軌道修正をかけ、操っているのだ。
 睡蓮は次々と矢を放ち、サイコキネシスによる誘導で確実に骸骨にぶつけていく。ズドン! という重い響きをたて、骸骨は唯斗の前に出ようと動いた次の瞬間にはもう矢に打ち砕かれていた。
「キリないねぇ」
 横の柱を使い、三角飛びの要領で六黒と自分の間をふさぐ骸骨3体を飛び越える。唯斗の足が地につく前に、骸骨たちはケセドの矢を受け氷結している。
 そうしてついに六黒との距離を縮め、ティアマトの鱗のついた手甲を相手に叩きつけようとしたとき――
 突然、横の柱が爆発した。
「――!!」
 眼前の六黒に意識を集中していた唯斗は――体勢の悪さもあって――たやすく吹き飛ばされる。
 砕かれた柱の欠片がつぶてのように彼を襲い、切り刻んだ。
「唯斗兄さん!」
「唯斗!」
 向かい側の列柱に叩きつけられた唯斗に、エクスと睡蓮が血相を変える。
「はぁーーーーっはっはぁーッ!! 飛んだ飛んだ、吹っ飛びやがったぜ!!」
 六黒の背後の崩れた列柱の上に、羽皇 冴王(うおう・さおう)が姿を現した。
「こうも簡単にひっかかってくれるとはなァ。やっぱ、エサがいいと食いつきが違うぜ」
「……おのれ、よくも!!」
 「LOST」の文字が点滅し、柱の影で唯斗がうっすらと消えていくのを見て、エクスの手が振り切られる。
「我は射す光の閃刃ーっ!!」
 光の刃が放たれようとした瞬間。
「させるかよッ」
 嘲笑が飛ぶ。またも地を揺るがす爆発が、今度はエクスたちの近くで起きた。
 横殴りの爆風が煙幕のように彼女たちの目をふさぎ、矢を吹き飛ばす。
「ひゃっはぁーーー!!」
 もうもうと巻き上げられた砂埃に咳き込む彼女たちに向け、血と鉄を発動させた冴王によって魔銃モービッド・エンジェルと魔銃カルネイジが連射された。
 弾幕の中「LOST」の点滅が2つ浮かび上がる。
「へッ。光輝系の魔法使いは厄介だからよォ。早めに片付けとくに限るぜ」
「みんな、固まっているとやられる! 散開するんだ!」
 セルマ・アリス(せるま・ありす)の声で、煙幕の向こう、人影が散じる。
「ああ、そうくると思ったぜ」
 してやったり。
 次々と連爆し、崩れていく柱の音をニヤニヤ笑って聞いていた冴王の頬を、そのときコクマーの矢がかすめた。
「……痛ぅ…」
 ビリビリと痺れる痛みが走り抜ける。
 矢を放ったのは源 明日葉(みなもと・あすは)。彼女は先までと変わらず同じ位置にすっくと立っている。散じて逃げる気は毛頭ないと――顎を引き、視線で人を殺せるものならばきさまなどズタズタにしてくれるわと言わんばかりの目でにらみ据える彼女に、冴王はヒュウと口笛を吹いた。
「シャンバラから来た方でもネルガルに協力する方がいると聞きましたが、あなた方がそうなのですね」
 隣に立つ高島 真理(たかしま・まり)が、やはりセフィロトボウを構えて言う。
「できることなら同じシャンバラの学生として戦いたくはなかったですが、こうなっては致し方ありません。この部屋より出られる者が勝者のみであるというならば、いざ、尋常に勝負!」
 口上とともに、コクマーの矢、ケセドの矢が次々と放たれる。そのあとを追うように、敷島 桜(しきしま・さくら)のサンダーブラストの白光が彼らに襲いかかった。
「ふん…!」
 飛来する矢は六黒によって一瞬のうちに斬られ、失速してことごとく地に落ちた。
 黒檀の砂時計に勇士の薬、彗星のアンクレットの相乗効果で著しく速度を上げた六黒にとって、こんなことは雑作もない。
 冴王もまた、あっさりサンダーブラストを避けた。
「ぬるい! ぬるいぜてめェら! こちとら待ちくたびれて退屈死しそうだったんだぜ? ちったぁ気合い入れてかかッてこいやッッ!!」
 野獣のように牙を剥き、咆哮する。
 2人はなんら合図を送りあうこともなく――いうなれば長年ともに戦場を駆け抜けた者同士の阿吽の呼吸で――眼前の敵に向かい、同時に仕掛けた。



「――きゃあっ!」
 通りすぎたばかりの横の柱が爆発し、オルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)はハーモニウムを抱えてその場にしゃがみ込んだ。
「オルフェリア様!」
 ミリオン・アインカノック(みりおん・あいんかのっく)がすばやく上からかぶさって、降りそそぐ瓦礫片から彼女をかばう。
 ズゥン……と音がして、砕かれた柱が背後で横倒しになった。
 もう少し遅かったら、2人とも押しつぶされていたかもしれない…。その事実に、心底ゾッとした。
「大丈夫ですか? オルフェリア様。どこかおけがはありませんか?」
「う、うん……ありがとう、ミリオン」
 差し出された手を借りて立ち上がる。
「道がふさがれてしまったのです…」
「おそらくやつらはわれわれの分断を狙っているんです。その上で各個撃破するつもりなのでしょう」
 ミリオンは耳をすませた。
 爆弾が爆発する音は止んでいた。まだ柱が崩れる音は続いていたが、それもここより遠い位置で起きていた。おそらくもうこの周辺で爆発は起きないだろう。
 オルフェリアは、ペタペタと倒れた柱に手で触れてみた。自分の背丈よりも舞い上がっている砂のせいで、視界が悪い。
 どこか……すり抜けられる隙間でもあれば、セルマさんたちに追いつけるのに。
 そう思って必死に探る手の先を、ミリオンがふさいだ。
「駄目です、オルフェリア様。強度が不明です。へたに触れると崩れてくるかもしれません」
「でも…」
「どうしてもと言うのなら、我がいたします。ですが、この舞い上がった砂が落ちきって、視界がクリアになってからです」
 きっぱりと宣言するミリオンを見て、オルフェリアは思わずつぶやいていた。
「ミリオン……別人みたいなのです…」
 最近、妙にやさぐれてきていると思っていただけに、この頼もしさはとても意外だった。今日など、何やら妙に思いつめた目でセルマを見ていて、後ろから撃ちかねないのではないかとまで実は懸念していたのだ。
 しかしそんなこと思ってごめんなさい、をしたくなるくらい、今のミリオンはいきいきとしていた。崩れた柱との間にオルフェリアを挟み込み、最古の銃を構え、近づく者はいないか警戒している。
「ミリオン…」
(ふふ……ふふ…。今、我が神は我1人のものなのです……我を頼っていらっしゃる…。あのような下賎の者などしょせんこの程度のもの。オルフェリア様を真にお守りできるのは我よりほかにはいないのです)
 ――やっぱり病んでる!
「……はっ!」
 砂煙の中、前方にゆらりと動く影あり!
 ミリオンの最古の銃が火を噴く。
「って、うわあっ!!」
 パッと避けた影が叫んだ。
「骸骨がしゃべるとは。ここのアンデッドは優秀ですねぇ」
「骸骨じゃないから! ちゃんと確認して撃てよ、おまえ!」
 今の、殺気看破なかったら完全にアウトだったぞ!
 顔の前の砂煙をパッパと払い、セルマが憤慨した顔を見せる。
「セルマさんっ」
 オルフェリアが腕に飛び込んできた後ろで
「おや、あなたでしたか」
 ……ち。
 残念そうな舌打ちが、彼の口からもれたのをセルマは見逃さなかった。
(――こいつ…)
 そこに、横から打ちかかる者が現れた。薄れ始めた砂煙の中、白刃がきらめいて、抱いたオルフェリアごとセルマを横なぎにしようとする。
「危ない! ルーマっ」
 倒れた柱の上に上がっていたミリィがシャープシューターで的確に骸骨の剣を持った腕を撃ち抜いた。走り込んできた中国古典 『老子道徳経』(ちゅうごくこてん・ろうしどうとくきょう)が、すかさず桃木剣で切り伏せる。
「ありがとう、シャオ」
「礼は、彼らを全部倒してからまとめて言ってちょうだい」
 チン、と音を立てて桃木剣をしまい込み、骸骨の現れた方角へバニッシュを放つ。砂煙のカーテンを引き裂いて飛んだ光の刃は、そこに立っていた骸骨数体を真っ二つにする。だがあらわとなったそこには、まだ十数体の骸骨が得物を手に立っていた。
「くそッ」
 オルフェリアを背後に回し、ウルクの剣を構える。
「オルフェリア様、こちらへ!」
 ミリオンが安全な柱の影へオルフェリアを誘導した。
「ルーマっ」
 柱を降りたミリィが、たたたっと横に走り寄る。
「シャオは右側面を頼む。ミリィは俺と左側面だ。ミリオン君はオルフェリアさんの横からサポートを」
 そうして油断なく、骸骨戦士たちとの戦闘中、六黒たちからの不意打ちを警戒して殺気看破を再び張り巡らせたのだが。
「……ミリィ。すぐ後ろから反応あるんだけど、これって俺の気のせいかな?」
 セルマのつぶやきを聞いて、ミリィがちらっと後ろを振り返る。
 そこには、最古の銃をかまえて立つミリオンの姿が…。
「うーん。ルーマの場合、後ろも気にする必要あるかもね」
 前回のゆる農場での言葉、やっぱり撤回。
「ええっ?」
 それ、今この状況で言うことっ!?
 ――と、とにかく。……流れ弾には当たらないように注意しながら戦おう。うん。
 ハーモニウムを用いたオルフェリアの怒りの歌を聞きながら、セルマはそう心に決めたのだった。



(……あれは…?)
 襲いかかる無数の骸骨戦士に向かってバニッシュを放つ戦いのさなか、ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)は、ある1体の骸骨に目が吸い寄せられた。
 周囲の骸骨たちよりひと回り大きい、というのもある。あと、動きがちょっと変だ、ということも。
 だが…………なんと言ったらいいか…………うーん…。
「ああっ! あの骸骨、なんだか愉快な動きをしてますわぁ」
「そう、愉快だ」
 アスカの言い得て妙な言葉に、ぽんと手を打った。
 ギロチンを両手で振り下ろして攻撃、砕かれてもじっと再生を待って、やっぱりギロチンを両手で持って振り下ろす。砕かれても懲りずにまたギロチン振り下ろして…。
 その動きがコミカルで、すごく楽しそうなのだ。
「あの愉快な骸骨の動き……なんだかものすごーーく創作意欲が刺激されてきますわ…」
「あ、コラ、アスカっ!」
 戦闘を放棄し、スケッチブックと鉛筆を手にそちらへふらふら近づいて行こうとするアスカを、隣で戦っていた鴉があわてて引き戻す。
「放して鴉っ。あのポーズ、あの動きを今すぐスケッチしてしなくては〜」
 絵のこととなるともう夢中で、ほかの何も目に入らなくなってしまうアスカの悪癖が出た。
 目がすわってしまっている。こうなるともう何を言っても無駄だろう。
「分かった。じゃあせめて、ここで描いてろ」
 比較的安全に見える、倒れた柱と壁の間にぎゅうっと彼女を押し込んで、鴉は骸骨との戦いに戻って行く。一方ルーツもまた、アスカほどではないにせよ、愉快な骸骨の動きに魅せられて、目が離せないでいた。
 おそらくそれが幸いした。
 愉快な骸骨のすぐ横の柱に、ラルム・リースフラワー(らるむ・りーすふらわー)が隠れていたからだ。
 ぎゅっと目を閉じ、できるいっぱい体を縮めて、柱の影でぶるぶる震えている。
「――ラルム!? ついて来ていたのか??」
 こうなると、もはや見とれるどころの話ではない。
 もちろん愉快な骸骨もラルムの存在に気づいている。
「……い…いじめる? いじめる? いじめる…?」
 ピピピ、と汗を飛ばして首を傾げ続ける花妖精を見下ろして、ニヤリと骸骨が笑ったような気がしたのは目の錯覚か?
 走っていては間に合わない!
 ルーツは霧隠れの衣を用いて霧状に体を変化させると、ラルムと振り下ろされるギロチンの間で実体化した。
「ルーツっ!?」
「……ラルム……今のうちに……逃げろ…」
 背中を割られたルーツの体が、すうっと消えていく。「LOST」の点滅が、ラルムの視界いっぱいに広がって――……。
「ひどい…っ、ひどいよ! これ以上みんなを……いじめるなー!!」
 再び現れたギロチンを持つ愉快な骸骨に向かい、ラルムは全身全霊でもって叫んだ。
「ラルム…?」
 聞きつけたアスカも、鴉も、その声の力強さに驚いた。いつもびくびくおびえて小さな声でしか話さなかった子が、あんな声を発するなんて…。
 そしてその瞬間、ラルムは種モミ(シード)覚醒を果たした。
 種モミを持ったおじいさんが襲われる映像が脳裏に浮かぶと同時に、カッと白い閃光がラルムの体を走り抜け――ただでさえ少ない防御力が、さらに下がった!
 種モミ発見が発動し、ラルムは足元の瓦礫の中から種モミを発見し――さらにHPとSPも下げた!
 略奪発動。わらわらと周囲の骸骨たちが集まってきて、ラルムをコロコロ転がしつつ、身ぐるみはがす勢いで種モミを奪って行く。
「ま……待って…」
 今日より明日まで発動し、ラルムは自分の意思とは関係なく、骸骨には全く意味のないことを切々と説き始める。結果、さらにコロコロ転がされてしまった。
「も、もうやめて! ラルム、それ以上やったらあなた、苗床になっちゃうわぁっ」
 あせるアスカの前、ラルムはすっくと立ち上がった。
「大丈夫! それ、装備してないからっ!!」
 愉快な骸骨には何されたわけでもないのだが、すでにボロボロの身で、ラルムは両手を突き出す。
「救世主召喚ーーーっ!!」
 んんーーーっ!
 真っ赤な顔をしてリキむラルムの両側に、救世主2体が現れた!!
「救世主さん、やっちゃってー!」
 救世主パンチ! 救世主キック! 救世主エルボー! 救世主ローリングソバット! 救世主バックドロップ! とどめは救世主ジャーマンスープレックス!!
 そしてぽかすかと、2体の救世主の攻撃の隙間を縫うように、ラルムが野球のバットでタコ殴りする。――ちょっとなさけないぞッ、ラルム!
 だが次の瞬間、愉快な骸骨が本気でキレた。
「だーっ!! うっとーしいっ!!」
 げいん、と救世主の1体に蹴りを入れ、壁まで吹っ飛ばす。
「骸骨が……しゃべった!?」
 驚くラルムの前、起き上がった骸骨がにたりと笑った。
「貴様今、恐怖したな?」
 カカカカカ、と骨が笑う。ゾッと背筋を凍らせたラルムに、アボミネーションが叩きつけられた。
 「LOST」の点滅と同時にラルムが消え、救世主2体もラルムを追って消える。
「あなた、ただのアンデッドじゃないわね! 正体を見せなさい!!」
 崩れた柱を乗り越えて現れたシャオがバニッシュを放つ。
「おっと」
 それをひょいと避け、愉快な骸骨――葬歌 狂骨(そうか・きょうこつ)は再び両手で暗黒ギロチンを持つと、左に振ってはカクカクと、右に振ってはカクカクと、再びあのふしぎなおどりを始めた。
「ああっ! なぜかしら? あの動きを見るとスケッチせずにはいられないのよぉ〜」
 アスカは再び柱の影にしゃがみ込み、スケッチに熱中したのだった。